歌舞伎学会事務局

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事務局インタビュー「この人、どんな人?(4)半田真由美」

2018-03-08 14:31:59 | 人物紹介
忘れた頃にやってきた、第4回です。今回のゲストは、半田真由美さん。
秋季大会にご来場経験のある方なら必ず見かけたことがある、書籍売り場を切り盛りされている女性です。いわゆる「研究者」ではありませんが、総目次(補遺も)を作成し、バックナンバー展示用の本棚(?)も自らご用意くださる半田さん。犬丸先生の回に引き続き、こちらも秋季大会の隙間をぬってのインタビューとなりました。
謎多きその内側が、少しでも垣間見れるインタビューとなれましたかどうか。
では、始まり始まり…。


半田真由美(はんだ まゆみ)
明治大学文学部日本文学科文芸学専攻卒業後、同大学院文学研究科日本文学専攻前期博士課程修了。修了時の研究テーマは曲亭馬琴の読本。現在は外来語史研究のための用例集めで下働き中。同人誌は「柏屋」で活動。主な頒布作品は『映画職人マキノ雅広』シリーズ。


―現在のご職業をお願いいたします。
えー…無職が一番近いかと思います(笑)。

―普段は、何をされていますか?
大学の先生が、まったくPCを使えないものですから、それの入力作業やら、外来語の索引を作るための作業の手伝いをしておりますが、予算がつかないもので、なかなか進みません(苦笑)。

―どちらの大学の先生ですか?
もう退官されましたが、元国際基督教大学(ICU)の先生です。

―先生がICUにいらした時から、今も引き続き、お手伝いを?
小学館で『大辞泉』という本の校正のバイトをしていた時に知り合って、「暇なら手伝ってくれ」と…。95年に出版されたので、その後からですね。御茶ノ水の茗渓堂(書店)が規模縮小するまでは、そこでバイトをしつつ、校正もして…と、ちょっとずつ重なるんですよ。大学に入って本屋のバイトをして、大学院に入って、本屋のバイトと『大辞泉』の校正もして、卒業してからもそれを並行してやっていて、『大辞泉』が終わって…。

―複雑ですね(笑)。
そうなんですよ。だから、履歴書を書くのが面倒くさくて(笑)。

―そもそも、半田さんが歌舞伎学会に入られた経緯は?
原道生先生が会長になられて、「(当時の)事務局の人が辞めたいと言っている」と。それで後任で、非会員のまま事務局をやるのもなんなので、ということで(笑)。二十数年前です。

―では、事務局をされるために入られたと(笑)。もともと歌舞伎自体は?
観には行くけど、熱心な研究者じゃないし、熱心なファンではないし、見巧者でもなければ贔屓というのでもないし…。

―初めてご覧になった歌舞伎は覚えてらっしゃいますか?
歌舞伎座で、『仮名手本忠臣蔵』の通し上演でしたね(※1)。
22、3歳ぐらいかな? おかるが玉三郎で、勘平が孝夫(現仁左衛門)。

―孝玉世代なんですね。そのブームに乗るようなことも特になく?
そうですねえ…。初めて観て、テレビで観ても言葉がわからないのに、舞台を観たらちゃんと聞き取れたので、面白いじゃないかと思いました。

―それはなぜだと思いますか? 集中力の違い?
音響じゃないですか。テレビの音って、わ~んとしたのが入ってくるから聞き取りにくいんじゃないかと。劇場内での録音と、劇場で自分が直に聞くのとは違って、太夫の台詞もわからなくもないなと。役者の台詞はもちろん劇場に行けばわかるし、太夫の声も現場で聞けば聞き取れるんだなと思って、それが私には結構ビックリでした。

―確かにそうかもしれないですね。そもそも、初めて歌舞伎を観たきっかけは?
田舎から出てきたんだから、東京の歌舞伎というものを一度観てみようと思ったんだと思います(笑)。

―研究者として入られたわけではなくて、これまでお書きになったことは?
学会誌「歌舞伎 研究と批評」にはありません。

―では、今まで読まれたなかで印象に残っているものは?
(向かい側の売り場にあった総目次を見て)「初代中村仲蔵」特集の26号ですね。今尾哲也先生の「仲蔵と定九郎」という、最初に載っているもの。

―その理由は?
ちょうど、舞台の『夢の仲蔵』(2000年9月日生劇場)を観た直後に読み直したのか…。それで、あの『夢の仲蔵』でいいのかどうかと(笑)。定九郎の拵えみたいなものがこういう風にできた、というのが確認できたという点でも面白かったし、こんな難しいもの、私には書けません(笑)。

―ところで、半田さんのイメージというと私の中では「同人(誌)」となるのですが(笑)、ジャンルは何でしょうか?
歴史ジャンルと映画ジャンルをやっていて、どちらかというと映画かな?

