写真:「Sweeten the Future」より転載
代謝の促進、体質改善に威力を発揮する有機酸が抜群!
梅の主成分は、約90%の水分と、わずかなタンパク質、糖分です。しかし、ミネラル類、ビタミン類、有機酸類は、
ほかの食べ物に類をみないほど多種多様で、梅が日本人の生活の中に深く根をおろした最大の理由もここにあります。
梅の有機酸は、クエン酸、リンゴ酸、琥珀酸、酒石酸など、ミネラル類は、カルシウム、リン、カリウムなどです。
ビタミン類ではカロチン、B1、B2、Cなどがあります。
梅の効能については、昔から疫痢、赤痢、急性胃腸カタル、虫垂炎、腸チフス、丹毒の解熱、肺結核などの抗菌作用、
疲労回復などの生理活性作用がいわれています。
体内での抗菌性については、いまでは抗生物質にとってかわられ、あまり注目されていませんが、生理活性作用としての作用は
見直されています。
たとえば、疲労回復には、クエン酸が糖の代謝を活発にし、乳酸の処理を高めますから、だるさや筋肉疲労を積極的に解消します。
また、各種の有機酸が胃腸の活動を盛んにして食欲を増進させ、消化を促して栄養の吸収を高めますから、
虚弱体質の改善ばかりか、全身的な栄養代謝に役立ちます。
梅の抗菌作用は、食べ物を腐敗させるカビや細菌の増殖を抑える働きがあり、防腐作用をします。
ただし、サルモネラ菌などの強力な菌には、数個の梅干しだけでよいという過信は禁物です。
二日酔い防止に梅の効用が知られています。これは、梅のピクリン酸が肝臓の機能を活性化させるためと考えられています。
梅肉エキスは、梅の薬用の中では最高!
梅を薬用に用いるには生食では不可能で、梅肉エキス、梅酢、梅酒、梅干しなどにして利用します。
ちなみに、梅肉エキスは、梅干しの30倍の効能と10倍の抗菌性があるといわれています。梅の薬用の中では最高のものです。
梅酒は、梅のもつ作用とアルコールとの相乗効果を期待したもので、1日30~50mlを数回に分けて飲むと、からだが温まり、
冷え性や疲労の回復、胃腸の弱い人や不眠症の改善に役立ちます。また、はれものの痛みやリュウマチ、神経痛などには、
梅酒を布かタオルにして湿布するとよく効くようです。
梅干しは梅の保存法として用いられたものです。成分的には、塩分(ナトリウム)が約4000倍に増えているほか、
カルチンがわずかに減っていますが、有機酸類はあまり変化がないようです。
したがって、高血圧の人には、塩分の過剰摂取が心配になりますが、それも一度に10数個以上食べたときのことで、
1日1~2個まででしたら、むしろ、有機酸の作用(血圧安定や糖代謝)のほうが期待できます。
漢方では、自然落下した梅の未熟果を,くん製にしたものを烏梅 (ウバイ)といって、整腸、駆虫に用います。
風邪の初期に、梅干しに熱湯を注いで飲むと、汗をかいて熱を下げるという知恵も、漢方の応用とも考えられています。
〔注〕 『クスリになる食べもの百科』(主婦の友社・刊)より引用しました