つづき
年が明け2005年。北海道、下河辺牧場。
あいかわらず【ビッグゴールド】は走り回っていたが、
【スティルインラブ】は放牧だというのに立ち止まって物思いにふけるばかり。
何日かは放っておいた彼だが、1月もすると心配になって声をかけた。
・・・と簡単に書くが、そこまでの気持ちに彼がなるまでそうとう考えたのは想像に難くない。
ビ『お~い何そんなに深刻な顔してんのさ』
ス『あっ、【ビッグゴールド】さん』
ビ『えっオレのこと知ってんの』
ス『そりゃ同じ場所にいるじゃないですか。知ってますよ』
ビ『(よっしゃ~!神様やっぱりみてるとこみてるね~)
あぁ、そっか。そうだよね。で、どうかしたの?』
ス『はぁ・・・』
ビ『やっぱり秋の成績のことか?』
ス『はい・・・がんばったんですけどね・・・期待に応えられなくて・・・』
ビ『3冠か・・・確かに重いもん背負ってるもんな。気にしない方がいいぞ
他馬は他馬。自分は自分だ』
ス『そうなんですけど、やっぱり比較しちゃって・・・』
ビ『(これはかなり深刻だな・・・)そんな誰にだってスランプはあるさ
オレにだって・・・』
ス『もういいんですしばらく1人にさせてください・・・』
ビ『あ・・・』
トコトコトコ。
【スティルインラブ】は向こうの方へ行ってしまった。
ビ『う~ん。あれは立ち直るのに時間がかかるな・・・』
先輩『おい』
ビ『うわっビックリさせないでくださいよ
なんですか先輩?』
先輩『おまえさ、【スティル】の心配ばっかりじゃなくてさ、自分はどうなんだよ?』
ビ『オレ?オレ・・・
(そうだった。オレもいまスランプなんだよな・・・
脱出してないオレなんかにアドバイスもらったって聞いてくれるはずないよな)』
先輩『おい』
ビ『・・・・』
それから彼は自分のことも考えるようになっていった。
しかし、【スティル】のことも心配であり、見かければ声をかけて励ましていた。
【スティル】も最初は落ち込んでいたものの、だんだんと前向きになってきていた。
そうしているうちに2頭は仲がよくなり、GI馬と重賞1勝馬という壁はなくなっていた。
ビ『3冠の中で一番つらかったのはどのレースなんだい?』
ス『う~ん、やっぱり秋華賞かな。やっぱりあたしもプレッシャーだったけど、
幸さんもプレッシャーだったらしいし。
しかもレースではユタカさんと【グル】ちゃんがずっとついてくるんですもの
こわかったわ』
ビ『でも強かったよね』
ス『うんそのあとのエリ女では負けちゃったけど、来年こそは
って思えたしね。だけどダメだった・・・』
ビ『仕方ないよ。【グルーヴ】は強かったし。君は全力尽くしたんだし』
ス『わかってるんですけどね・・・やっぱり昔勝ってた子に負けるって悔しい』
ビ『悔しい・・・か。最近そんな気持ちになってないなぁ~』
ス『えっ、なんでですか?レースに出れば誰だってそう思うじゃないですか』
ビ『いや、オレも最近スランプでさ。どうも力が出ないっていうか、やる気が出ないんだ』
ス『そうなんですか・・・でもきっと【ビッグゴールド】さんなら立ち直れますよ』
ビ『そうかな?』
ス『えぇ、絶対がんばってください』
ビ『あぁ・・・(なんだろう・・・)』
【スティル】と別れたあといつものように先輩が寄ってきた。
先輩『おまえ、相変わらず【スティル】と仲良くしてんな~』
ビ『いやいや』
先輩『どうせ結ばれることはないのになぁ~はかない恋ってやつか。
まぁ種牡馬にでもなればその可能性がなくはないけどな。
な~んてな、冗談だよ、冗談』
ビ『・・・種牡馬・・・か』
つづく
変身の理由①はこちら
変身の理由②はこちら
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年が明け2005年。北海道、下河辺牧場。
