Josephcunlife107の日記

ロンドン(カナダ)生活、IVEY BUSINESS SCHOOLの日常。

たかがピザ、されどピザ

2006年02月09日 | Ivey
 IVEYビジネススクールでは、学生にラップトップコンピューターの購入を義務付けている。データ・財務分析の為のスプレッドシート作成、プレゼンテーション用のスライド作り、授業のノート作成といった作業において、コンピューターは必須だ。IVEYビルディングには、無線ランが導入されているので、学校内ではどこでコンピューターを開いてもインターネットに接続することができる。学校も義務を課す代わりに、学生への責任という形でしっかりとサポートをしている訳である。北米の学校におけるインフラ面の発展は、日本のそれとは雲泥の差である。訳の解らない銅像を建てる為に投資をするくらいなら、チョークと黒板をホワイトボードやスクリーンに変更するべきであろう。そうすれば、コンピューターを用いたプレゼンテーションの授業が導入され、実社会で役立つような勉強も可能になると思うのだが。教育面での学生へのサポート不足は、学生を授業に惹きつけることができない理由の一つに挙げられると思う。結果、多くの大学生がバイトと合コンに勤しんでいるともいえなくないであろう。

 ここIVEYには、HBAとMBAという二つのプログラムがある。MBAは大学院生でHBAは学部生のことだ。どちらのプログラムもケースメソッドで事例検証を行うのだが、学生に教える視点が少し違っている。MBAはマネージャーの観点から、HBAは従業員の視点で事例を検証する。19,20歳のHBA学生が、MBAとほぼ同様の授業を受けることのメリットは計りしれない。卒業後の実ビジネスにおいて、彼らは容易に競争優位の立場を作り出すことが出来るのだ。IVEYには、毎年北米の大手コンサルティングファームや投資銀行がリクルーティングにやってくる。これらの業界は、他のカナダのどの大学よりもIVEYの学生に興味を持っている。彼らにとって、MBAとHBAの両方を採用できるというのはそれだけ大きなメリットなのだ。

 HBAの卒業生は、IVEYを卒業することが彼らにもたらすものの大きさを理解している。だから、当然競争も厳しい。ウェスタンオンタリオ大学の学生の中でも、成績優秀者の中から、上位10%未満の240人しか入学を許されない狭き門だ。当然授業料も高く、普通の学生の数倍は費用がかかるのだが、将来のキャッシュフローを考慮すれば、大した出費ではない。

 このような優秀な学生を多く抱えるIVEYなのだが、僕は学生のモラルについて時々疑問を覚える。例えば、図書館で3分程パソコンを置いたまま席を離れ、席に戻ったらパソコンが無くなっていたとか、財布をかばんに入れておいたら、盗まれてしまったとかは良く聞く話だ。MBAの学生はいい大人なのでそのようなことはしない。そうすると大概は、HBAか他学部の学生が原因となる。

 実は、今日も似たような光景を目にした。カナダの政府系機関が“日本で働く人を募集”という趣旨の会合を学生向けに催していたので、参加することにした。丁度昼食時だったので、ピザが容易されていた。プレゼンテーションが終わり、他の参加者と団欒していると、全く関係ないHBAの学生が入ってきて、勝手にピザを持ち去っていった。僕自身、ピザ等どうでもいいのだが、平気で他人のモノを盗んだりするような人間がいいビジネスマンになれるのだろうかと思う。

 日本でもライブドアや西武鉄道の粉飾決算が大きく取り沙汰され、多くの会社がコーポーレートガバナンスの強化に努めている。経営者のモラルの欠如によるとばっちりを受けるのは、普通の従業員達だ。ビジネスクールでは、ワールドコムやエンロンの粉飾決算以来、ETICSを題材にした授業を増やしている。どんなに優秀な人間であろうとも、モラルの無い人間は最終的に社会に否定されるのである。IVEYの卒業生の5人に1人はCEOである。経営者を生み出すという姿勢は大いに結構なことだが、人の上に立つ人間は、頭でっかちになってはいけないと思う。IVEYには、“たかがピザ”という意識が染み付いた卒業生を輩出しない学校であって欲しいなと思う。

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