クリスマス休暇を利用して日本へ帰国する為に、僕はデトロイト空港へ行くこととなっていた。何故デトロイトかというと単純にトロント空港から飛ぶよりも航空チケットが割安だったからだ。北米では、クリスマス前の時期の航空チケットが一年間を通して一番高いとされており、この時期に手頃な航空券を見つけることは至難の業だ。それこそ下手な旅行代理店に依頼すれば、日本往復で2,000ドル近い価格の航空券を売りつけられることもある。僕は今回インターネット経由でチケットを購入したのだが、航空券の高い時期はインターネットが一番安い価格を提供しているような気がする。
カナダとアメリカの国境に、カジノや自動車産業で栄えるウインザーという小さな街がある。僕のクラスメートのRYANはこの街の出身で、彼にデトロイトから日本に帰ることを話したところ、空港まで送るから彼の家に拠って行かないかと誘われた。そんな経緯で、フライトの前日に彼の家で一晩お世話になることとなった。
五大湖の一つであるエリー湖のほとりに立つ彼の両親の家は、暖炉を備えた寒冷地のカナダの家という表現がしっくりくるものであった。窓からエリー湖を眺めると、湖は既に凍っており、外は冷たい風が吹き荒れていた。気温自体は、マイナス10度だったが、風が強いので体感気温は更に低いのであろう。本格的な冬を迎える1月から2月にかけては更に気温が下がり、マイナス20-30度になってしまう。
彼の家族は、両親と2人の姉、そして弟の6人で構成されている。彼の母親は、彼が小さいときに離婚したので、父親は義父にあたる。北米の離婚率は30%を超えているらしいので、単純にカナダ人の3人に1人は両親の離婚を経験をしていると推測される。そもそも北米においては、女性が経済的に自立していることから、彼女達の社会的地位は相対的に高い。このことに加えて、就職市場において人材の流動化が進んでいることから、離婚率も高くなっているのであろう。日本のように女性は家庭を守るものという考えはカナダでは全くあてはまらない。まあ最近は日本でも女性の社会進出が進んだので、北米に近づきつつあるが、未だに男尊女卑の社会的風潮があるような気がする。
僕自身、女性の社会進出は、女性の社会的地位を向上させるだけでなく、労働力の供給者として、社会の生産性を上げることに寄与すると考えるので、大いに賛成だ。なにより女性にも子供を産むだけでなく、個人として主婦という職業以外に職業選択の自由があると思う。他方、マイナス面として出生率の低下や離婚率の上昇が挙げられるが、後者は止むを得ないとして、前者については、出産費用を無料にするとか育児休暇の拡充という政策を採用することである程度の改善は可能であろう。そもそもDNA的観点から、多くの女性は母親になりたいという願望があるのだから、それを金銭面で妨げる社会というのは問題であろう。昨今日本でみられる少子化問題は、将来の年金問題、市場の縮小等、日本経済の競争力が弱まるという問題を抱えているにもかかわらず、真剣に議論されているようには感じられない。
時計を見ると18時を少し回っていた。今夜は、ライアンの弟のアイスホッケーの試合を観に行くことになっていた。対岸にデトロイトの町並みが見える川沿いの道路を車で30分程走らせ、隣町の古びた体育館に着いた。NHLのチームをモチーフとしたであろう赤と青のユニフォームを着た小学生達が、氷上の格闘技に真剣に取り組んでいた。
僕は、アイスホッケーというスポーツは、スポーツにおいて必要とされるあらゆるスキル‐持久力、瞬発力、チームワーク、精神力、集中力、技術‐を全て含んでいるので、最もエキサイティングかつ難しい競技の一つだと思う。アメリカでいう4大スポーツ(野球、アメリカンフットボール、アイスホッケー、バスケットボール)を全て見たことがあるが、1点の大切さ、フィジカルの強さ、瞬間の集中力等の要素がアイスホッケー程複合的に要求されるスポーツも無いであろう。そういうわけで僕は、アイスホッケーの熱烈なファンの一人なのだが、マイナス気温の中でアイスホッケーの試合を見るのはなんとも応える。寒さに耐え切れなかったので、心の中で早く終わらないかなとも思っていたが、こういうローカルなチームから、かの有名なグレツキーも生まれたのかと思うと見応え十分だった。
試合終了後彼の家に戻り夕食を頂いた後で、彼の両親と話す機会があった。どうやら日本人が家にやってくること自体がとても珍しかったようで、彼の両親は戸惑っていた。僕が彼の父親と話していて感動したことの一つに、12歳の子供に挨拶としての握手を義務付けていた姿勢があった。彼の父親の理論に従うと、大人になって握手をきちんとできない人間は駄目だとのこと。それ故、大人になってから困らないように相手の目をみて握手ができるように今から教えているとのことだった。ということで、彼の弟が寝る時間になった時に、彼の父親は僕に挨拶をしてから寝るように指導していた。その後僕のところにやって来た彼の弟は、“NICE TO MEET YOU”の挨拶をしてベッドへと歩いて行った。国や形は違えど子供にとっての躾の大切さを改めて感じさせられてしまった。
