米国国立補完代替医療研究センターのニュースレターを日本語化しました。原文はこちら。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
【高コレステロール症と補完代替医療】(2013年2月、NCCAMニュースレター)
アメリカ合衆国では、成人の約13%で総コレステロール値が高いと推定されている。コレステロール値を下げることで、動脈壁での血栓の形成の進行抑制/低減/停止が期待でき、ひいては心臓疾患の発生を抑制できる可能性がある。高コレステロール症の処置の頼みの綱は食生活改善/減量/運動/(必要なら)薬物投与である。
2007年に行われた国民健康調査では、成人が補完代替医療の手法を実践しようとする理由の上位10位以内に高コレステロール血症が入っている。本記事では、高コレステロール症対策として利用されている幾つかのサプリメント(紅色酵母米=Red Yeast Rice、亜麻仁及び亜麻仁油、ニンニクなど)について、その有効性/安全性に関する事実をまとめた。
<サプリメント>
(1)紅色酵母米(Red Yeast Rice)
●科学的事実
・Red Yeast Riceを原料としたサプリメントには、monacolin Kを多量に含むものがある。このmonacolin Kは、コレステロール値を下げる効果があるlovastatinの有効成分と化学的には同一なので、血中コレステロール値を下げる可能性がある一方、lovastatinと同様の副作用/薬物間相互作用が発生する可能性もある。そのため、米国食品医薬品局(FDA)は、monacolin Kが検出されたRed Yeast Riceサプリメントは栄養補助食品として販売することを法的に禁止している。
・なので、栄養補助食品として販売されているRed Yeast Riceサプリメントからはmonacolin Kは検出されていない。これらのサプリメントに血中コレステロール値を下げる効果があるかどうかはわかっていない。
・ただ、Red Yeast Riceサプリメントにどれだけのmonacolin Kが実際に含まれているかを一般消費者が知る方法はない。実際、それらのサプリメントに表示されているのはRed Yeast Riceの含有量だけであり、monacolin Kの含有量は表示されていない。
・安全性に疑念が持たれていること、及び合法的に市販されているRed Yeast Riceサプリメントの有効性を裏付ける研究結果が報告されていないことからすると、Red Yeast Riceサプリメントを高コレステロール症の治療目的で摂取するべきではない。
●安全性
・lovastatinを服用している患者に見られる副作用は、monacolin Kを含有しているRed Rice Yeastサプリメントを服用している人でも発生する可能性がある。発生する可能性がある副作用は、ミオパシー/横紋筋融解症/肝臓毒性、である。実際、これらについては発生したという報告例がある。処方薬であるstatinを服用している人は、定期的に主治医の診断を受けているが、Red Yeast Riceサプリメントを服用している人は自分自身でチェックする必要がある。
・妊娠中/授乳中の人は、Red Yeast Riceサプリメントを服用してはならない。
・lovastatinについては、他の医薬品と相互作用を起こし、横紋筋融解症を発症する危険性を増大させる。そのような医薬品の例は、他のコレステロール値低減薬/抗生物質/nefazodone(ブリストル・マイヤーズ・スクイブ社が販売している抗うつ剤)/細菌感染症薬/HIV感染症薬である。monacolin Kを含有するRed Yeast Riceサプリメントでも、同様の医薬品相互作用が発生する可能性がある。
・Red Yeast Riceの製造工程がきちんと管理されていない場合、citrininという物質が生成する可能性がある。citrininは、動物実験では腎臓疾患を引き起こす例が報告されているし、人間でも遺伝子を損傷する例が報告されている。2011年に、サプリメントとして販売されているRed Yeast Rice製品を分析した結果では、11製品中4製品でcitrininが含有されていることが明らかとなった。
(2)亜麻仁及び亜麻仁油
●科学的事実
・亜麻仁を原料としたサプリメントについて、そのコレステロール値低減効果を調査した研究結果は適否様々であった。28の臨床試験結果をまとめた2009年の総括では、亜麻仁及び亜麻仁リグナンを原料としたサプリメントについて、中程度のコレステロール値低減効果があるとした。その効果は、更年期以後の女性/高コレステロール血症の人でより顕著であった。なお、亜麻仁油については、そのような効果は見られなかった。
