亀の啓示

18禁漫画イラスト小説多数、大人のラブコメです。

とにかくイチャイチャハロウィン小説版⑥

2017-12-09 20:29:32 | とにかくイチャイチャハロウィン小説版
「ちょっと早く着いちゃったなあ。」

亮との約束は午後からだった。
一緒にお茶を飲んでゆっくりして
夜まで静かに過ごす予定だった。
ディナーはどこで何を食べようか
臨時収入があったから、好きなもの
ご馳走するよと、亮は気前のいいことを
言っていたっけ。
でも美月は、街でいい食材が
安くなっていれば仕入れていき
一緒に料理して。ずっと二人きりで
夜を楽しみたいとも思っていた。
お昼前から美月は魔界に入り
マーケットをはしごしていたのだった。

ドレスやアクセサリーのブランドショップが
軒を連ねる通りを横切って、市場を覗こうと
していたときだった。

「おい。もう行くぞ。」

確かに亮の声が聞こえた。
美月はうれしく声の方を探したが
次の瞬間、魔法に掛かったように
立ち尽くした。

「まだよ。んもう、せっかちな男は
出世しないわよ?」

「出世なんてしませんから。」

「情けないわね。これにするわ!
キャッシャーに手配して。」

亮は女性をエスコートしている。
小柄で細身、でも胸と腰に揺れる
魅惑的なボリュームがある。
長くてふわりと巻いたブロンドが
女も羨むリズムで肩で踊る。
ご機嫌でバッグと靴を選んでいて
見れば亮は、幾つもの紙袋や
きらびやかに包まれた箱を抱えている。

「ありがと。助かったわ。」

女性の手が亮の二の腕を滑る。
白くたおやかで、指が細く長い。
美月には職業柄出来ないネイルが光る。
ラインストーンが品よく散りばめられている。

「で、これを全部運ぶんだろ?」

「お願いね。クロネコちゃん。」

「俺は配送業に転職した覚えはないよ。」

「やってくれるくせに。
だって明日のパーティーで着るんだから。
間に合わないわ。」

「分かってるよ。」

二人はつき合いの長い様子をうかがわせる。
ずっと前からこんな風に一緒にいたように。

「亮のことは、何にも知らないよ。」

美月は亮に、自分の知らない別の生活が
ずっと前からあったのではないかと思った。
プロポーズもされたばかりだ。
確かに愛し合っている実感もある。
それでも、美月の心は大きく揺さぶられて
しまったのである。









気づけば美月はカフェで
パンケーキと
チーズケーキと
ショートケーキと
チョコレートパフェと
ストロベリーワッフルと
シュークリームと
シトラスフルーツタルトと
モンブランと
アールグレイシフォンケーキと
ミルクレープを平らげ
珈琲をお代わりしていた。

お腹が減ると気持ちが惨めになる。
甘いものでお腹を満たし、幸せな
気持ちになれば冷静に分析出来るかと
思ったのだが。
美月は悲しくて惨めな気持ちの上に
怒りがこみ上げてきてしまう。
怒る元気が出てしまったのだ。

だってこれは。
あたしを騙してたってことでしょ?
プロポーズまでしておいて。
騙していなかったとしたら
さっきのは、浮気だよね?

「すみません!プリンアラモード
ピーチサンデーひとつ!!」

美月は金魚鉢みたいなグラスに
プリンとピーチをメインに
アイスクリームもふんだんに盛り付けられた
普通は4~5人でシェアするメニューを
オーダーし、あっという間に平らげた。






美月は、約束の時間に亮の家に現れた。


亮は何事もないように
いつものようにうれしそうに
美月を迎えた。

「あれ?美月。」

美月は確かに自分が膨れっ面だったのは
自覚もあったし、亮に会ったらすぐに
問いただそうと怒りを最高潮に
維持していた。

「それは。フグ?」

でもフグにはなっていないつもり
だったので、会話が完全にすれ違って
少し気がそがれた。
その瞬間悲しみが津波になって押し寄せる。

「ぶふあっ」

フグ、いや膨れていた頬っぺたが
急に空気を抜かれて大きな音を立てる。

亮から見たら、単なる可愛い百面相で
笑いながら美月を抱きしめた。

「どうしたんだい?」

「どおしたもこおしたもないおっ!!」

美月はまだ空気のもたつく口の中で
嗚咽の波が押し寄せそうになるのを
必死に抑えこんでいた。
抱きしめられると、亮の体の暖かさと
いつもの優しい愛撫や激しい動きを思いだし
今度は淋しさが押し寄せた。

