だせなかったLove Letter:17

2010-06-08 | 自作小説:私小説
しばらく女の子の奇声があがっていたが、次第に静かになり、
 “この猫、何処から来たの?”
 “廊下から入ってきたよ”
というような会話が聞こえてきた。
その言葉を待っていたかのように、W辺は、
 “すいません。僕たちの猫、そっちにいきませんでしたか~”
と教室の壁越しにソフトボール部に声をかけた。
 “柔道部?”
少しの間、ざわついた感じがあったが、扉から、M脇が顔を出した。
 “Uじゃない。”
僕を見て、M脇がそう言った。
 “俺達の猫が逃げ込んだみたいで”
僕が言うより、先にW辺が言った。
 “その猫、柔道部のペットみたいだよ。”
M脇が教室の中にいる他の部員に言った。
すると、猫を抱えた女の子が出てきた。
とても、愛しそうに猫を抱えていた。
・・・・笑えるんだ
・・・・なら、なぜ、いつも不機嫌そうに僕を見ているんだ
猫の頭を撫でながら、君が出て来た。
 “ありがとう”
W辺は、君から奪い取るように、猫を受け取った。
 “その猫、どうしたの?”
 “可愛いだろう。捕まえたんだ。”
猫を取り上げられた君は、また、いつものような仏帳面になっていた。
僕は、そんな君に、声をかける言葉を探していた。
そんな気持ちをよそに、M脇とW辺の会話が続いていた。
 “野良猫?”
 “首輪してないから、そうじゃないか?
うちの部のマスコットにしようかと思って”
 “汗臭い男には似合わないよ。”
W辺とM脇の会話は続いていた。
相変わらずの不機嫌そうな表情で君はM脇のそばに立っていた。
付け入る隙させ与えてくれない。
僕は思いを巡らし、いろんな言葉を考え、
そして、w辺とM脇の会話は終わってしまった。
結局、言葉を何も交わせずに、柔道部が宿泊する教室に戻ることになった。
失意の中で、教室に戻る僕に、W辺は、
 “もう一度、チャンスをあげるよ”
そういうと、猫をソフトボール部へ、再び猫を放った。

この男、あなどれない。
僕はそう感じた。
でも、僕は何ひとつ成果を挙げられなかった。
次の朝、食堂に使っている教室で、僕は不機嫌な君を見た。
そして、1年生の夏は終わった。

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