独断と偏見で決める〈マイ・フェイヴァリッツ・アルバム・アウォード〉の2016年版をお送りします。毎年恒例の“新作チェック機会あまりなし”の状況下での選出ゆえ、多少抜けてるところがあるかもしれませんが、そのあたりはご容赦を。
まずは、2016年に特にチェックした作品より、ノミネート30選をご紹介しましょう。
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01 Afro Parker/Life
02 Anderson .Paak/Malibu
03 Bruno Mars/24K Magic
04 Common/Black America Again
05 Craig David/Following My IntuiTion
06 Eric Benet/Eric Benet
07 Especia/CARTA
08 Gallant/Ology
09 The Jack Moves/The Jack Moves
10 Jamila Woods/Heavn
11 Jeff Bernat/In The Meantime
12 Joe/My Name Is Joe Thomas
13 Jones/The Skin
14 Jordan Rakei/Cloak
15 King/We Are King
16 Lion Babe/Begin
17 Majid Jordan/Majid Jordan
18 Maxwell/Black SUMMERS' Night
19 Musiq Soulchild/Life On Earth
20 Nao/For All We Know
21 Nao Yoshioka/The Truth
22 Phonte & Eric Roberson/Tigallerro
23 Solange/A Seat At The Table
24 SWV/Still
25 Terrace Martin/Velvet Portraits
26 Tinashe/Nightride
27 Usher/Hard II Love
28 The Weeknd/Starboy
29 Yuna/Chapters
30 V.A./Hidden Figures: The Album
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アリシア・キーズ、ビヨンセ、フランク・オーシャン、ブラッド・オレンジ、エスペランサ・スポルディング、ファンテイジア、イジー・ビズ、ジョン・レジェンド、キース・スウェット、宇多田ヒカルあたりが入っていませんが、そのあたりを期待した方、申し訳ありません。ただ、取り立てて気にしないでください。これはあくまで私見ですので。
当初は20選にしようと思ったのですが、それでも絞り込みに難航し、泣く泣く30選にした経緯があります。あくまでもこの時点でのピックアップ30選ですので、外れたからといって評価が高くないという訳ではありません。単純にその時の嗜好というか、ノリというかが意外と大きく影響したりしていますので、もう一度別な時期に「30枚を選べ」と言われたら、ガラッと異なるラインナップになることは十二分に考えられます(やりませんが)。
といったところで、昨年までの過去受賞作品のおさらいです。
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□ 2005年
ERIC BENET『HURRICANE』
□ 2006年
NATE JAMES『SET THE TONE』
□ 2007年
洋楽部門:LEDISI『LOST & FOUND』
邦楽部門:AI『DON'T STOP A.I.』
新人賞 :CHRISETTE MICHELE『I AM』
功労賞 :ICE
□ 2008年
洋楽部門:Raheem DeVaughn『Love Behind The Melody』
邦楽部門:有坂美香『アクアンタム』
新人賞 :Estelle『Shine』
□ 2009年
洋楽部門:CHOKLATE『To Whom It May Concern』
邦楽部門:該当作品なし
新人賞 :RYAN LESLIE『Ryan Leslie』
□ 2010年
洋楽部門:ERIC BENET『lost in time』
邦楽部門:久保田利伸『TIMELESS FLY』
新人賞 :JANELLE MONAE『THE ARCHANDROID』
特別賞 :『SR2 サイタマノラッパー2 女子ラッパー☆傷だらけのライム オリジナルサウンドトラック』
□ 2011年
洋楽部門:KELLY PRICE『KELLY』
邦楽部門:MISIA『SOUL QUEST』<“77 Minutes Of MISIA”Mixed By MURO>
□ 2012年
洋楽部門:SY SMITH『Fast And Curious』
邦楽部門:AISHA『I,Shout!!!』
□ 2013年
最優秀作:Joe『Doubleback:Evolution Of R&B』
特別賞 :Maxine Ashley『MOOD SWINGs』(配信作品)
□ 2014年
最優秀作:Jesse Boykins III『Love Apparatus』
新人賞 :Tinashe『Aquarius』
□ 2015年
最優秀作:Dornik『Dornik』
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2013年はジョー、2014年はジェシー・ボイキンス3世、昨年2015年はドーニクでした。この3年は男性アーティストによる最優秀アルバム受賞が続いていますが、2016年は果たしてどうなるでしょうか。
それでは、2016年のマイ・フェイヴァリッツ・アルバムの発表です。
昨年にならい、5位からカウントダウン形式で発表していきます。さて、栄冠に輝く作品は?
