映画 「ククーシュカ ラップランドの妖精」のポスター
(2006.4.19撮影)
話の始まりは、フィンランド最北の地ラップ
ランドで、ロシアとフィンランド(ナチスドイ
ツの同盟国)が戦っていた頃のこと。平和
主義者であるフィンランドの狙撃兵ヴェイッ
コは、仲間に岩につながれたまま置き去りにされてしまう。鎖の一
方は足首に、もう一方を岩の割れ目に大きな釘で固定されて。仲間
はお情けでわずかの食料と水を置いて行く。
もうひとり、秘密警察に逮捕されたロシア軍の大尉イワンは連行中、
味方の軍の誤爆によって重傷を負う。そんな兵士2人を偶然に助け
たのが現地に住むサーミ人の未亡人アンニだ。自分の小屋にかくま
ってやる。
僕は、この映画は一種の反戦映画だと思うが、2002年モスクワ
国際映画祭で最優秀監督賞と他5部門で受賞されているだけに、な
かなかいい映画だと思う。
この映画の面白いところは、登場人物がすごく少ないこと。序章が
過ぎ、未亡人アンニが男性2人を助けるころから、ほとんどヴェイッ
コ、イワン、アンニの3人だけで話が進む。そして、登場する3人の
話す言葉がすべて違うという設定も今までになく新しい。
この映画を見て感じたことはいくつもあるが、まず第1は知恵力。
岩につながれたヴェイッコがどうしてその場を逃れるか興味深く見
た。ロシア兵に見つかれば命がないだけに必死。あらん限りの知恵
を振り絞って悪戦苦闘し、ついに成功する。人間、命が掛かると火
事場のばか力が出るというやつ。知恵だって出る。
第2に女の偉大さ。辺境の地で一人で生活するたくましさ。そして、
降ってわいたように現れた男を前にして、率直で直接的な愛の表現
がいい。最初はヴェイッコをもとめ、後にはイワン。こだわりがなく、
おおらか、生命そのもの。ラップランドの大地のごとし。
第3に言葉の力。主役の3人がフィンランド語、ロシア語それにサー
ミ語と違う言葉を使い、それぞれ自分の言葉で一方的に話す。相手
が理解できているかどうかは関係ない。意思疎通ができない最悪の
ケースはイワンがヴェイッコを撃って瀕死の重傷を負わせた場面。
映画ならではの誇張もあるが、意思疎通の手段としての言葉の重要
性は大きい。そのことを改めて知らされた。
余談ですが、深夜番組の「こちトラ自腹じゃ」で、映画監督の井筒
監督がこの映画を高評価(3つ星)したというのは、映画館へ行っ
て初めて知りました。(上の写真を参照してください)
参考:
スタッフ
監督:アレクサンダー・ロゴシュキン
製作:セルゲイ・セリヤノフ
音楽:ドミトリー・パヴロフ
キャスト
アンニ=クリスティーナ・ユーソ
ヴィクトル・ヴィチコフ
ヴィル・ハーパサロ
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