じゅうのblog

こちらでボチボチ更新していく予定です。

『アリバイ崩し承ります』 大山誠一郎

2024年06月11日 21時59分50秒 | ■読書
大山誠一郎の連作ミステリ作品『アリバイ崩し承ります』を読みました。
大山誠一郎の作品は昨年10月読んだアンソロジー作品『新・本格推理〈03〉りら荘の相続人』に収録されていた『聖ディオニシウスのパズル』以来ですね。

-----story-------------
連続TVドラマ化!出演 浜辺美波 安田 顕
テレビ朝日系 2020年1月クール
土曜ナイトドラマ 毎週土曜 よる11時15分

本格ミステリ・ベスト10 2019原書房  第1位!

美しき時計屋探偵が、事件や謎を解決!? 時を戻すことができました
アリバイは、崩れました!

美谷時計店には「時計修理承ります」とともに「アリバイ崩し承ります」という貼り紙がある。難事件に頭を悩ませる新米刑事はアリバイ崩しを依頼する。ストーカーと化した元夫のアリバイ、郵便ポストに投函された拳銃のアリバイ……7つの事件や謎を、店主の美谷時乃は解決できるのか!?
「2019本格ミステリ・ベスト10」第1位の人気作、待望の文庫化! 解説/乾くるみ

乾くるみ(小説家)さん絶賛!
「本書を通じて、謎解き小説の面白さに目覚めてもらいたい」
「唸り、仰け反り、ひざを打ち、最後には拍手喝采してしまいました」宇田川拓也 ときわ書房本店
「大山節が炸裂している。全てが驚かされるぞ」三島政幸 啓文社ゆめタウン呉店店長
「本格推理小説界の新たなる安楽椅子探偵に惜しみない拍手を送ります」井上哲也 大垣書店豊中緑丘店
-----------------------

2014年(平成26年)から2017年(平成29年)に発表された5篇に書き下ろし2篇を加え、2018年(平成30年)に刊行された作品……時計屋の若き女性店主・美谷時乃(みたに ときの)が祖父譲りの推理力を発揮して、警察の捜査一課が頭を悩ませる難事件のアリバイ崩しに挑むさまを描くシリーズの第1作です、、、

2020年(令和2年)1月期にテレビ朝日系で浜辺美波主演によりテレビドラマ化され、同年2月にsanorinの作画で漫画化されているらしいですね。


 ■第1話 時計屋探偵とストーカーのアリバイ
 ■第2話 時計屋探偵と凶器のアリバイ
 ■第3話 時計屋探偵と死者のアリバイ
 ■第4話 時計屋探偵と失われたアリバイ
 ■第5話 時計屋探偵とお祖父さんのアリバイ
 ■第6話 時計屋探偵と山荘のアリバイ
 ■第7話 時計屋探偵とダウンロードのアリバイ
 ■解説 乾くるみ

殺人を告白して死んだ推理作家のアリバイとは!? 新米刑事が思わず通う、鮮やかすぎる謎解き、、、

時を戻すことができました。アリバイは、崩れました――。

美谷時計店には、「時計修理承ります」だけでなく「アリバイ崩し承ります」という貼り紙がある……「時計にまつわるご依頼は何でも承る」のだという、、、

難事件に頭を悩ませる捜査一課の新米刑事はアリバイ崩しを依頼する……ストーカーと化した元夫のアリバイ、郵便ポストに投函された拳銃のアリバイ、山荘の時計台で起きた殺人のアリバイ……。

7つの事件や謎に、店主の美谷時乃が挑む……あなたはこの謎を解き明かせるか?

収録作品全てがアリバイ崩し物の連作短篇集です、、、

鯉川商店街にある美谷時計店には、「アリバイ崩し承ります」という一風変わった張り紙があり、店主の美谷時乃が、成功報酬一回5000円で依頼者の話を聞いてアリバイを崩してくれる……4月から県警捜査一課に配属された新米刑事の僕は、守秘義務違反を反省しつつも、今日も時乃に実際に起きた事件のアリバイ崩しを頼んでしまう という展開。