―テーマは?
ニッチ産業かな…(笑)。映画監督のマキノ雅弘の、作品紹介が多いかな?

―なぜ、マキノ雅弘を?
日活回顧の映画特集を、文芸座が壊される前、古い文芸座の、「映画百年」の頃にやったんですよ。あれで『阿片戦争』(1943年)と『鴛鴦(おしどり)歌合戦』(1939年)の二本立てを観まして…。

―「この監督は!」という運命の出逢いが(笑)。
はい(笑)。とても楽しい映画で。『阿片戦争』はカッコよくて。初代の猿翁(当時は二代目猿之助)が林則徐を演ってるんですけど…。

―それから「マキノ本」を作るようになり、今も?
やってるんですけど、何分にも散逸したフィルムが多くて、観られない作品が多いのが残念です。

―もしフィルムをお持ちの方がいたらぜひ、と(笑)。
でも映画会社がちゃんと管理しているものではないんですか?
戦前ですから。戦争もありましたし、焼いたらどんどん地方の映画館に流れていって、その先がわからないというのもあるし。もともと、一回上演したら、初期のビデオテープと一緒で、廃棄処分みたいな感じだったらしいんですよ。繋いでいって、フィルムがブチブチ切れるから、短くなってしまったりということで。

―公開当初の形で観れるものはほとんどない?
特に無声映画時代は、ほとんどないんじゃないですか。

―そういうものを探しながら、自分の目でちゃんと観られたものの評を、ということですね。
映画を観られたかどうかが、同人誌が作れるかどうかに直結するのでは?
そうです。だから、今はマキノ本じゃなくて、ポール・マクレーン(※2)という海外の俳優さんのを。

―そちらはわりと安定供給?(笑)
いやあ…何しろ、その人がまたあんまり出ない人で。脇役だから仕方ないですが(苦笑)。

―では最後にひと言、お願いいたします。
会員の方は、ぜひ会員を続けてください。

【MEMO】
※1 1986年(S61)2月歌舞伎座。通し狂言『仮名手本忠臣蔵』。
勘平、おかる以外の主な配役:高師直(五代目中村富十郎)塩冶判官(七代目中村芝翫)若狭之助(十二代目市川團十郎)顔世(中村時蔵)直義(中村橋之助)伴内<三段目・七段目>(二代目市村吉五郎)本蔵<三段目>(初代澤村昌之助)由良助<四段目>(十二代目團十郎)石堂(片岡孝夫=片岡仁左衛門)薬師寺(市川左團次)力弥<四段目>(中村芝雀)九太夫(五代目片岡市蔵)郷右衛門(六代目尾上菊蔵)源蔵(初代市川銀之助=市川團蔵)助右衛門(市川右之助)安兵衛(二代目坂東慶三=坂東秀調)又之丞(二代目尾上松鶴=六代目尾上松助)矢間重太郎(坂東正之助=河原崎権十郎)村松三太夫(六代目片岡十蔵=片岡市蔵)大鷲文吾(片岡亀蔵)伴内<道行>(三代目中村歌昇=中村又五郎)
定九郎(十二代目市川團十郎)与市兵衛(二代目助高屋小伝次)不破(三代目河原崎権十郎)千崎(三代目中村歌昇=中村又五郎)お才(十三代目片岡我童)おかや(初代澤村昌之助)源六(二代目坂東弥五郎)平右衛門(片岡孝夫=片岡仁左衛門)力弥<七段目>(片岡孝太郎)服部逸郎(三代目河原崎権十郎)

※2 Paul David McCrane(1961-)アメリカ合衆国の俳優。主な出演作(映画)は『フェーム(Fame)』(80年)、『ロボコップ(Robocop)』(87年)、『ショーシャンクの空に(The Shawshank Redemption)』(94年)など。TVシリーズは『Xファイル(The X File)』(97年)、『ER救急救命室(ER)』(97-08年)、『24』(06-07年)、『CSI:科学捜査班(CSI: Crime Scene Investigation)』(10年)など。02年以降、TVシリーズの監督を務めることも。



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