絵を使って語る

文を暗記して語る方法の他に、こんなやり方もあります。

私は紙芝居を作るときに升目を埋めていく作業をします。これをストーリーテリングに応用できないかと考えました。
本番には、聞き手の前に透明なガラス板があって、ガラス板には自分の書いたコマ絵がぼんやりとあります。意識がその絵に移ったり、ガラスのむこうの聞き手の顔に移ったりして語りをすすめます。
これだと、文章を追うのでなく、絵を追いかけることになるので、文字の暗記は必要ありません。

では、「ミアッカどん」をやってみましょう。
一番簡単な語りをやってみます。
トミーという男の子が、家を出た角のところで、鬼(本だとミアッカという名前)につかまったんだって。そして、袋に入れられて鬼の家につれていかれた。鬼は子どもを食べるのが大好き。でも、鬼が留守のときに、鬼の奥さんに「家に行っておだんごもってきてやるよ」といってだまして逃げたんだよ。でも、また捕まっちゃった。今度は鬼は自分で料理しようと鍋を用意してね、トミーに「足をだせ。にげられないようにしてやる。」と、言った。トミーは何を出したと思う?こっそり、椅子の足を出した。鬼はそれを煮て安心して、ちょっと隣の部屋に行ったんだ。トミーはそのすきに逃げ出した。だから、子どもは自分の家から離れる時は、気をつけるんだよ。道の角だよ・・車も来るしね。

題も、「ミアッカどん」の「どん」って何?と今の子どもに言われそうです。紙芝居『てんぐとかっぱとかみなりどん』のように、名前の後につく「さん」のような言葉です。日本の言葉なので、「てんぐどん」「佐助どん」など、日本の名前の後ろにくっつくのが普通。「ミアッカ」という外国名前のあとに無理につけたのは、当時の翻訳者の感性であって、当時の努力の結果ではあるけれども現代では奇怪な感じさえうけます。これは直したほうがいいと思うし、第一、主人公はトミーです。「袋に入れられた男の子」というお話もありますので、関連させて、「トミーの細い足」とか「トミーのぼうけん」とか、そういうのでどうでしょうか。近所の子どもに話すのならば、これでイケます。自治会なんかの集まりはこれでいいと思います。イギリスの話だよ、と言えばいいかな。

もう少し、盛り上げて話せるといいですね。紙にメモを書くこんな方法はどうでしょう。

① プリンターの紙など、何でもいいのですが、8等分に折って線を引いて升目を作ってください。小さくてもいい方は16等分でもなんでもいいです。
左の四つは絵、右の四つはキーワードになるような言葉(ほとんど単語)をメモするスペースです。
② 絵なんか書けない、と言う方。ただのマークを書けばいいと考えてください。例えば主人公がトミーならば、○にトを書いて棒が4本。これが手足です。これをうごかしましょう。おじいさんが登場するなら○にジ、おばあさんは○にバ、なんでもいいんです。自分が分かればいい。
③ 1枚目は、○にトの字が曲がり角を曲がって鬼(○にオニ)につかまってるとこ。袋にいれられてる。キーワードは「トミー」「曲がり角」「鬼」「袋」
  2枚目は、鬼の奥さんにうそをついてるところ。キーワードは「鬼の奥さん」「おだんご」
  3枚目は、鬼が椅子にすわってなべ料理をしている。トミーが椅子の足をさしだしているところ。『イギリスとアイルランドの昔話』に絵があります。椅子の足を出すところが納得いかない人は、木の棒でもいいかも。キーワードは「逃げ出せないように」「足をだせ」
  4枚目はちょっとどこかに行こうとする鬼と逃げるトミー。二人は逆方向を向いて書きます。キーワードは「逃げていった」「曲がり角に注意」

これは外国の昔話です。高齢の方は「ももたろう」「はなさかじいさん」なんかの方が好きなのですね。しかも話を忘れている。そういう人は、絵本を借りてきて、自分で絵を書く代わりに、その絵本の絵を使って、キーワードだけ別の紙にちょっと書いて語ってみればいいと思います。
 もちろん昔話の本から話をもってきて、それをわすれてしまったところに当てはめてもいいと思います。それこそ、本から学んでいるのではないでしょうか。何遍も、その本の文章を読むだろうから語り口も似てくるかもしれない。正しい日本語に「近く」なるかもしれないし、孫が「おばあちゃんが本を見て勉強してる」と思うかもしれません。
 
 黒埼図書館の児童コーナーで、4,5才位の、ある女の子をたまに見かけることがありました。紙芝居の絵を自分に向けて広げて、なにかしゃべっているのです。その絵を見て、自分の言葉でおはなしを口にしていたのです。本当に驚きました。人間にはそんな力もある。小さい子どもと高齢の方に、ある、ような気がする。これを上手くつなげていけば、なんと楽しい昔語りになるだろうか。


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