アリバイの根拠となる死亡推定時刻を巧妙に偽装するトリックが面白い『第1話 時計屋探偵とストーカーのアリバイ』、

郵便ポストから拳銃が見つかり、殺害が午後3時以前にあると偽装されていた……銃弾のトリックや犯人の行動が巧妙な『第2話 時計屋探偵と凶器のアリバイ』、

美谷時乃がお祖父さんからアリバイ崩しを学ぶエピソード……練習問題的な位置付けで、トリックが愉しい『第5話 時計屋探偵とお祖父さんのアリバイ』、

雪の山荘での事件での足跡のトリックやダンベルでの攻防が興味深い『第6話 時計屋探偵と山荘のアリバイ』、

一日限定でダウンロードできる曲と部屋の時計を利用して友人に日にちを錯覚させるトリックが斬新な『第7話 時計屋探偵とダウンロードのアリバイ』、

等が印象的だったかな。

余分なものを削ぎ落とし、必要最小限の素材だけで物語を構成して、事件もアリバイ崩しにのみ焦点を絞ってあり、純粋にアリバイ崩しだけに挑戦しながら読み進めることができる……そんな愉しめる作品ばかりでした、、、

続篇が刊行されているようなので、ぜひ読んでみたいですね。


以下、主な登場人物です。

美谷時乃(みたに ときの)
 美谷時計店の店主。20代半ばの落ち着いた雰囲気の女性。
 白兎のような顔立ちで、髪型はボブ。
 幼稚園のころに両親を亡くし、時計店をしていた祖父に引き取られた。
 小学3年生から祖父が亡くなるまでの14年間、祖父から時計修理とアリバイ崩しの技術を学んだ。
 依頼者の話を聞くだけで、「時を戻すことができました。○○さんのアリバイは、崩れました」と口上を述べてから、推理を披露する。


 県警本部捜査一課第二強行犯捜査第四係の最年少刑事。
 4月に交番勤務から捜査一課に異動したばかり。
 時乃に相談していることは周囲には秘密にしているため、捜査一課内ではアリバイ崩しの名手と思われている。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『街の灯』 北村薫

2024年06月09日 20時40分18秒 | ■読書
北村薫の連作ミステリ作品『街の灯』を読みました。
北村薫の作品は先月に読んだ『玻璃の天』以来ですね。

-----story-------------
昭和七年、〈時代〉という馬が駆け過ぎる

昭和七年、士族出身の上流家庭・花村家にやってきた女性運転手別宮(べっく)みつ子。
令嬢の英子はサッカレーの『虚栄の市』のヒロインにちなみ、彼女をベッキーさんと呼ぶ。
新聞に載った変死事件の謎を解く「虚栄の市」、英子の兄を悩ませる暗号の謎「銀座八丁」、映写会上映中の同席者の死を推理する「街の灯」の三篇を収録。
解説・貫井徳郎
-----------------------

2002年(平成14年)に文藝春秋が発行する隔月刊の電子小説誌『別冊文藝春秋』に連載され、2003年(平成15年)に刊行された作品……1933年(昭和8年)の帝都・東京を舞台に、上流家庭の花村家の長女・英子とその運転手・ベッキーさんが活躍するベッキーさんシリーズの第1作です。

 ■虚栄の市
 ■銀座八丁
 ■街の灯
 ■解説 貫井徳郎

80周年記念出版、令嬢と女性運転手が活躍する待望の新シリーズ……舞台は昭和初期、上流家庭の花村家に女性運転手がやってくる。令嬢の英子は彼女に興味を持ち、ひそかに<ベッキーさん>と呼ぶが、、、

昭和七年、上流家庭の花村家に若い女性運転手・別宮みつ子がやってきます……花村家の令嬢である〈わたし〉はサッカレーの『虚栄の市』の女主人公にちなんで、彼女を〈ベッキーさん〉と呼び、興味を持つのですが……。

〈ベッキーさん〉を知ったことで、〈わたし〉は今まで風景のように通り過ぎていた物事に「どうしてそうなるのだろう?」という疑問を持つようになっていきます……女子学習院の令嬢たちのひそやかな駆け引き、乱歩ばりの奇妙な事件、暗号解読、北村ワールドの真骨頂をお楽しみください。

上流家庭の花村家の長女で学習院に通い何不自由ない生活を送る令嬢・花村英子によって語られる昭和初期の帝都という時代背景を描いた緻密でリアリティのある描写、そして、英子の運転手で才色兼備で武道にも秀でたスーパーウーマン別宮みつ子(ベッキーさん)の活躍が印象的なシリーズです……先に第2作を読んじゃったんですが、第1作を読んで英子とベッキーさんのことが良く理解できました、、、

士族の出である花村家に新しく雇われることになった運転手は何と女性だった! 花村家の長女・英子は進歩的な父の決定を大いに喜び、サッカレーの「虚栄の市」に因んで彼女にベッキーさんとあだ名を付ける……ベッキーさんの登場作で、早稲田の大学生・権田が自分で掘ったと思しき穴で殺鼠剤が混入していたらしい酒を飲んで死んでおり、その数日前、権田と同じ下宿で暮らしていた男・尾崎が下宿近くで水死体で発見されたという2つの事件の原因を、尾崎の妻を巡るトラブルだと推測した英子が、権田が愛読していたという江戸川乱歩の短編集をベッキーさんから渡され事件の真相に気づく『虚栄の市』、