あいかわらず【ビッグゴールド】は走り回っていたが、
【スティルインラブ】は放牧だというのに立ち止まって物思いにふけるばかり。
何日かは放っておいた彼だが、1月もすると心配になって声をかけた。
・・・と簡単に書くが、そこまでの気持ちに彼がなるまでそうとう考えたのは想像に難くない。
ビ『お~い何そんなに深刻な顔してんのさ』
ス『あっ、【ビッグゴールド】さん』
ビ『えっオレのこと知ってんの』
ス『そりゃ同じ場所にいるじゃないですか。知ってますよ』
ビ『(よっしゃ~!神様やっぱりみてるとこみてるね~)
あぁ、そっか。そうだよね。で、どうかしたの?』
ス『はぁ・・・』
ビ『やっぱり秋の成績のことか?』
ス『はい・・・がんばったんですけどね・・・期待に応えられなくて・・・』
ビ『3冠か・・・確かに重いもん背負ってるもんな。気にしない方がいいぞ
他馬は他馬。自分は自分だ』
ス『そうなんですけど、やっぱり比較しちゃって・・・』
ビ『(これはかなり深刻だな・・・)そんな誰にだってスランプはあるさ
オレにだって・・・』
ス『もういいんですしばらく1人にさせてください・・・』
ビ『あ・・・』
トコトコトコ。
【スティルインラブ】は向こうの方へ行ってしまった。
ビ『う~ん。あれは立ち直るのに時間がかかるな・・・』
先輩『おい』
ビ『うわっビックリさせないでくださいよ
なんですか先輩?』
先輩『おまえさ、【スティル】の心配ばっかりじゃなくてさ、自分はどうなんだよ?』
ビ『オレ?オレ・・・
(そうだった。オレもいまスランプなんだよな・・・
脱出してないオレなんかにアドバイスもらったって聞いてくれるはずないよな)』
先輩『おい』
ビ『・・・・』
それから彼は自分のことも考えるようになっていった。
しかし、【スティル】のことも心配であり、見かければ声をかけて励ましていた。
【スティル】も最初は落ち込んでいたものの、だんだんと前向きになってきていた。
そうしているうちに2頭は仲がよくなり、GI馬と重賞1勝馬という壁はなくなっていた。
ビ『3冠の中で一番つらかったのはどのレースなんだい?』
ス『う~ん、やっぱり秋華賞かな。やっぱりあたしもプレッシャーだったけど、
幸さんもプレッシャーだったらしいし。
しかもレースではユタカさんと【グル】ちゃんがずっとついてくるんですもの
こわかったわ』
ビ『でも強かったよね』
ス『うんそのあとのエリ女では負けちゃったけど、来年こそは
って思えたしね。だけどダメだった・・・』
ビ『仕方ないよ。【グルーヴ】は強かったし。君は全力尽くしたんだし』
ス『わかってるんですけどね・・・やっぱり昔勝ってた子に負けるって悔しい』
ビ『悔しい・・・か。最近そんな気持ちになってないなぁ~』
ス『えっ、なんでですか?レースに出れば誰だってそう思うじゃないですか』
ビ『いや、オレも最近スランプでさ。どうも力が出ないっていうか、やる気が出ないんだ』
ス『そうなんですか・・・でもきっと【ビッグゴールド】さんなら立ち直れますよ』
ビ『そうかな?』
ス『えぇ、絶対がんばってください』
ビ『あぁ・・・(なんだろう・・・)』
【スティル】と別れたあといつものように先輩が寄ってきた。
先輩『おまえ、相変わらず【スティル】と仲良くしてんな~』
ビ『いやいや』
先輩『どうせ結ばれることはないのになぁ~はかない恋ってやつか。
まぁ種牡馬にでもなればその可能性がなくはないけどな。
な~んてな、冗談だよ、冗談』
ビ『・・・種牡馬・・・か』
つづく
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