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【MY FAVORITES ALBUM AWARD 2016】
【第5位】
ユナ『チャプターズ』
(Yuna/Chapters)
2012年にはファレルのプロデュースによる「リヴ・ユア・ライフ」で世界デビュー。デヴィッド・フォスター指揮によるディズニー・カヴァー企画『ウィー・ラヴ・ディズニー』にて「ホール・ニュー・ワールド」をカヴァーしたことでも知られる、マレーシアの歌姫のインターナショナル・アルバム。DJプレミア制作の「プレイシズ・トゥ・ゴー」やジェネイ・アイコらの客演など、鮮烈な印象を与える上質なR&B作。純度の高い上質なムード漂う佳作です。
【第4位】
Especia『CARTA』
おそらく2016年で一番愛聴したと思われる、ガールズ・グループ“Especia”の5人体制でのラスト作。とにもかくにも路線が全く異なる冒頭曲でいわくつきとなってしまいましたが、それ以降はグルーヴを湛えながら、シティポップからヒップホップ、ドラムンベースまでをヴァラエティ豊かに滑空。やや贔屓目があるにしても、シーンでの効果的なアプローチとなって久しいファンキーなポップネスからディスコ・ブギーまでを駆使した“アーバン”サウンドをいち早く体現してきた先進性は認められるべきじゃないかと。
【第3位】
ソランジュ『ア・シート・アット・ザ・テーブル』
(Solange/A Seat At The Table)
ようやくこれで“ビヨンセの妹”から逃れられそうな、8年ぶりとなる3作目。エグゼクティブ・プロデューサーにラファエル・サディーク、さらにクエストラヴ、Q・ティップほかの気鋭のアーティストを起用し、強いメッセージ性に見合う個性的なサウンドを構築しております。女性の視点からの訴求というスタンスは姉ビヨンセと寄り添うところもありますが、個人的にはソランジュの方が全体の世界観の整い具合というか、完成度は高いのではないかと感じます。
【第2位】
ネイオ『フォー・オール・ウィ・ノウ』
(Nao/For All We Know)
英・ノッティンガム出身、ロンドン・ハックニー地区を拠点とするシンガー・ソングライター/プロデューサーのデビュー作。UKソウルを自然と耳にする時代に生まれながら、ゴスペルからマイケルやプリンス、ナズ、ジェイ・Zらを聴き、名門音楽院でジャズを学ぶなど、R&Bをベースにしながら多彩な要素を組み込むクロスオーヴァー性が魅力。そして、何といっても気品に満ちたスウィートな歌唱が肝で、豊潤といった言葉が相応しい。フロエトリーやエリカ・バドゥの佇まいでジンワリと浸透させる手練で、モダン・ヴィンテージを携えたフューチャー・ソウルへと導くアンビエントR&B路線の名作です。
第5位から第2位までをサラッとご紹介しましたが、気になる作品はありましたでしょうか。
さて、それでは第1位の発表に移りたいと思います。2016年、〈マイ・フェイヴァリッツ・アルバム・アウォード〉の最優秀アルバムの発表です。
【第1位・最優秀作品】
ブルーノ・マーズ『24K・マジック』
(Bruno Mars/24K Magic)
もう2016年はこのアルバムでしょう。変に“意識高い系”を気取ってニッチなアルバムを挙げてもいいですが、やっぱり一番ノレたという意味では、このアルバムで異論はないと思われます。大いにウケた「アップタウン・ファンク」路線をこれでもかと継承する“ベタ”なスタンスでも問題ないことを証明した作品といってもいいのではないでしょうか。ディスコ・ブギーからJB、さらにはニュージャックスウィングまで、R&B良き時代のサウンドマナーを衒いなく、そして出し渋ることなく、2010年代後半にアップデートしてみせたのは見事。ダフト・パンク✕ファレル「ゲット・ラッキー」以降、ファンキー・サウンド特需が続いている感じですが、この『24K・マジック』が周囲に刺激を与える影響も少なくなさそうな、近未来ファンク・サウンドです。
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いかがだったでしょうか。
5位から2位まで女性ヴォーカルが並んだものの、最後の頂に君臨したのはブルーノ・マーズ。マーク・ロンソンとの「アップタウン・ファンク」の流れを衰えさせることなく今作に反映させてきたエンターテイナーぶりには脱帽するほかありません。ちなみに、惜しくもトップ5入りを逃した次点はジョーとキングでした。
最後に、最優秀作品ブルーノ・マーズ『24K・マジック』収録のタイトル曲「24K・マジック」のヴィデオを見ながら、2016年の〈マイ・フェイヴァリッツ・アルバム・アウォード〉よりお別れしたいと思います。
Bruno Mars - 24K Magic
それでは、2017年もグッド・ミュージックに出会えるよう、ドンと見据えて!(Don't miss it!)