翌朝RYANが僕をデトロイト空港まで送ってくれた。チェックインを済ませ、いつものように空港内で飛行機の離陸を待った。デトロイトは、不名誉にも今年アメリカで最も治安の悪い地域第二位に選ばれた。かつては自動車産業で隆盛を極めたこの街も今や昔の面影は無い。ダウンタウンは今やゴーストタウンのようである。デトロイトは地球の歩き方にも掲載されているが、ここは基本的に観光客の訪れる街ではないようだ。そんなことを考えていると、飛行機の離陸時間となった。いよいよ明日は日本へ帰国だ。
カナダとアメリカの国境に、カジノや自動車産業で栄えるウインザーという小さな街がある。僕のクラスメートのRYANはこの街の出身で、彼にデトロイトから日本に帰ることを話したところ、空港まで送るから彼の家に拠って行かないかと誘われた。そんな経緯で、フライトの前日に彼の家で一晩お世話になることとなった。
五大湖の一つであるエリー湖のほとりに立つ彼の両親の家は、暖炉を備えた寒冷地のカナダの家という表現がしっくりくるものであった。窓からエリー湖を眺めると、湖は既に凍っており、外は冷たい風が吹き荒れていた。気温自体は、マイナス10度だったが、風が強いので体感気温は更に低いのであろう。本格的な冬を迎える1月から2月にかけては更に気温が下がり、マイナス20-30度になってしまう。
彼の家族は、両親と2人の姉、そして弟の6人で構成されている。彼の母親は、彼が小さいときに離婚したので、父親は義父にあたる。北米の離婚率は30%を超えているらしいので、単純にカナダ人の3人に1人は両親の離婚を経験をしていると推測される。そもそも北米においては、女性が経済的に自立していることから、彼女達の社会的地位は相対的に高い。このことに加えて、就職市場において人材の流動化が進んでいることから、離婚率も高くなっているのであろう。日本のように女性は家庭を守るものという考えはカナダでは全くあてはまらない。まあ最近は日本でも女性の社会進出が進んだので、北米に近づきつつあるが、未だに男尊女卑の社会的風潮があるような気がする。
僕自身、女性の社会進出は、女性の社会的地位を向上させるだけでなく、労働力の供給者として、社会の生産性を上げることに寄与すると考えるので、大いに賛成だ。なにより女性にも子供を産むだけでなく、個人として主婦という職業以外に職業選択の自由があると思う。他方、マイナス面として出生率の低下や離婚率の上昇が挙げられるが、後者は止むを得ないとして、前者については、出産費用を無料にするとか育児休暇の拡充という政策を採用することである程度の改善は可能であろう。そもそもDNA的観点から、多くの女性は母親になりたいという願望があるのだから、それを金銭面で妨げる社会というのは問題であろう。昨今日本でみられる少子化問題は、将来の年金問題、市場の縮小等、日本経済の競争力が弱まるという問題を抱えているにもかかわらず、真剣に議論されているようには感じられない。
時計を見ると18時を少し回っていた。今夜は、ライアンの弟のアイスホッケーの試合を観に行くことになっていた。対岸にデトロイトの町並みが見える川沿いの道路を車で30分程走らせ、隣町の古びた体育館に着いた。NHLのチームをモチーフとしたであろう赤と青のユニフォームを着た小学生達が、氷上の格闘技に真剣に取り組んでいた。
僕は、アイスホッケーというスポーツは、スポーツにおいて必要とされるあらゆるスキル‐持久力、瞬発力、チームワーク、精神力、集中力、技術‐を全て含んでいるので、最もエキサイティングかつ難しい競技の一つだと思う。アメリカでいう4大スポーツ(野球、アメリカンフットボール、アイスホッケー、バスケットボール)を全て見たことがあるが、1点の大切さ、フィジカルの強さ、瞬間の集中力等の要素がアイスホッケー程複合的に要求されるスポーツも無いであろう。そういうわけで僕は、アイスホッケーの熱烈なファンの一人なのだが、マイナス気温の中でアイスホッケーの試合を見るのはなんとも応える。寒さに耐え切れなかったので、心の中で早く終わらないかなとも思っていたが、こういうローカルなチームから、かの有名なグレツキーも生まれたのかと思うと見応え十分だった。
試合終了後彼の家に戻り夕食を頂いた後で、彼の両親と話す機会があった。どうやら日本人が家にやってくること自体がとても珍しかったようで、彼の両親は戸惑っていた。僕が彼の父親と話していて感動したことの一つに、12歳の子供に挨拶としての握手を義務付けていた姿勢があった。彼の父親の理論に従うと、大人になって握手をきちんとできない人間は駄目だとのこと。それ故、大人になってから困らないように相手の目をみて握手ができるように今から教えているとのことだった。ということで、彼の弟が寝る時間になった時に、彼の父親は僕に挨拶をしてから寝るように指導していた。その後僕のところにやって来た彼の弟は、“NICE TO MEET YOU”の挨拶をしてベッドへと歩いて行った。国や形は違えど子供にとっての躾の大切さを改めて感じさせられてしまった。
翌朝RYANが僕をデトロイト空港まで送ってくれた。チェックインを済ませ、いつものように空港内で飛行機の離陸を待った。デトロイトは、不名誉にも今年アメリカで最も治安の悪い地域第二位に選ばれた。かつては自動車産業で隆盛を極めたこの街も今や昔の面影は無い。ダウンタウンは今やゴーストタウンのようである。デトロイトは地球の歩き方にも掲載されているが、ここは基本的に観光客の訪れる街ではないようだ。そんなことを考えていると、飛行機の離陸時間となった。いよいよ明日は日本へ帰国だ。