■『ロマンス』(9月6日 in 世田谷パブリックシアター)
原作 :井上ひさし 演出 :栗山民也
出演 :大竹しのぶ 松たか子 段田安則 生瀬勝久 井上芳雄 木場勝己
この芝居とは直接関係はないんだけど、世田谷パブリックシアターの内部が好きなんだよなあ。客席の広すぎない程度な広さというのもいいし、うまく表現できないのですが、雰囲気が好きなのです。お隣のシアタートラムの小劇場の極みみたいな誇らしさもいいんだけど。忘れないように、最初に書いておきます。
この芝居は魅力的な役者が並んでいて、それだけでミーハーな私は観たくなる。シスカンパニーのDMでこれを知って、「ああ、9月にはこれに行く!」ってそう決めたんだっけ。8月はスピッツ関係のライブや仕事で忙しいし、それになぜか盛夏に芝居って、私には違和感がある。暑いときはライブでしょ! できたら野外らいぶでしょ!ということなのかも。
遅い歩みの大型台風が近づきつつある、この日に、三軒茶屋に久しぶりに足をのばしたのだ。
●遅筆ゆえ?
実は、DMやHPに書かれているこの芝居の概要と実際に観た芝居とでは、内容があまりに違うので、ちょっとビックリした。いや、内容が違う、と言うと語弊があるかな。チェーホフを主人公に、妹や妻が繰り広げる一大音楽劇、というところはもちろん変わりはないんだけど。
DMやHPでは、チェーホフを中心に、妹マリアの兄嫁オリガへの嫉妬や葛藤がテーマのような印象を受けたのだけれど、これは私だけ?
芝居が始まってからも、そういう場面にいつなるのだろうと思っていたけれど、それはある意味、脇を流れる小さな小川的な扱いで、だから、大竹しのぶと松たか子ががっぷり組んで芝居を見せるという感じではなかったかな。
井上ひさしの遅筆は有名だし、DMを作った段階ではそういう方向の予定だったのだろう。と結論づけたのだが…。
●ボードビルを!
実際にはむしろ、小説家であり劇作家であるチェーホフという人間に焦点をあてている。若いときから晩年までを、男優4人が井上芳雄~生瀬勝久~段田安則~木場勝己の順で演じていき、チェーホフ、マリア、オリガ以外の人物を6人の役者が次々と巧みに演じていく、という具合。
チェーホフの小説にも芝居にも、特別なヒーローや世紀の美女や悪女は出てこない。むしろ普通の人が小さな心の動きや出来事に普通のリアクションをとる…、そういう作風はそれまでのロシアの演劇の流れとは違う方向性をもっていたのだろう。
この芝居では常に、彼は「ボードビルが描きたい! 辛気臭い感動の悲劇なんか描く気はないのに」と吐露する。晩年の『桜の園』の大成功に対しても、「あれは失敗作だ!」と演出家であるモスクワ芸術座のコンスタンティン・スタニスラフスキー(現代の演劇の演技論を語る上で忘れてはならない存在だそうだ)を非難する。
その直後に結核で亡くなるのだから、彼の本望は果たせなかったという解釈なんだろうか。シベリアでの悲惨な状況を体験するシーンといい、苦悩の人、真摯な人という人間像が見える。
●チェーホフ×4+マリア+オリガ
4人のチェーホフがいいよ!
井上芳雄の青年のチェーホフは清々しくて、夢をたくさん語る。生瀬勝久のチェーホフは結構ダイナミック、段田チェーホフは端正で知的で深い。晩年の木場チェーホフはちょっと陰気臭くなって暗いけれど、ひょっとしてこの芝居ではチェーホフの本質かもしれない。
それぞれが演出の妙味で、自然に役柄を交代していく。それがちょっとオシャレ。
歌もいい。みんな一様に声がよくて、井上以外は声質も似ている?