・α-リノレン酸(亜麻仁/亜麻仁油に含まれている物質)が、心臓疾患を患っている人に有益であるという研究結果が複数報告されている。しかし、亜麻仁が心臓疾患に対して有効であると結論付けるだけの信頼出来るデータは得られていない。
●安全性
・亜麻仁/亜麻仁油を原料としたサプリメントについては、安全性には問題ないと思われる。副作用例は殆ど報告されていない。
・亜麻仁は、他の食物繊維サプリメントと同様に、摂取時には水分も同時に十分摂取する必要がある。水分を十分に摂取しなければ、便秘を悪化させたり、ごく稀に腸閉塞を引き起こすこともある。また、亜麻仁/亜麻仁油は下痢を引き起こす場合もある。
・理論的には、亜麻仁に含まれる食物繊維は、経口摂取した他の医薬品の吸収を阻害する可能性がある。なので、亜麻仁は他の医薬品/栄養補助食品と同時に摂取してはならない。
(3)ニンニク
●科学的事実
・ニンニクを原料とするサプリメントの摂取により、血中コレステロール値が僅かに低下する可能性を示す例が複数報告されている。それらの報告では、短期間(1~3ヶ月)の服用で効果があるとされている。しかしながら、米国国立補完代替医療研究センターが資金を提供して実施した研究では、3種類のニンニク加工品(生/乾燥粉末/抽出物)の有効性/安全性を調べたが、その結果では、それらには血中コレステロール値を下げる効果がないとされている。
●安全性
・成人については、ニンニクを原料とするサプリメントの安全性に問題はないと思われる。
・副作用としては、口臭・体臭の発生/胸焼け/胃酸の逆流/(稀に)アレルギー反応が報告されている。これらの副作用は、生のニンニクを摂取した際により多く発生している。
・ニンニクを原料とするサプリメントについては、血液の凝固作用を低下させることが報告されている。その作用機序はアスピリンと同じである。この効果は、手術後において問題となりうる。なので、外科手術/歯科治療を予定している人/血液が凝固しにくい人は、ニンニクを原料としたサプリメントの摂取に慎重になるべきである。
・ニンニクを原料とするサプリメントはsaquinavir(HIV感染症薬)の効果を阻害することが確認されている。その他の医薬品との相互作用についても、十分には研究されていない。
(4)その他のサプリメント
・緑茶/ノニ/赤クローバーが、血中コレステロール値を低減させる効果があるかどうかについては、何らかの判定を下すための信頼出来るデータが十分には得られていない。
・大豆タンパクを日常的に摂取することで、血中の低密度コレステロール(=悪玉コレステロール)値を僅かに低下する可能性があることを示唆する研究結果が報告されている。
<健康的な生活スタイル>
(1)食習慣
・飽和脂肪酸/トランス脂肪酸が少ない食生活を実践することにより、血中コレステロール値が大幅に低減することが示されている。米国国立衛生研究所傘下の米国心肺血液研究所(National Heart, Lung and Blood Institute)は、投薬治療と「治療目的での生活習慣改善」を同時進行で実践することを推奨している。具体的な改善内容としては、
・一日あたりの飽和脂肪酸の摂取量を、カロリー比で7%以下とする
・一日あたりのコレステロール摂取量を200mg以下とする
・一日あたりの総脂肪摂取量を、カロリー比で25~35%とする
・植物スタノール/ステロールを2g/日、可溶性食物繊維を1~25mg/日摂取する
・一日あたりの総カロリー摂取量を、健康的な体重を維持する程度に抑制する
(2)運動
・現時点で既にメタボリック症候群と判定されている人/高脂血症を発症している人については、米国心肺血液研究所が示した治療指針では、減量/運動量の増大を強調している。
・定期的な運動は、体重のコントロールに役立ち、その結果として高密度リポたんぱく(善玉コレステロール)を増やす/低密度リポたんぱく(悪玉コレステロール)を減らす効果があることが立証されている。米国心肺血液研究所は、一日に30分間の中程度の運動(早足のウォーキングなど)をほぼ毎日(=週あたり150分間以上)実践することを推奨している。
(3)体重のコントロール
・過剰な体重を減らすことで、コレステロール値/トリグリセリド値が改善し、その結果として高血圧/糖尿病/心臓疾患などを発症する危険性を減らすことが立証されている。
・BMIを指標とした場合、正常域は18.5~24.9である。25~29.9は太り気味であり、30位上は肥満と判定される。
・腹囲を指標とした場合、女性で89cm以上/男性で102cm以上はメタボリック症候群に当てはまると共に、心臓病等の肥満関連症が発症する危険性が増大していると考えられる。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