英子たちの間では、同じ本の何ページ・何行目・何文字目と3つの数字で伝えたいことを暗号化し手紙をやり取りするのが流行っており、それを聞いた英子の兄・雅吉が、銀座を歩きながら友人の大町に同じ話をすると、興味を持った大町は自分もやると言い出し、雅吉に暗号を解いて指定した日時に指定した場所に来るように伝える……同じものではつまらないと考えた大町から、数日おきに雅吉に暗号となる品物(シャツ、眼鏡、ボタン)が届き、英子と雅吉はチンプンカンプンだったが、英子はベッキーさんのある言葉からヒントを得る『銀座八丁』、

夏休みに避暑のために軽井沢の別荘を訪れていた英子は新興財閥の息子・瓜生豹太が主催する映写会に参加することに……のどかな牧場の風景が流れる幕が一変、大群の蛇の画像が映り、銅鑼が鳴り響いた際、部屋の隅で鑑賞していた豹太の妹の家庭教師の女性が座ったまま息絶えており、映像に驚いて心臓発作を起こしたのだと判断されるが、後になって英子は一連の出来事に違和感を覚える『街の灯』、

どの作品も当時の上流社会の生活や風俗が克明に描かれており、雰囲気がムッチャ好きで愉しめました……第3作の『鷺と雪』も読んでみたくなりましたね。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『古書店アゼリアの死体』 若竹七海

2024年06月08日 20時03分07秒 | ■読書
若竹七海の長篇ミステリ作品『古書店アゼリアの死体』を読みました。
ここのところ、若竹七海の作品が続いています。

-----story-------------
勤め先は倒産、泊まったホテルは火事、怪しげな新興宗教には追いかけられ……。
不幸のどん底にいた相澤真琴は、葉崎市の海岸で溺死体に出合ってしまう。
運良く古書店アゼリアの店番にありついた真琴だが、そこにも新たな死体が! 
事件の陰には、葉崎市の名門・前田家にまつわる秘密があった……。
笑いと驚きいっぱいのコージー・ミステリの大傑作!
-----------------------

2000年(平成12年)に刊行された、架空の都市・神奈川県葉崎市を舞台とした葉崎市シリーズの第2作です。

 ■第1章 波とともに来りぬ
 ■第2章 古本屋は突然に
 ■第3章 忘れたよ面影
 ■第4章 騙しあい
 ■第5章 ある泥棒の詩
 ■第6章 逢うときはいつも死体
 ■第7章 昼下がりの殺人
 ■第8章 告げ口がいっぱい
 ■第9章 罠におちて
 ■第10章 探偵たちの街角
 ■第11章 犯人よこんにちは
 ■おまけ ~前田紅子のロマンス小説注釈~
 ■解説 池上冬樹

あらゆる不幸を立て続けに体験した相沢真琴は、全てを投げだし、葉崎市の海岸に辿り着いた……ところが、なんと身元不明の死体をみつけてしまう! 所持品から、その死体は葉崎の名門・前田家の失踪中の御曹司・前田秀春である可能性が浮かぶ、、、

しかし、秀春の失踪には、きな臭い背景が……そんなさなか、ロマンス小説専門の古書店アゼリアを経営する前田紅子と知り合った真琴は、紅子が入院する間、アゼリアの店番を頼まれたのだが……。

真琴は次なる死体と遭遇することに! 絶妙な語り口と濃厚なミステリの味付け! 芳醇なるコージー・ミステリの絶品、好評書下ろし第二弾。

不幸のどん底にいた相澤真琴が、葉崎市の海岸で溺死体に出会い、さらにロマンス小説専門の古書店アゼリアの店番になってから新たな死体に巻き込まれる……登場人物たちの明るいキャラクターと事件の謎解きがコミカルに描かれており、笑いと驚きいっぱいの作品でしたね、、、

事件の背景となるのは葉崎市の名門・前田家にまつわる秘密……真琴が古書店で働きながら、事件の謎を解き明かしていく展開に引き込まれましたね。

前作と同様に、事件が解決した と思われた後に描かれる最後のどんでん返しも面白かったです……が、これどういうこと!? と一部理解できない部分があったので不完全燃焼気味で読み終えてしまったところが、ちょっと残念でしたー 読解力不足かな……。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『ヴィラ・マグノリアの殺人』 若竹七海

2024年06月03日 21時09分39秒 | ■読書
若竹七海の長篇ミステリ作品『ヴィラ・マグノリアの殺人』を読みました。
ここのところ、若竹七海の作品が続いています。

