ブログ しみぬき見聞録

しみ抜きを生業とし昭和、平成、令和、不肖の二代目です
仕事を通して日々感じたこと、思うことを、勝手気ままに書いてみたい

とっさに

2008年10月07日 | Weblog
以前、ある会合で、しみ抜きの話をして欲しいと頼まれた
相手は一般の方々で、私より少し年配か、同じくらいのお年の男女三十人程で若い方は少なかったように記憶している

絹とか、和服、しみ抜きの話をした後で、「想像して下さい、今、皆さんは自慢の着物を着ている 楽しく食事をしている最中です
大切な着物に食事中に飲み物や、食べ物をこぼしてしまいました
さあどうしますか?」突然質問をしてみました

シーンとしたなかで、誰も声をあげません
「さあどうします」たたみかけるように聞いてみる
まだ答えてくれない
「考えている間に、ドンドンしみは広がっていきますよ さあ、さあどうします」
答えをせかしすように少し強い口調で聞いてみた
小さな声で「ハンカチでふきます」と言う声が聞こえた
すると「お絞りのほうがいい」とか、「拭くよりたたくほうがいい」とか堰をきったように色々な意見が出た

突然、誰かが「こぼした物をなめるか、吸えばいい」と大きな声で言った
一同、大爆笑

欲しかった答えは、乾いたハンカチ、ティシュなどで軽く押さえるだった
とっさの場合あわてて、お絞りやハンカチでしみを取ろうと拭くのが大半だ
絹は水分を含むと膨潤し、其処をこするとてきめん糸の表面が傷つき毛羽立ってしまう
いわゆるスレが起き生地表面の艶が無くなり、光の乱反射によりしらけたように見える
始末が悪いことに、濡れている時は色が濃く見えているのでやりすぎてしまう
乾いてビックリ
お客様にはシミがついてもあわてないで さわらないでそのままお持ちくださいとお願いするがそれは難しいことだ

しかし皆さん あわてないで さわりすぎないでプロにおまかせあれ