松たか子のマリアは清らかで背筋がピンとした賢い女性。松のきびきびした動作と美しい歌声で、その人物像があらわになる。
大竹しのぶのオリガ。タバコ売りの歌が秀逸。表現力のある歌唱力ということかな。女優オリガの人物像は私にはあまりわからなかったけど、この人のオーラは相変わらずです。
●それ以外の楽しみ?
本来の役もいいけど、それぞれがそのほかにいろんな役を演じていて、それがめっぽう楽しい。
こんなことを言うとファンは怒るかもしれないけど、大竹しのぶさんはオルガ以外の役ではじけてた? 私は自他ともに認める筋金入りのミーハーだから、ああいう余興っぽいのが大好き。ずる賢い老婆の大竹しのぶは、ステキでした。
そして、木場さん。たくさんの役を演じていたけれど、どれにも木場臭のないところがすごい。コミカルな部分はチャーミング。
生瀬さんのアドリブなのか?と思わせる大仰な演技も楽しい。一か所だけ、大竹さんの頭を叩いたところは絶対にアドリブだと思うんだけど(大竹さんの反応がね、マジ)。
その生瀬さんの演技があるから、端正な段田さんがまた光る。正反対の演技で、それぞれの魅力が映える、ということかな。警察官の上司を演じていたときは、私はそれが誰だかわからなくて、終演後連れに「誰だった?」と尋ねたくらい。
それぞれにスピード感とうまさがあって、やっぱりこういう役者さんが集まったと言うことなんだなと納得。
なんだか、理屈じゃなく、楽しいお芝居の夜でした。
ちなみに帰りは世田谷線で下高井戸にでたのですが、ここでちょっと美味しいとんかつのお店に遭遇。
「千石」というお店で、結構歴史もあるらしい。
居酒屋ふうにメニューも豊富だけど、本来はとんかつ屋さん?
私はロースかつ定食、連れはヒレカツ定食、そしてビールをオーダーし、ちょうどいい満腹感で帰路に着きました。
店内を写したんですが、なんだかボケボケ。せっかくなので?、一切れ食べてしまったあとの「ロースカツ定食」画像をUPします。
原作 :井上ひさし 演出 :栗山民也
出演 :大竹しのぶ 松たか子 段田安則 生瀬勝久 井上芳雄 木場勝己
この芝居とは直接関係はないんだけど、世田谷パブリックシアターの内部が好きなんだよなあ。客席の広すぎない程度な広さというのもいいし、うまく表現できないのですが、雰囲気が好きなのです。お隣のシアタートラムの小劇場の極みみたいな誇らしさもいいんだけど。忘れないように、最初に書いておきます。
この芝居は魅力的な役者が並んでいて、それだけでミーハーな私は観たくなる。シスカンパニーのDMでこれを知って、「ああ、9月にはこれに行く!」ってそう決めたんだっけ。8月はスピッツ関係のライブや仕事で忙しいし、それになぜか盛夏に芝居って、私には違和感がある。暑いときはライブでしょ! できたら野外らいぶでしょ!ということなのかも。
遅い歩みの大型台風が近づきつつある、この日に、三軒茶屋に久しぶりに足をのばしたのだ。
●遅筆ゆえ?
実は、DMやHPに書かれているこの芝居の概要と実際に観た芝居とでは、内容があまりに違うので、ちょっとビックリした。いや、内容が違う、と言うと語弊があるかな。チェーホフを主人公に、妹や妻が繰り広げる一大音楽劇、というところはもちろん変わりはないんだけど。
DMやHPでは、チェーホフを中心に、妹マリアの兄嫁オリガへの嫉妬や葛藤がテーマのような印象を受けたのだけれど、これは私だけ?
芝居が始まってからも、そういう場面にいつなるのだろうと思っていたけれど、それはある意味、脇を流れる小さな小川的な扱いで、だから、大竹しのぶと松たか子ががっぷり組んで芝居を見せるという感じではなかったかな。
井上ひさしの遅筆は有名だし、DMを作った段階ではそういう方向の予定だったのだろう。と結論づけたのだが…。
●ボードビルを!