-----story-------------
海を臨むヴィラ・マグノリア。
その空き家になった一棟で、死体が発見された。
ヴィラの住人は一癖ある人ばかりで、担当刑事達は聞き込み一つにてんてこ舞い。
捜査に手間取るうちに、ヴィラの住人が殺される第二の事件が発生!二つの事件のつながりはどこに?住人達の素顔も次第に明らかになって―。

粒よりユーモアをちりばめたコージー・ミステリーの快作!
-----------------------

1999年(平成11年)に刊行された、架空の都市・神奈川県葉崎市を舞台とした葉崎市シリーズの第1作です。

 ■第1章 男が死んでいる
 ■第2章 刑事が聞き込む
 ■第3章 会議が踊らない
 ■第4章 探偵が指名される
 ■第5章 容疑者が多すぎる
 ■第6章 女も死んでいる
 ■第7章 巡査部長が困惑する
 ■第8章 作家が企む
 ■第9章 警部補が追いつめる
 ■第10章 犯人が逃走する
 ■第11章 真相が明かされる
 ■解説 香山二三郎

海に臨む邸宅、十棟が並ぶ「ヴィラ・葉崎マグノリア」の一棟で死体が発見された……所持品もなく、顔と手が潰されて身元の特定は困難、、、

聞き込みに懸ける署員たちだが、ヴィラの住人は皆、癖のある人間ばかり……。

架空の都市・葉崎市の閑静な住宅地ヴィラ・葉崎マグノリアで起きたふたつの殺人事件を追う物語……容疑をかけられるのはもちろんヴィラの住人、、、

住人たちは、それぞれの家庭や人生、事情を抱えているクセのある人物ばかり……警察もクセのあるその住人たちに振り回されて事件は解決の糸口もつかめない。

ヴィラの住人たちがご近所さんのような感覚で描かれていいるところが特徴でしたね……大半の住人が疑わしく、そして、その住人たちが少しずつ隠している事実が少しずつ明らかになる、、、

最後まで飽きさせない展開と謎解きの醍醐味を存分に味わえる作品でしたね……愉しめました! 最後の最後で明らかになる意外な真相も面白かったです。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『プラスマイナスゼロ』 若竹七海

2024年06月02日 21時00分05秒 | ■読書
若竹七海の連作ミステリ短篇集『プラスマイナスゼロ』を読みました。
ここのところ、若竹七海の作品が続いています。

-----story-------------
お嬢様と不良娘と平均値ガールの奇妙な友情 × 痛快系青春ミステリ
海辺の町“葉崎”を舞台に、超凸凹トリオが厄介でおかしな事件の謎を解く!
文庫版だけ! とびきり切ない書き下ろし「卒業旅行」収録

ある時、センコーがアタシらを見てこう言った――「プラスとマイナスとゼロが歩いてら」。
不運に愛される美しいお嬢様・テンコ、義理人情に厚い不良娘のユーリ、〝歩く全国平均値〟の異名をもつミサキの、超凸凹女子高生トリオが、毎度厄介な事件に巻き込まれ、海辺にある おだやかな町・葉崎をかき乱す!
学園内外で起こる物騒な事件と、三人娘の奇妙な友情をユーモアたっぷりに描いた、学園青春ミステリ。
〈解説・福井健太〉
-----------------------

2008年(平成20年)に刊行された葉崎市シリーズの第5作です。

 ■そして、彼女は言った ~葉崎山高校の初夏~
 ■青ひげのクリームソーダ ~葉崎山高校の夏休み~
 ■悪い予感はよくあたる ~葉崎山高校の秋~
 ■クリスマスの幽霊 ~葉崎山高校の冬~
 ■たぶん、天使は負けない ~葉崎山高校の春~
 ■なれそめは道の上 ~葉崎山高校、1年前の春~
 ■卒業旅行
 ■解説 福井健太

葉崎市の学園内外で起こる物騒な事件と、お嬢様と不良娘と平均値ガールの超凸凹女子高生三人娘の奇妙な友情をユーモアたっぷりに描いた学園青春ミステリ。

テンコ、ユーリ、ミサキという3人の女子高生が織り成す学園コメディとミステリ要素が組み合わさった作品……3人のキャラクターはそれぞれ個性的で、不良娘のユーリ、平均的なミサキ、そして不運なお嬢様のテンコが、学園内で起こる事件に巻き込まれていきます、、、

彼女たちの友情や日常のエピソードが楽しさとほっこり感をもたらす展開なのですが、個人的にはちょっと物足りなかったですね……学園コメディとミステリの要素がどちらも中途半端な印象だったからかな。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『バベル島』 若竹七海

