花粉症と補完代替医療

2013年04月18日 | 米国補完代替医療研究センター公開文書
米国国立補完代替医療研究センター(NCCAM)のニュースレターから転載します。原文(英語)はこちら

もうちょっと早く発行してくれたらなぁ…。
それでも、我が身にも関連することなので、速攻で日本語化しました。
ご参考まで。

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花粉症と補完代替医療:科学的事実について
(2013年春 米国国立補完代替医療研究センター)


 花粉症は普遍的な慢性症状である。少なくとも、アメリカ合衆国の成人の7.8%(約1,770万人)及び小児の9%(約700万人)が花粉症であると推定されている。

 花粉症の患者は様々な方法で対応している。具体的には、
・薬物を服用する
・アレルギー反応を引き起こす物質への被曝を避ける
・(免疫療法の一つである)「アレルギー注射」を継続して受ける
・補完代替医療の手法を実践する。
等である。2007年に行われた、米国健康インタビュー調査の結果では、小児が補完代替医療の手法を実践する理由のトップは「呼吸器系のアレルギー症状」であった。本文書では、花粉症の対処方法として用いられている幾つかの補完代替医療の手法(生理食塩水による鼻洗浄/ハーブとしての蕗/蜂蜜/鍼治療など)に関し、現時点で明らかとなっている科学的事実についてまとめた。

 生理食塩水による鼻洗浄については、その有用性を支持する科学的証拠が報告されている。その他の補完代替医療的手法(ハーブとしての蕗の摂取等)については、有用性がある可能性を示す報告も見られるが、その数は少なく、全体としては賛否両論であり、そしてその手法の安全性には問題がある場合も見られる。それらについては、花粉症の治療に有効かつ安全であると結論付けるには、さらなる研究が必要である。

(1)生理食塩水による鼻洗浄
 生理食塩水による鼻洗浄とは、生理食塩水を片方の鼻孔に注入し、もう一方の鼻孔から排出するという方法である。生理食塩水を鼻孔に注入する際に、アーユルヴェーダ/ヨガの伝統的な道具であるneti potを用いる場合もある。その他に用いられる注入器具には、瓶/スプレー/ポンプ/噴霧器等がある。現在では、薬局などで販売される専用の道具(大抵は生理食塩水がセットになっている)もある。

科学的証拠の信用度合い
●生理食塩水による鼻洗浄については、花粉症に対する有効性を調べた研究結果が多く報告されている。

研究結果について
●小児及び成人を対象とした実験で、生理食塩水による鼻洗浄が花粉症に伴う症状の改善に有効であることを示す結果が複数報告されている。
●そのような研究結果をまとめた総論では、生理食塩水による鼻洗浄が中程度の症状改善効果があると結論づけられている。

安全性
●一般的には、生理食塩水による鼻洗浄は安全である。しかしながらそれは、生理食塩水を注入するための道具がきちんと洗浄されていること/正しく用いられること、が前提である。
●最も注意すべきは、生理食塩水を作成するのに用いられる水である。米国食品医薬品局によると、濾過などの処理が施されていない水道水を用いるのは危険である。水道水には低濃度の生物(バクテリア/アメーバなどの原虫)が混入している場合がある。ただ、これらは通常、飲み込んでも安全である(胃酸によって死滅するので)。しかしこれらの「虫類」は、鼻腔内においては生存可能であり、潜在的に重大な感染症を引き起こす可能性がある。
●2011年にルイジアナ州において、neti potを不適切に使用した結果、脳内への感染症で2名が死亡する事故が発生している。ルイジアナ州の健康担当部局の調査で、水道水に混入していたNaegleria fowleriと呼ばれるアメーバが原因であると断定された。

(2)蕗(”Butterbur”)

 蕗はヨーロッパ/北米/アジアの一部に生育する低木である。通常、湿地に生育する。蕗は古来、様々な症状(痛み/頭痛/不安感/咳/発熱/消化器系・泌尿器系症状)の治療に用いられてきた。また、創傷の治癒を促進する目的でも用いられている。現在でも、伝承医療として、花粉症/アレルギー性皮膚症状/喘息/偏頭痛の治療に用いられている。