【高コレステロール症と補完代替医療】(2013年2月、NCCAMニュースレター)
アメリカ合衆国では、成人の約13%で総コレステロール値が高いと推定されている。コレステロール値を下げることで、動脈壁での血栓の形成の進行抑制/低減/停止が期待でき、ひいては心臓疾患の発生を抑制できる可能性がある。高コレステロール症の処置の頼みの綱は食生活改善/減量/運動/(必要なら)薬物投与である。
2007年に行われた国民健康調査では、成人が補完代替医療の手法を実践しようとする理由の上位10位以内に高コレステロール血症が入っている。本記事では、高コレステロール症対策として利用されている幾つかのサプリメント(紅色酵母米=Red Yeast Rice、亜麻仁及び亜麻仁油、ニンニクなど)について、その有効性/安全性に関する事実をまとめた。
<サプリメント>
(1)紅色酵母米(Red Yeast Rice)
●科学的事実
・Red Yeast Riceを原料としたサプリメントには、monacolin Kを多量に含むものがある。このmonacolin Kは、コレステロール値を下げる効果があるlovastatinの有効成分と化学的には同一なので、血中コレステロール値を下げる可能性がある一方、lovastatinと同様の副作用/薬物間相互作用が発生する可能性もある。そのため、米国食品医薬品局(FDA)は、monacolin Kが検出されたRed Yeast Riceサプリメントは栄養補助食品として販売することを法的に禁止している。
・なので、栄養補助食品として販売されているRed Yeast Riceサプリメントからはmonacolin Kは検出されていない。これらのサプリメントに血中コレステロール値を下げる効果があるかどうかはわかっていない。
・ただ、Red Yeast Riceサプリメントにどれだけのmonacolin Kが実際に含まれているかを一般消費者が知る方法はない。実際、それらのサプリメントに表示されているのはRed Yeast Riceの含有量だけであり、monacolin Kの含有量は表示されていない。
・安全性に疑念が持たれていること、及び合法的に市販されているRed Yeast Riceサプリメントの有効性を裏付ける研究結果が報告されていないことからすると、Red Yeast Riceサプリメントを高コレステロール症の治療目的で摂取するべきではない。
●安全性
・lovastatinを服用している患者に見られる副作用は、monacolin Kを含有しているRed Rice Yeastサプリメントを服用している人でも発生する可能性がある。発生する可能性がある副作用は、ミオパシー/横紋筋融解症/肝臓毒性、である。実際、これらについては発生したという報告例がある。処方薬であるstatinを服用している人は、定期的に主治医の診断を受けているが、Red Yeast Riceサプリメントを服用している人は自分自身でチェックする必要がある。
・妊娠中/授乳中の人は、Red Yeast Riceサプリメントを服用してはならない。
・lovastatinについては、他の医薬品と相互作用を起こし、横紋筋融解症を発症する危険性を増大させる。そのような医薬品の例は、他のコレステロール値低減薬/抗生物質/nefazodone(ブリストル・マイヤーズ・スクイブ社が販売している抗うつ剤)/細菌感染症薬/HIV感染症薬である。monacolin Kを含有するRed Yeast Riceサプリメントでも、同様の医薬品相互作用が発生する可能性がある。
・Red Yeast Riceの製造工程がきちんと管理されていない場合、citrininという物質が生成する可能性がある。citrininは、動物実験では腎臓疾患を引き起こす例が報告されているし、人間でも遺伝子を損傷する例が報告されている。2011年に、サプリメントとして販売されているRed Yeast Rice製品を分析した結果では、11製品中4製品でcitrininが含有されていることが明らかとなった。
(2)亜麻仁及び亜麻仁油
●科学的事実
・亜麻仁を原料としたサプリメントについて、そのコレステロール値低減効果を調査した研究結果は適否様々であった。28の臨床試験結果をまとめた2009年の総括では、亜麻仁及び亜麻仁リグナンを原料としたサプリメントについて、中程度のコレステロール値低減効果があるとした。その効果は、更年期以後の女性/高コレステロール血症の人でより顕著であった。なお、亜麻仁油については、そのような効果は見られなかった。