2024年06月01日 21時04分58秒 | ■読書
若竹七海の短篇集『バベル島』を読みました。
ここのところ、若竹七海の作品が続いています。

-----story-------------
イギリス・ウェールズ北西部・彼の地の伯爵は長年「バベルの塔」建設に取り憑かれていた。
六十年の歳月をかけて完成した日、悪夢の惨劇が―(表題作)。
残業の夜、男は急停止したエレベーターに閉じこめられてしまう。
中にはもう一人、髪の長い女が。
そのビルには幽霊が出るという噂があって...(「上下する地獄」)。
鮮やかなプロットが光る単行本未収録作11編。
-----------------------

1993年(平成5年)から2000年(平成12年)に発表されたホラータッチの作品11篇を収録して、2008年(平成20年)に刊行され作品です。

 ■のぞき梅
 ■影
 ■樹の海
 ■白い顔
 ■人柱
 ■上下する地獄
 ■ステイ
 ■回来
 ■追いかけっこ
 ■招き猫対密室
 ■バベル島
 ■解説 千街晶之

ホラー要素が強かったり、怪談のような作風だったりと、これまでに読んだ若竹七海の作品とは雰囲気が異なる作品でしたね……怖さが詰まっている という意味では共通する部分がありましたね、、、

友人の両親の梅に対する異常な忌避感や壁に浮かび出たしみから、過去の陰惨な事件があぶり出される『のぞき梅』と『影』、

物語そのものよりも干支の丙午や映画監督ルイ・マルにちなんだ<マル>という喫茶店が印象に残った『人柱』、

エレベータに乗ることやスイカ割りが怖くなっちゃう『上下する地獄』と『ステイ』、

イギリスの大富豪がウェールズ沿岸の島にバベルの塔をそっくりそのまま再現した巨大構造物を建造するが、そこには恐ろしい目的・願望が潜んでいた……壮大であまりにも馬鹿馬鹿しい計画に唖然としつつも読後に考えさせられる奇譚『バベル島』、

が印象に残りましたね……でも、やっぱホラーは苦手だなぁ。

ちなみに『バベル島』の語り手の曽祖父の名前は葉村寅吉……ということは語り手は葉村晶なんですかねー ちょっと気になりました。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『御子柴くんの甘味と捜査』 若竹七海

2024年05月31日 22時31分08秒 | ■読書
若竹七海の連作ミステリ短篇集『御子柴くんの甘味と捜査』を読みました。
ここのところ、若竹七海の作品が続いています。

-----story-------------
長野県警から警視庁捜査共助課へ出向した御子柴刑事。
甘党の上司や同僚からなにかしらスイーツを要求されるが、日々起こる事件は、ビターなものばかり。
上田市の山中で不審死体が発見されると身元を探り(「哀愁のくるみ餅事件」)、軽井沢の教会で逃亡犯を待ち受ける(「不審なプリン事件」)。
傑作ミステリー・葉村晶シリーズ第一弾『プレゼント』に登場した御子柴くんが主役の、スイーツ&ビターなミステリー短篇集。
-----------------------

2014年(平成26年)に刊行された御子柴くんシリーズの第1作です。

 ■哀愁のくるみ餅事件
 ■根こそぎの酒饅頭事件
 ■不審なプリン事件
 ■忘れじの信州味噌ピッツァ事件
 ■謀略のあめせんべい事件
 ■あとがき

長野県警から警視庁捜査共助課へ出向した御子柴刑事……甘党の上司や同僚からなにかしらスイーツを要求されるが、日々起こる事件は甘くない、、、

長野の名菓が数々登場する「おいしい」ミステリ……文庫オリジナル短篇集。

長野県から警視庁へ出向した御子柴刑事が主人公なのですが、謎解きの中心は御子柴刑事の元上司で長野県警の小林警部補……御子柴刑事との電話のやりとりの中で、事件の核心を突く推理を披露し、その推理をもとに御子柴刑事が日々の事件を解決していくという展開、、、

長野県の美味しいお菓子やスイーツがふんだんに紹介されており、ミステリと甘味が絶妙のバランスで組み合わされている感じです……事件の真相がダークでビターなものが多かったところに若竹七海の作品らしさを感じました。

そんな中で印象に残ったのは、

7年間も逃げ回っている殺人事件の犯人・須崎が娘の結婚式現れるのではないかとのことで、御子柴刑事等は結婚式が行われる軽井沢の教会に張り込むが……ドタバタで進行する展開と小林警部補のひと言でそのドタバタ自体の意味が一変する『不審なプリン事件』、