実際にはむしろ、小説家であり劇作家であるチェーホフという人間に焦点をあてている。若いときから晩年までを、男優4人が井上芳雄~生瀬勝久~段田安則~木場勝己の順で演じていき、チェーホフ、マリア、オリガ以外の人物を6人の役者が次々と巧みに演じていく、という具合。
チェーホフの小説にも芝居にも、特別なヒーローや世紀の美女や悪女は出てこない。むしろ普通の人が小さな心の動きや出来事に普通のリアクションをとる…、そういう作風はそれまでのロシアの演劇の流れとは違う方向性をもっていたのだろう。
この芝居では常に、彼は「ボードビルが描きたい! 辛気臭い感動の悲劇なんか描く気はないのに」と吐露する。晩年の『桜の園』の大成功に対しても、「あれは失敗作だ!」と演出家であるモスクワ芸術座のコンスタンティン・スタニスラフスキー(現代の演劇の演技論を語る上で忘れてはならない存在だそうだ)を非難する。
その直後に結核で亡くなるのだから、彼の本望は果たせなかったという解釈なんだろうか。シベリアでの悲惨な状況を体験するシーンといい、苦悩の人、真摯な人という人間像が見える。
●チェーホフ×4+マリア+オリガ
4人のチェーホフがいいよ!
井上芳雄の青年のチェーホフは清々しくて、夢をたくさん語る。生瀬勝久のチェーホフは結構ダイナミック、段田チェーホフは端正で知的で深い。晩年の木場チェーホフはちょっと陰気臭くなって暗いけれど、ひょっとしてこの芝居ではチェーホフの本質かもしれない。
それぞれが演出の妙味で、自然に役柄を交代していく。それがちょっとオシャレ。
歌もいい。みんな一様に声がよくて、井上以外は声質も似ている?
松たか子のマリアは清らかで背筋がピンとした賢い女性。松のきびきびした動作と美しい歌声で、その人物像があらわになる。
大竹しのぶのオリガ。タバコ売りの歌が秀逸。表現力のある歌唱力ということかな。女優オリガの人物像は私にはあまりわからなかったけど、この人のオーラは相変わらずです。
●それ以外の楽しみ?
本来の役もいいけど、それぞれがそのほかにいろんな役を演じていて、それがめっぽう楽しい。
こんなことを言うとファンは怒るかもしれないけど、大竹しのぶさんはオルガ以外の役ではじけてた? 私は自他ともに認める筋金入りのミーハーだから、ああいう余興っぽいのが大好き。ずる賢い老婆の大竹しのぶは、ステキでした。
そして、木場さん。たくさんの役を演じていたけれど、どれにも木場臭のないところがすごい。コミカルな部分はチャーミング。
生瀬さんのアドリブなのか?と思わせる大仰な演技も楽しい。一か所だけ、大竹さんの頭を叩いたところは絶対にアドリブだと思うんだけど(大竹さんの反応がね、マジ)。
その生瀬さんの演技があるから、端正な段田さんがまた光る。正反対の演技で、それぞれの魅力が映える、ということかな。警察官の上司を演じていたときは、私はそれが誰だかわからなくて、終演後連れに「誰だった?」と尋ねたくらい。
それぞれにスピード感とうまさがあって、やっぱりこういう役者さんが集まったと言うことなんだなと納得。
なんだか、理屈じゃなく、楽しいお芝居の夜でした。
ちなみに帰りは世田谷線で下高井戸にでたのですが、ここでちょっと美味しいとんかつのお店に遭遇。
「千石」というお店で、結構歴史もあるらしい。
居酒屋ふうにメニューも豊富だけど、本来はとんかつ屋さん?
私はロースかつ定食、連れはヒレカツ定食、そしてビールをオーダーし、ちょうどいい満腹感で帰路に着きました。
店内を写したんですが、なんだかボケボケ。せっかくなので?、一切れ食べてしまったあとの「ロースカツ定食」画像をUPします。