・α-リノレン酸(亜麻仁/亜麻仁油に含まれている物質)が、心臓疾患を患っている人に有益であるという研究結果が複数報告されている。しかし、亜麻仁が心臓疾患に対して有効であると結論付けるだけの信頼出来るデータは得られていない。
●安全性
・亜麻仁/亜麻仁油を原料としたサプリメントについては、安全性には問題ないと思われる。副作用例は殆ど報告されていない。
・亜麻仁は、他の食物繊維サプリメントと同様に、摂取時には水分も同時に十分摂取する必要がある。水分を十分に摂取しなければ、便秘を悪化させたり、ごく稀に腸閉塞を引き起こすこともある。また、亜麻仁/亜麻仁油は下痢を引き起こす場合もある。
・理論的には、亜麻仁に含まれる食物繊維は、経口摂取した他の医薬品の吸収を阻害する可能性がある。なので、亜麻仁は他の医薬品/栄養補助食品と同時に摂取してはならない。
(3)ニンニク
●科学的事実
・ニンニクを原料とするサプリメントの摂取により、血中コレステロール値が僅かに低下する可能性を示す例が複数報告されている。それらの報告では、短期間(1~3ヶ月)の服用で効果があるとされている。しかしながら、米国国立補完代替医療研究センターが資金を提供して実施した研究では、3種類のニンニク加工品(生/乾燥粉末/抽出物)の有効性/安全性を調べたが、その結果では、それらには血中コレステロール値を下げる効果がないとされている。
●安全性
・成人については、ニンニクを原料とするサプリメントの安全性に問題はないと思われる。
・副作用としては、口臭・体臭の発生/胸焼け/胃酸の逆流/(稀に)アレルギー反応が報告されている。これらの副作用は、生のニンニクを摂取した際により多く発生している。
・ニンニクを原料とするサプリメントについては、血液の凝固作用を低下させることが報告されている。その作用機序はアスピリンと同じである。この効果は、手術後において問題となりうる。なので、外科手術/歯科治療を予定している人/血液が凝固しにくい人は、ニンニクを原料としたサプリメントの摂取に慎重になるべきである。
・ニンニクを原料とするサプリメントはsaquinavir(HIV感染症薬)の効果を阻害することが確認されている。その他の医薬品との相互作用についても、十分には研究されていない。
(4)その他のサプリメント
・緑茶/ノニ/赤クローバーが、血中コレステロール値を低減させる効果があるかどうかについては、何らかの判定を下すための信頼出来るデータが十分には得られていない。
・大豆タンパクを日常的に摂取することで、血中の低密度コレステロール(=悪玉コレステロール)値を僅かに低下する可能性があることを示唆する研究結果が報告されている。
<健康的な生活スタイル>
(1)食習慣
・飽和脂肪酸/トランス脂肪酸が少ない食生活を実践することにより、血中コレステロール値が大幅に低減することが示されている。米国国立衛生研究所傘下の米国心肺血液研究所(National Heart, Lung and Blood Institute)は、投薬治療と「治療目的での生活習慣改善」を同時進行で実践することを推奨している。具体的な改善内容としては、
・一日あたりの飽和脂肪酸の摂取量を、カロリー比で7%以下とする
・一日あたりのコレステロール摂取量を200mg以下とする
・一日あたりの総脂肪摂取量を、カロリー比で25~35%とする
・植物スタノール/ステロールを2g/日、可溶性食物繊維を1~25mg/日摂取する
・一日あたりの総カロリー摂取量を、健康的な体重を維持する程度に抑制する
(2)運動
・現時点で既にメタボリック症候群と判定されている人/高脂血症を発症している人については、米国心肺血液研究所が示した治療指針では、減量/運動量の増大を強調している。
・定期的な運動は、体重のコントロールに役立ち、その結果として高密度リポたんぱく(善玉コレステロール)を増やす/低密度リポたんぱく(悪玉コレステロール)を減らす効果があることが立証されている。米国心肺血液研究所は、一日に30分間の中程度の運動(早足のウォーキングなど)をほぼ毎日(=週あたり150分間以上)実践することを推奨している。
(3)体重のコントロール
・過剰な体重を減らすことで、コレステロール値/トリグリセリド値が改善し、その結果として高血圧/糖尿病/心臓疾患などを発症する危険性を減らすことが立証されている。
・BMIを指標とした場合、正常域は18.5~24.9である。25~29.9は太り気味であり、30位上は肥満と判定される。
・腹囲を指標とした場合、女性で89cm以上/男性で102cm以上はメタボリック症候群に当てはまると共に、心臓病等の肥満関連症が発症する危険性が増大していると考えられる。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます