<スマトラ沖大地震・インド洋大津波>タイ;津波被災者支援のための署名活動

被災コミュニティーの土地を奪い、リゾート開発を目論む投資家、地方行政の動きに対して、「NO!」と言いましょう!

「被災コミュニティーの問題の進展について」5.3

2005年05月05日 13時42分26秒 | コミュニティー開発機構の資料
「被災コミュニティーの問題の進展について」
CODI 2005/5/3


タイ南部アンダマン海側6県を襲った津波は、多くの人命と資産、環境に対して多大な影響を与えた。更にこの津波は、長い間硬く閉ざされていた扉をこじ開け、国民に対して複雑に絡まりあう土地に関する深刻な問題を知らしめることとなった。
津波によって別の土地に避難していた被災民の大部分が、元の土地に戻るに十分な月日が経過しているにも拘らず、その土地の権利を主張する個人や行政、公共局らによって、帰ることができないでいる。現在も問題の解決には程遠い状況であり、コミュニティーは恒久的な居住地を持てず、今後の生活もおぼつかない。土地に関する様々な争いも発生している。津波後、様々な団体が、土地問題解決案に関して住民達と協議を重ねてきたにも拘らず、状況改善の道のりは遅く、更に全く前進していない事例では、逆に矛盾が増えてさえいる。土地問題解決へ向け一番具体的に取り組んでいるのが、「国民貧困撲滅協力機構(註;名称不確か)」であり、「土地問題解決小委員会」を立ち上げ、Surin PikunThoong氏を代表とし、困窮する津波被災者支援に取り組んでいる。小委員会の実質的な活動は2月から開始され、現在までの間、全コミュニティーを視察し、土地の所有者は言うまでもなく、住民、行政職員らと会談及び協力をして、既に5つのコミュニティー(トゥングワー、パークトリアム、ターチャットチャイなど)の問題を解決し、他のコミュニティーに関しての重要な前進を達成した。(註;トゥングワー村、パークトリアム村はパンガー県の村落、ターチャットチャイ村はプーケット県の村落)

トラン県とサトゥーン県においては、住民達は津波によって漁具などが主に被害を受けたが、土地問題に関しては、他県に負けないくらい深刻である。

ターレー村コミュニティーのリーダーSweang Chunaat氏は、「ターレー村の住民達は、1905年からこの土地に居住を開始し、それは保護林や港務局管理の土地として宣言される以前のことです。住民は1992年からは300ライほどの沿岸林の保全を開始し、現在では1500ライの沿岸林保全に取り組んでいて、沿岸林には海老、魚、蟹などが豊富に生息している。私達はこの土地に古くから居住するコミュニティーであり、自然環境保全にも努めている。何も政府に対して様々な権利を要求しているわけではなく、コミュニティーの権利を認めて欲しいのです。既に住民自身による調査では、沿岸林内部に18世帯、港務局管理の土地には67世帯が暮らしているとわかりました。コミュニティーの居住地に関する明確な調査結果がまとまれば、今後その範囲を拡大することなく居住し、さらに津波対策として沿岸林を植林する」と語った。
 土地局職員のThaneet Niyom氏は、「土地局は喜んでコミュニティーの土地規定のための測量に協力しますので、住民同士が助け合ってその土地を決めてくれれば、測量に伺う日時を取り決めます」と語った。沿岸資源開発事務所長のAnuson Oonkliang氏の見解では、コミュニティーはもとの居住地で暮らすことが可能であり、そして住民達は植林などによって、沿岸林保全計画を遂行することが可能である。また、土地問題解決委員会代表のSurin氏は、「もし村人達が保護林に制定される以前から居住していると主張するのであれば、港務局はしかるべき土地調査を行うべきであり、そして住民が保護林宣告以前に居住していたと明らかになった場合は、土地の権利書発行が可能である」と見解を述べた。

トラン県カンタン郡リポン行政区ムー2、ムック島村には、480世帯が暮らしており、そのうちの292世帯が土地問題を抱えている。住民の95%がムスリムの漁民、ゴム栽培、観光関連従事者である。土地に関しては、個人から土地を借りて暮らす100世帯(所有者が2年以内に転出を命じている)、衰態樹木の保護区域内居住する世帯、海岸沿いの土地、さらに親族の土地などに暮らす世帯がいる。土地所有権を持つ世帯も、保護区・公園内での生活の是非ついて検証中である。この村の住民達は、一部住民が住居を建設した土地付近の保護林内を居住地として使われてくれるよう、そして行政が彼らの居住の権利を認めてくれるよう懇願している。
 他の地域、コミュニティーに関しても、今後の土地問題解決小委員会会議に備えて情報収集を行っている。
 サトゥーン県でも同様に土地問題を抱える被災コミュニティーが多く、例えばラグー郡のソムマイ村、ソンクラーン村、カーベーン村やボーチャットルーク村、ブローン島、ターチャムアン村、パークラグー村、ロームプーン村などであり、土地の権利書の発行に関する問題や、幾つかの地方では住民の土地で利益を得ようとする機関の動きなどがある。そこで小委員会では、土地管理局職員にチャノート(土地所有権)発行に関する調査を実施させ、住民がコミュニティー共同林としたい土地にも拘らず、漁業・養殖センターとしたい行政側の意向に対して、県側に再度土地利用の必要性と利益に関する協議を行わせるよう方針を決めた。
 その他にも、パンガー県のナイライ村、タップタワン村、レームポム(Laem Pom)村では土地の所有者に関する深刻な矛盾が発生しており、状況が悪化している。そこで小委員会は、関係行政機関と協力して対応していくための実施機関を立ち上げた。

<参照>
チャノート(โฉนด)
 「所有者のない未利用地を開墾した後、私有地化することを願い出て、許可されるときに発給される土地所有権証明書で、この制度はアユタヤ時代の初めからあった」(富田竹二郎:タイ日大辞典)。この土地所有権証明書は、最も正確な地籍図を伴った地券で、「1989年時点で民有地の17%ほどにしか公布されていなかった」(重冨1997:290)。チャノートよりもワンランク低い土地証明書がNo.So.3.Ko(地図つき土地利用済み証書)で、航空写真に基づく地片図を利用しているため、「地上の凹凸によるゆがみを修正していないなど、正確さの点でチャノートのもとになる地籍図に及ばない」(同上書)。しかしチャノートの基礎となる地籍図が全国を網羅しているわけではないために、便宜的にNo.So.3.Koも利用されている。チャノート発行に関しては、「1985年からチャノート発行促進プロジャクトが始められており、その20年後の2005年には全国にチャノートが交付される予定である」(同上書:302)。しかし、上記CODI文章内においては、チャノート発給のための土地測量調査を実施するよう土地問題解決小委員会が土地局に要請していると書いてあることから、チャノートが2005年現在、未だ全国に交付されている段階ではないと推測できる。
 しかしナムケム村のLaemPomコミュニティーの土地に関しては、Far East Trading and Consultant CompanyがチャノートとNo.So.3.Ko両方の権利書を所有しているという、立て看板があることから、どのような経緯でそれらを購入したかは定かではないが、もしそれが真正な証明書であるならば、住民の立ち退きに対して一定の強制力を持っていると考えられる。


重冨真一 1997 「タイ農村の『共有林』に関する土地制度」『東南アジアの経済開発と土地制度』水野広祐・重冨真一(編).アジア経済研究所.pp263-303.

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