科学的証拠の信用度合い
●花粉症に対する蕗の効果については、幾つかの小規模な臨床試験結果が報告されている。

研究結果について
●米国国立補完代替医療研究センターが資金提供した臨床試験(被験者数=125名)の結果では、蕗は、眼の痒みなどのアレルギー症状に対して通常用いられる経口抗ヒスタミン薬と同じくらい有効であると報告されている。
●蕗抽出エキスが、花粉症に伴う症状を軽減しうるという報告が複数なされている。

安全性
●ブタクサ/菊/マリーゴールド/デイジー等の植物に対し敏感な人が蕗を摂取した場合、アレルギー反応が見られる場合がある。
●蕗の粗抽出エキスには有毒物質であるピロリジジンアルカロイドが含まれている。このピロリジジンアルカロイドは肝臓を損傷し、癌を発生させる可能性がある。市販されている蕗抽出エキスは、これらのアルカロイド類を殆ど全く含まない蕗から作製されている。しかしながら、蕗抽出エキス(アルカロイド類を殆ど含まないものについても)を長期間服用した場合の影響については全く調査されていないので、その慢性毒性については不明である。

(3)蜂蜜
 蜂蜜を摂取することが、花粉症の症状軽減に有効であると主張する人がいる。その理由は、特定の地域で生産された蜂蜜にはその地域の人が曝されている花粉が少量含まれているから、その摂取がいわばDIY的な免疫療法になる、というものである。

科学的証拠の信用度合い
●花粉症に対する蜂蜜の効果を調査した研究結果はごく少数である。

研究結果について
●蜂蜜が花粉症に対し有効であると結論付けられる科学的証拠は無い。

安全性
●一般的には、蜂蜜の摂取は安全である。但し、1歳以下の乳児は蜂蜜を摂取してはならない。花粉及び蜂刺されに対しアレルギー反応を示す人は、蜂蜜の摂取によってアレルギー反応が発生する可能性がある。

(4)鍼治療

 鍼治療が花粉症の症状軽減に有効であるとする”言い伝え”がある。しかしながら、鍼治療が仮に有効であるとしても、その理由/作用機序は不明である。

科学的証拠の信用度合い
●花粉症の症状軽減を目的とした、鍼治療の臨床試験はごく僅かしか行われていない。

研究結果について

●上述の通り、花粉症の症状軽減を目的とした鍼治療の臨床試験はごく僅かしか行われていないが、それらにおいても、花粉症の症状軽減に鍼治療が有効かどうかは明確になっていない。

安全性

●鍼治療に伴う合併症の報告例は比較的少ない。報告例については、治療に用いられる鍼の殺菌が不充分な場合/不適切な治療方法が原因であった。
●鍼灸師は、治療毎に殺菌済みの使い捨て鍼を使用すべきである。また、鍼を刺入する部位を刺入直前にアルコール等の殺菌剤で消毒すべきである。それらの処置が不適切な場合、鍼治療によって重大な事故(感染/器官の損傷)が発生する可能性がある。

(5)その他の治療方法
●ω-3脂肪酸の摂取がアレルギー性鼻炎の症状悪化を予防する効果があるかどうか現在調査中ではあるが、現時点では(効果があるとする)明確な証拠は得られていないと報告されている。
●プロビオティクスを摂取した場合の効果は様々である。また、摂取するプロビオティクスの組み合わせによっても効果は異なる。
●その他の天然物(蓮華草/カプサイシン/ブドウ種子エキス/ピクノジェノール/ケルセチン/スピルリナ/イラクサ/tinosporaやguduchi等アーユルヴェーダで用いられる各種ハーブ類)が花粉症の症状軽減を目的として摂取されているが、それらの有効性について適否いずれかの判断が下せるだけの科学的証拠は十分には得られていない。

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