「いやあ!離れちゃいやだよ!」

「美月。」

亮にはこの美月の感情の動きが当然ながら
理解できなかったのだが、可愛かった。

亮は真っ昼間っから美月をベッドに運んだ。
運ぶならこいつをベッドに運ぶのが
一番だなと亮はだらしなく口元を弛めた。


ベッドの中で美月はずっと
亮にしがみついて言った。

ずっと一緒にいて
あたしを離さないで
お願い


訳もわからず
泣いている美月を
亮は鳴かせ続けた。









「どうしちゃったんだ?」

ようやく美月が鳴き疲れてけだるそうに
ベッドに横たわると、亮はゆっくり
話しかける。
いつもより激しく吸いあった唇は
赤く濡れている。亮はたまらず
また食べるようなキスをした。

「んあんっ」

美月がまた感じ始める。
このまま抱いてしまうと
また返事が聞けないままになる。
でも亮はもう一度美月を抱いた。







「あの女の人は?」

何度抱いたか分からなくなった。
行為の無限のループにはまりこんで
時間の感覚も鈍ったのか
とっくに深い時間になっていた。

少しずつ普通の感覚に戻るものの
体はベッドに吸い付くように重い。

「女の人?」

「今日ね。いつものマーケットに
昼前からいたんだよ。あたし。」

「そうだったんだ。ごめんな、予定が」

亮はようやく思い当たったようで
笑い出した。

「美月ってば!それであんなに?」

げらげらと笑いの止まらない亮に
美月は抱きついて拳で胸を打つ。

「あの人はなんなのッ?!答えてよッ!」

「あれは、俺の恩師の娘さんなんだ。
ガキのころからのつきあいだけど
アイツは姉貴みたいなもんかな。」

美月は当然ながら納得はしていない。

「ヴァンパイアとの混血で
魔女なんだよ。子どものころからの
有名なコウモリブリーダーなんだ。
アルファとベータもあいつから
譲り受けたんだ。」

彼女は亮の幼馴染みで
ヴァンパイアの血が入った魔女で
コウモリブリーダーである。

美月の質問には余すことなく答えた
亮だったのだが、これだけが彼女の望む
答えではないことを彼も分かっている。

「美雪っていうんだけどね。」

「綺麗な人だよね。」

「美月の方が、俺には綺麗だよ?」

「スタイルよくて」

「美月の方が、俺の好みだよ。」

「上品で、お洒落で。」

「お前の笑顔に敵うものはない。」

「あたしは。亮のことなんにも」

「これからの俺は美月のためだけに在る。
お前だけだよ。当たり前じゃないか。」

「大好き。」

「愛してる。お前だけだ。」

「あたしも愛してる。亮だけ。」







また、いつの間にか朝になっていた。
亮は午後から仕事だったが、美月は
学校も休みである。ゆっくりと朝を
一緒に過ごすことは、また夜とは違う
満足感がある。

「今日は打ち合わせだけだから。
お茶の時間には帰ってくる。」

「スコーン焼いて待ってる。」

「行ってくる。」

「ん。いってらっしゃい。」

美月は亮を親に会わせる算段を考え始める。
魔界では、親に結婚の許しを乞うなんて
観念はない。もちろん血筋を大事にする
種族もあり、そんな縁組みは初めから
管理されていることもあるらしい。
それでも他の大多数の魔物たちは
自由に恋愛をし、自由に婚姻を結ぶ。
婚姻という制度も確立されているが
幸せな家庭はすべてが制度に縛られて
いるわけではなく、自由だ。
人間の婚姻では家族ごと繋がりをもつが
そこら辺が理解に苦しむらしい。

朝食の後片付けをしていると
昨夜は構ってやれなかった
コウモリ兄弟が控えめに
キューキューと甘えた声を出している。
こんなとき、美月は自分に甘えてくれる
コウモリたちを可愛く思う。
彼らが自分を亮の恋人と認めてくれて
いるように思えるし、出会って間もない
しかも人間である自分に懐いてくれるのも
ありがたいと思うからである。

