長尾景虎の戯言

読んだり聞いたりして面白かった物語やお噺等についてや感じたこと等を、その折々の気分で口調を変えて語っています。

平野肇著【オババの森の木登り探偵】

2010-10-08 09:52:24 | 本と雑誌

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旅行代理店に勤務する中里翔平は、たいして会社に役に立っていない自分に悩んでいた。
そんなある日、幼馴染の大倉から、森の管理人をしないかと持ちかけられる。
別荘地の管理人をやりたいと、相談したことがあった。
そこは田舎の別荘地でこそなかったが、子供の頃「オババの森」と呼んで、探検しにこっそり何度も侵入しては、鎌を持った所有者のオババに追いかけられた、目黒にある懐かしい屋敷森である。
所有者のオババこと川上ツネは脳溢血で倒れ、川上一族の不動産を担当している、大倉の父親が経営する大倉不動産が、現在管理しているのだそうだ。
現地を見にいった翔平は驚いた、目黒の高級住宅地の中に、「オババの森」は奇蹟のように残っていた。
オババが守り続けていたのである。
そこにはネコ以外に、無断で侵入する人間がふたりいた。
ツネの甥の娘で小学校六年生の嶋村奈々と、その母親のマリエである。
ツネが住んでいた家は、長い間放置されて廃屋と化していた。
そこで自分が卒業のときオババに渡した昆虫標本を見付けて、涙があふれ胸が痛む翔平。
翔平はツリーハウスをつくって住むことにし、管理人を引き受けた。
脱サラをした翔平は、副業として探偵事務所も開いた、管理人の報酬は少額だ。
探偵といっても実態は便利屋で、浮気調査、行方不明のペット探し、認知症老人の警護や捜索、お嬢様の保育園送迎・・・etc。
飛びだして帰ってこないロシアンブルーのホリーの事件を、奈々が手伝ってくれたおかげで無事解決することができた。
翔平はファミリーレストランで奈々にご馳走し、以来友達となる。
しかし奈々の母親の嶋村マリエは、謎の多い女だった。
何かの研究をしているらしいが、昼間は山に行き、夜は夜で資料の整理とかで遅くまで帰ってこず、娘の奈々をほったらかしにしている。
ツネの甥で奈々の父親でもある、川上克彦とは離婚していた。
一方翔平は、ベンツに乗って「オババの森」の矢竹を盗んでいく、ツネとは旧知の仲という老人、大西定義と知り合うことになるが、後に意外なかたちで対峙することとなる。
様々な事件に遭遇していくうち、やがて「オババの森」の虫や枯葉などにより、次第に近隣の住民達との軋轢が生じていき、都会の真ん中で原生の自然を残すことの難しさを、翔平は思い知らされる。
そして「オババの森」に、ついに開発の魔手が迫る・・・。
コージーミステリー風に、「オババの森」とそれを守ろうとする者達を描いていく。


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