青空文庫

徒然なるまま自分の面白いと思う本の書評や感想を書き綴っていきたいです。最新の本だけではなく、古書にも興味を持っています。

スピン偏極電子

2012-06-11 07:38:11 | 日々思うこと

スピン偏極電子

さてこれから何回かにわけて学生時代の研究紹介をしようと思うが、連チャンでの紹介はしないようにしようと思う。同じ内容ばかり書いていると飽きてくるのと、世界は物理だけでできているわけではないので、「日々思うこと」に反してしまうのだ。(日々思うことはもっと雑多な内容が多い)

初回は「スピン偏極電子」について紹介しようと思う。本当は研究の背景などから入るのが常識だが、もう少し後に簡単に紹介するとして、先に「スピン偏極電子」とは何ぞや、どのようにスピン偏極している電子を生成するのか?などを紹介しようと思う。早速スピン偏極の定義から入る。

スピン偏極度 はup spinをN↑ down spinをN↓ としたとき次式で定義される。

              

いくつか例をあげると、電子10個あるうち上向きスピン電子が5個、下向きスピン電子5個ならばスピン偏極度は0%。上向きスピン電子9個、下向きスピン電子1個で80%のスピン偏極度となる。あくまでも「偏り」なので、半々を0としてそこからどれだけずれているのかを表す量なのだ。ではこのスピン偏極電子をどのように生成するのかみていく。まずスピン偏極電子生成にはGaAsという半導体を使用するのが、一般的に知られている方法だ。GaAsのバンド構造を示すと次のようになる。

 

                

室温(300K)におけるGaAsのバンド構造と遷移強度比。価電子帯Γ点において重い正孔バンド と軽い正孔バンドが4重に縮退している。

詳細は下記の2冊を参考にしてほしい。

①西澤潤一編、御子柴宣夫著「半導体の物理」(培風館)

②GASIOROWICZ「Quantum Physics」(second edition)

さてGaAsに円変更した光を照射するとどうなるのか?を書いたのが、半導体のバンド構造の右側にかいた図です。何が言いたいのかというと右巻き、もしくは左巻きに円変更した光を照射すると上向きスピン電子、下向きスピン電子が円偏光吸収選択則により、それぞれ3:1で励起されるため(もしくは1:3で励起される)スピン偏極度50%の電子が得られるのである。逆をいえばGaAsを用いている限り、スピン偏極度は50%に制限されるのだが、それを打開する方法は実はある。というかそれをやり続けてきたのが、私がいた研究室のテーマだった。(以前にも記載したが今は無き研究室である)ここではその方法を述べずに先に右巻き、左巻きの円偏光を作る方法を述べる。

私たちのいた研究室では、シングルモードファイバーにより移送したTi-Sapphireレーザー出力光をグランレーザープリズムに通して直線偏光にした後、λ/4板に通すことで円偏光を生成していた。簡単に絵で描くと下記のようになる。左側がレーザーシステム、右側がシングルモードファイバーで輸送されたレーザー光から円偏光を作る過程である。

 

   

さて、最後に。実は上記の方法でGaAsからスピン偏極した電子を取り出しても、スピン偏極度は測定することができない。最終的にスピン偏極度を測定するためにはスピンを回転させる必要があるのだが、それは次回以降に紹介しようと思う。

 

読んだらクリックお願いします↓

ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村

半導体の物理 (半導体工学シリーズ)
クリエーター情報なし

培風館

Quantum Physics
クリエーター情報なし
Wiley

 


最新の画像もっと見る

コメントを投稿