御子柴刑事が右膝を壊す原因になった窃盗犯・岡章二が死体で見つかった……御子柴刑事が怪我をした過去のエピソードが回想スタイルで詳しく描かれる『謀略のあめせんべい事件』、

の2篇かな……小林警部補の推理で、事件の様相が大きく変わる展開が愉しめましたね。

御子柴くんシリーズの在庫は本作だけなんですよね……次は、若竹七海の別な作品を読んでみようと思います。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『さよならの手口』 若竹七海

2024年05月28日 22時04分30秒 | ■読書
若竹七海の長篇ミステリ作品『さよならの手口』を読みました。
『依頼人は死んだ』、『静かな炎天』、『不穏な眠り』に続き、若竹七海の作品です。

-----story-------------
仕事はできるが運の悪い女探偵・葉村晶が帰ってきた!

探偵を休業し、ミステリ専門店でバイト中の葉村晶は、古本引取りの際に白骨死体を発見して負傷。
入院した病院で同室の元女優に二十年前に家出した娘探しを依頼される。
当時娘を調査した探偵は失踪していた――。
-----------------------

2014年(平成26年)に刊行された、前作から13年振りとなる葉村晶シリーズの第4作です。

 ■さよならの手口
 ■おまけ ~富山店長のミステリ紹介~
 ■あとがき
 ■解説 霜月蒼

探偵を休業し、ミステリ専門店〈MURDER BEAR BOOKSHOP〉でバイト中の葉村晶は、ある家からの古本引き取りを頼まれる……ほとんどあばらやのようなその家で、大量の本と格闘したが床が抜けてしまい、床下に落ちた葉村は怪我を負うと同時に、白骨死体を見つけてしまう、、、

入院先で刑事に事情を聞かれた葉村は、ある事実を指摘……それが骨の身元判明につながり、事件は解決したのだが、話を聞いていた同室の入院患者で元女優の芦原吹雪から、二十年前に家出した娘の安否についての調査を頼まれ、引き受ける。

一方、やめるつもりだったミステリ書店のバイトも続けるはめになったのだが、そこで女性客の倉嶋舞美と親しくなる……しかし、彼女は警察の監視下にあり、葉村は担当の警察官・当麻から舞美に対するスパイの役割をしろと強要されるのだった……。

順番通りではないのですが、シリーズ第2作『依頼人は死んだ』、シリーズ第4作『静かな炎天』、シリーズ第7作『不穏な眠り』に続き、不運ながらも有能な女性探偵・葉村晶がさまざまな謎に立ち向かう葉村晶シリーズの作品です……本シリーズの長篇は初めて読みますね、、、

前作から13年振りでも、長篇でも、葉村晶の不運な運命と彼女が巻き込まれる闇の中での奮闘や怒涛の展開と独特の語り口の魅力は相変わらずですねー 彼女の人間味あふれるキャラクターと事件の謎解きの展開が堪らない一冊でした……長篇だけに、アイデアや仕掛けがたっぷり詰まった贅沢な内容で、物語が重層的で深みがあり、とても愉しめました。

遺品整理屋の伝手で遺品から出物のミステリを探すうちに押入れの床を踏み抜いてしまい白骨死体に出くわすという印象的なシーンで幕を開け、、、

元女優から20年前に失踪した娘の捜索を依頼されたことをきっかけに、最初に調査した有能な元刑事が調査を完了しないまま姿を消していた謎や、失踪した娘の父親はだれかという謎、失踪した娘のはとこが絞殺された事件の謎 等々、失踪人探しから、いくつもの謎が生まれ、複数の嘘や策謀、秘密が解明されたり暴露されたりという怒濤の展開……多くの伏線が、最後には全て回収される展開もお見事でしたね。

葉村晶シリーズの在庫は読み切ってしまいました……次は、若竹七海の別なシリーズを読んでみようと思います。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『不穏な眠り』 若竹七海

2024年05月26日 21時02分05秒 | ■読書
若竹七海の連作ミステリ短篇集『不穏な眠り』を読みました。
『依頼人は死んだ』、『静かな炎天』に続き、若竹七海の作品です。

-----story-------------
仕事はできるが不運すぎる女探偵・葉村晶シリーズ。
吉祥寺のミステリ専門書店でアルバイトとして働きながら、〈白熊探偵社〉の調査員として働いている。
「さよならの手口」(2014年4位)「静かな炎天」(2016年2位)、「錆びた滑車」(2019年3位)と「このミス」上位常連の人気ミステリシリーズ、文庫オリジナルの最新刊。