相変わらず自分の胸の谷間や太ももの間に
顔を突っ込んでくるアルファとベータを
優しく撫でていると、呼び鈴が鳴った。

美月は留守を守っているときにも
あくまで頼まれて留守番しているだけ
というスタンスを保つ。
対応するのは荷物を受けとるくらい。
誰か訪ねてきても、言伝てを聞くくらいに
とどめることにしている。

「はい、どちらさまでしょう。」

ドアをあけると、昨日亮と一緒にいた
女性が立っている。
美月は息を飲んだ。
もしかして。亮の言うことはみんな嘘で。
この彼女は当たり前のように
亮を誘いに家に来たのかもしれない。

「あら?いやだ、亮ったら
冗談じゃなかったのね!!」

美雪は大きな口を開けて
あらいけない、と手を口元に
持ってきて恥ずかしげに包んだ。

「だって!会って十日もしないうちに
プロポーズしたなんて言うんだもの!」

「本当です。彼は真剣に」

「あらごめんなさい、いけないって
いうんじゃないんだけど。うふふ。」

美雪は本当に苦しいくらいに笑う。

「あいつ、昔から慎重派で。
考えられなくて、こんなこと。うふふふ。」

「昔から?」

「あ、あたしあいつの幼馴染みでね
五歳くらいからよく遊んでやってるのよ。」

美月はいけないと思いながらも
つい敵意が顔に出る。
眼差しがキツくなり、口角が下がる。
分かっているのに、どうにも出来ない。

「なにか誤解していない?」

美雪も笑顔が消える。

美月は怯んで肩をすくめた。
この人、魔女だって言ってたな。
こんな人と喧嘩して勝てるのかな。
肉体的な力でなら利き手を封じられても
勝てるだろう。相手は肉体的には只の女だ。

「あいつが出会って十日もしないうちに
プロポーズまでする、あたしには分かるわ
それがどれほどのことなのか!」

「……。」

「一生に一度の運命の出会いだわ。
誰にも邪魔できない。」

「え?」

美月は予想していた展開と違う方へ
話が進んでいることに我を忘れて驚いた。

「アルファとベータは?
あの子達もきっとあなたにメロメロね?」

「あ、ああ。懐いてくれてます。」

「アルファ!ベータ!」

美雪は美月の肩越しに、奥を覗くように
声をかけた。二匹の羽音がする。

「ア、ミユキイラッシャイイラッシャイ」

「マタ、トオルニニモツモチサセル?」

「シチュウヒキマワシヒキマワシ♪」

アルファとベータは嬉しそうに
美雪の回りを飛び回る。
美雪は人差し指を宙にかざし、指の腹を
チコチコと上下に動かした。
アルファとベータは触れられてもいないのに
いつも美月がイイコイイコしたときの
うっとりした顔つきを見せた。

「ブリーダーなんかやってるとね。
コウモリ5~6匹一時に撫でなきゃ
いけないのよ。今のあたしが使う
魔法なんてこの程度のもの。」

「二人とも美雪さんの胸の谷間とかにも
入り込んだりしますか?」

美月はもし、コウモリブリーダーが
全部のコウモリに甘えられたら
大変なことになるなと思った。

「ああ。雄も雌も暖かいとこが
好きだから、初めは来るわね。
だけどすぐ来なくなっちゃうの。」

美雪の谷間はコウモリたちに不評だ。
美月は首をかしげた。
気持ち良さそうなのに。

「あなたは谷間に入れてあげるの?」

「なんか、喜んでくれるから。」

美月の胸や太ももの間に挟まり
気持ち良さげにしている二匹を
美月は心穏やかに見つめる。

「あなた、人間よね?コウモリ
抵抗ないの?」

美雪は不思議そうに美月を見た。

「うちの近所にもアブラコウモリとか
よく見かけるし、あまり好きではないけど
この子たちは可愛いですね。」

美月の胸の谷間に入ったアルファは
気持ち良さそうに胸に頬擦りしている。
太ももの間に収まったベータは
キューキュー喜びながら股間に
にじりよる。

「………」

美雪には分かった。
この子たち、少し発情してるわ。
陰茎が伸びて露出するのも時間の問題だ。
これは後で亮に進言しておこうと
美雪は美月には話さないでおいた。

美月からはとてもしあわせな
女のフェロモンが出ているのだろう。
コウモリの雄たちにもいい匂いだと
感じられるらしい。

「なんだか安心したわ。
あなたが亮の奥さんなら大丈夫ね。」

美雪は満足そうに帰っていった。













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