「水沫(みなわ)隠れの日々」
終活で蔵書の処分を頼んできた藤本サツキのもう一つの依頼は、死んだ親友の娘・田上遥香を刑務所から自分のところに連れてきてほしいということだった。刑務所からサツキの元に向かう道で、遥香は車に乗った男たちに拉致されてしまう。

「新春のラビリンス」(「呪いのC」改題)
大晦日の夜、葉村は解体直前の〈呪いの幽霊ビル〉の警備をすることになった。ヒーターが壊れ、寒さの中一夜を明かした葉村は、女性事務員の公原から連絡が取れない男友達の行方を調べてほしいと頼まれる。

「逃げだした時刻表」
葉村の働くミステリ専門店でGWに〈鉄道ミステリフェア〉を開催することになった。展示の目玉として借りた弾痕のあるABC時刻表が盗難にあう。本の行方を追ううちに、互いを出し抜こうとするコレクター同士のトラブルや、過去の因縁まで絡んできて思わぬ展開に……。

「不穏な眠り」
亡くなった従妹から引き継いだ家にいつのまにか居座り、そこで死んでしまった宏香という女の知人を捜してほしいという依頼を受けた葉村。宏香を連れ込んだ今井という男の家を訪ねたところ、今井の妻に危うく殺されかける。今井は宏香の死後、家出していた。

解説・辻真先

TVドラマ化決定!
ドラマ10「ハムラアキラ~世界で最も不運な探偵~」
主演シシド・カフカ 間宮祥太朗 池田成志 津田寛治 中村梅雀
2020年1月24日(金)スタート予定(連続7回)
-----------------------

2017年(平成29年)から2019年(平成31年)に発表された作品を収録して、2019年(平成31年)に刊行された葉村晶シリーズの第7作です。

 ■水沫隠れの日々
 ■新春のラビリンス(『呪いのC』を改題)
 ■逃げ出した時刻表
 ■不穏な眠り
 ■第四回・富山店長のミステリ紹介
 ■解説 辻真先

葉村の働く書店で“鉄道ミステリフェア”の目玉として借りた弾痕のあるABC時刻表が盗難にあう……行方を追ううちに思わぬ展開に(「逃げだした時刻表」)、、、

相続で引き継いだ家にいつのまにか居座り、死んだ女の知人を捜してほしいという依頼を受ける(「不穏な眠り」)…… 満身創痍のタフで不運な女探偵・葉村晶シリーズ。

飛び飛びになっていますが、シリーズ第2作『依頼人は死んだ』、シリーズ第4作『静かな炎天』に続き、女性探偵・葉村晶が活躍する葉村晶シリーズの作品です……本作品でも葉村晶が不運に巻き込まれながらも事件を解決する姿が、ユーモアとブラックの要素が絶妙に組み合わせながら描かれています、、、

そんな中でも印象的だったのは、

終活で蔵書の処分を頼んできた女性のもう一つの依頼は、死んだ親友の娘を刑務所から連れてきてほしいということだった……当日刑務所で娘を迎えた葉村晶だったが、そこから次々ととんでもない目に遭う羽目に、、、

友人の忘れ形見である娘を、余命わずかの自分の元につれて来てほしいと言った理由が忘れられない『水沫隠れの日々』、

葉村晶の働くミステリ専門店でGWに〈鉄道ミステリフェア〉を開催することになった……展示の目玉として借りた弾痕のあるABC時刻表が盗難にあい、本の行方を追ううちに思わぬ展開になる、、、

冒頭から何者かに襲われ、いきなり災難に遭うオープニングと、弾痕入りの時刻表に関する皮肉なオチで締めくくられるクロージングが印象的な『逃げ出した時刻表』、

相続で引き継いだ家にいつのまにか居座り、そこで死んでしまった女の知人を捜してほしいという依頼を受けた葉村晶……女を連れ込んだ男の家を訪ねたところ、男の妻に危うく殺されかける羽目に、、、

複雑な人間関係にやや混乱しましたが、ニュータウンの末路や大規模な自然災害等、日本のあちこちで現実問題になつつある災害や社会問題もしっかり現実に即して描かれておりリアリティを感じた『不穏な眠り』、

の3篇かな……葉村晶には、もう少し、平穏無事な日常を過ごさせてあげてもいいのでは とも思いますが、それがこのシリーズの醍醐味でもあるので、そうはならないんでしょうねー 本作も読み応えたっぷりで愉しめました。

こちらも相変わらずでずが……葉村晶の働くミステリ専門店〈MURDER BEAR BOOKSHOP〉の富山店長が物語の中で紹介される作家や作品について解説してくれる『第四回・富山店長のミステリ紹介』は良いですねー 色んな作品を読みたくなりますね、、、

葉村晶の魅力もパワーアップしている感じ……杉田比呂美の装丁も大好きですねー 次も葉村晶シリーズの作品を読んでみようと思います。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『静かな炎天』 若竹七海

2024年05月24日 20時30分31秒 | ■読書
若竹七海の連作ミステリ短篇集『静かな炎天』を読みました。
『依頼人は死んだ』に続き、若竹七海の作品です。

-----story-------------
史上最もタフな女探偵・葉村晶の最新作!
・バスとダンプカーの衝突事故を目撃した晶は、事故で死んだ女性の母から娘のバッグがなくなっているという相談を受ける。晶は現場から立ち去った女の存在を思い出す…「青い影~7月~」
・かつて息子をひき逃げで重傷を負わせた男の素行調査。疎遠になっている従妹の消息。晶に持ち込まれる依頼が順調に解決する真夏の日。晶はある疑問を抱く…「静かな炎天~8月~」
・35年前、熱海で行方不明になった作家・設楽創。その失踪の謎を特集したいという編集者から依頼を受けた晶は失踪直前の日記に頻繁に登場する5人の名前を渡される。…「熱海ブライトン・ロック~9月~」
・元同僚の村木から突然電話がかかってきた。星野という女性について調べろという。星野は殺されており、容疑者と目される男が村木の入院する病院にたてこもっていた。…「副島さんは言っている~10月~」
・ハードボイルド作家・角田港大の戸籍抄本を使っていた男がアパートの火事で死んだ。いったいこの男は何者なのか?…「血の凶作~11月~」
・クリスマスイブのオークション・イベントの目玉になる『深夜プラス1』初版サイン本を入手するため、翻弄される晶の過酷な一日を描く「聖夜プラス1~12月~」。

有能だが不運すぎる女探偵・葉村晶シリーズ第4弾。
苦境にあっても決してへこたれず、ユーモアを忘れない、史上最もタフな探偵の最新作。
〈甘いミステリ・フェア〉〈サマーホリデー・ミステリ・フェア〉〈風邪ミステリ・フェア〉〈学者ミステリ・フェア〉〈クリスマス・ミッドナイトパーティー〉など、各回を彩るユニークなミステリの薀蓄も楽しめます。
好評の「富山店長のミステリ紹介ふたたび」も収録。

解説は大矢博子氏。
-----------------------

2015年(平成27年)から2016年(平成28年)に発表された作品に書き下ろしを加え、2016年(平成28年)に刊行された葉村晶シリーズの第4作です。

 ■青い影~7月~
 ■静かな炎天~8月~
 ■熱海ブライトン・ロック~9月~
 ■副島さんは言っている~10月~
 ■血の凶作~11月~
 ■聖夜プラス1~12月~
 ■富山店長のミステリ紹介ふたたび
 ■解説 大矢博子

シリーズ第2作『依頼人は死んだ』に続き、不運ながらも有能な女性探偵・葉村晶がさまざまな謎に立ち向かう葉村晶シリーズの作品です……本作品で葉村晶は40代になり、四十肩に悩まされつつも、ユーモアを忘れずに事件を解決しています、、、

短篇の分量に濃縮されたクオリティは長篇にも劣らず、読み応えのある作品で、葉村晶のタフさとキャラクターが魅力的でしたね……どの作品も面白かったのですが、そんな中でも印象的だったのは、

ひき逃げ犯の素行調査に従妹の消息 等々、書店のご近所さんが次々に葉村晶に仕事を依頼してきて、その依頼は順調に解決していくが、その裏にはある計画が進行していた……緊迫のクライマックスが愉しめる『静かな炎天~8月~』、

元同僚の村木からの依頼で葉村晶は殺された女性と容疑者の男について調査をすることに……実は村木はある事件に巻き込まれており、葉村晶が電話とネットだけで事件を解決するというスピーディな展開の『副島さんは言っている~10月~』、

ハードボイルド作家の戸籍抄本を使っていた男が死亡し、葉村晶がその謎を解明する……濃密なストーリーが展開される『血の凶作~11月~』、

クリスマスイブのオークション・イベントで入手した『深夜プラス1』初版サイン本をめぐる過酷な一日が描かれ、葉村晶のタフさとユーモアが光る『聖夜プラス1~12月~』、

の4篇かな。

『富山店長のミステリ紹介ふたたび』で、物語の中で紹介される作家や作品について解説してあるのは良いですねー 色んな作品を読みたくなりますね、、、

そして、40代になっても葉村晶は魅力的! ハードボイルな生き方が素敵ですね……杉田比呂美の装丁も大好きですねー 次も葉村晶シリーズの作品を読んでみようと思います。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする