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<メコン川>中国のダム放水で深刻な水害

2019-07-18 20:41:05 | インド・東南アジア・中央アジア

中国のダム放水で深刻な水害

2019/7/14        Japan In-depth  大塚智彦(Pan Asia News 記者)

【まとめ】

・中国のダム放水がメコン下流域の住民に深刻な水害もたらす。

・下流域国々が中国に善処求めるも、事態は悪化の一途。

・中国聞く耳持たない背景に、対中姿勢で温度差ある各国の事情。

 メコン川(2019年7月3日 ラオス・ビエンチャン)出典: MRC

 

 

東南アジア最大の河川で、チベット高原に源を発し中国雲南省、ミャンマー、ラオス、タイ、

カンボジア、ベトナムの国境地帯を流れて南シナ海に注ぐ全長4200キロの大河メコン川は、

漁業や農業、水運などでその流域に暮らす人々の生活を昔から支えてきた。


その伝統的な生活が今脅かされる事態に直面している。原因は中国が自国領内のメコン川上流に

建設した複数のダムで、貯水量の調節のためとして大量の水を放流することによるメコン川下流域

での水位上昇、水流の激化などが自然環境や農業、漁業に従事する周辺住民に様々な問題を引き

起こしているのだ。


ダムの放水は危険を伴うことから中国は事前に下流関係国に連絡することになっているが、実際は

連絡が大幅に遅れたり、連絡がなかったりというケースが大半で、メコン流域各国は中国に抗議して

いるものの、事態は一向に改善していないという。


米政府系放送局「ラジオ・フリー・アジア(RFA)」が7月3日に伝えたところなどによると、

メコン川上流、中国雲南省にある景洪ダム(発電量1750MW=2010年完成)による放水の影響で

ラオス北部ボーケオ県の流域住民200家族以上が7月までに水位上昇による洪水で田畑や家屋が

被害を受けているという。


さらにタイでも流域の20カ村に住む約300家族が景洪ダムなどの放水による突然の水位上昇が

生活の糧であるメコン川での漁業に深刻な影響を与えているという。


放水は水位の上昇に加えて水流の速さも変え、水生植物や生息魚類などの環境を破壊してしまうことや

増水や川底の状況変化でフェリーなどの生活に関わる水運にも影響が及んでおり、

流域住民は生活困難に直面しているとRFAは伝えている。

 

景洪ダム(Jinghong dam)出典:米政府系放送局「ラジオ・フリー・アジア(RFA)

 

 

■ 中国で7ダムが稼働、20ダム建設計画

中国は不足気味の電力需要を賄うためメコン川上流で現在7つの水力発電ダムを稼働させている。

7つのダムは景洪ダムのほか1996年から2017年までに完成した、発電量5857MWの糯扎渡ダムや

750MWの功果橋ダム、4200MWの小湾ダム、1350MWの大朝山ダムなどで、特に雨期にはダムの

貯水量調整のために放水するケースが多いといわれている。


さらに中国はメコン川が流れる雲南省や青海省、チベット族自治州などで現在20のダムを建設中

ないし計画中とされ、今後さらにメコン川下流の東南アジア関係国に与える影響が深刻化することが

予想される事態となっている。

 メコン川のダム分布図 出典:MRC

こうした状況にタイ、ラオス、カンボジア、ベトナムからなる「メコン川委員会(MRC)」は

将来の被害軽減に向けた検討協議を始めるとともに、環境保護団体などと連携して中国政府に

善処を求めている。

7月中にはバンコクの中国大使館に深刻な事態を訴えるとともに「これまで被害を受けた流域農民

などへの被害補償を求めていく」としている。


タイのメコン川環境監視団体などによると、2019年になって過去37年間で最高となる

3.7メートルの川の水位上昇が一部流域で観測されたという。このためメコン川にある中州や島では

畑などが水没し、農作物が甚大な被害を受けたといわれている。


事態を重視したバンコクの米大使館関係者も被害を受けたタイ農民からの事情聴取に乗り出そうと

しているとの報道もある。


さらに中国は領土内のメコン川で浅い川底を浚渫(しゅんせつ)したり、川中や沿岸の岩石を破砕

したりして船舶が航行できるような河川工事も実施しているとされ、

下流域の環境汚染問題も新たに浮上していると環境団体は指摘する。

 

中国の習近平国家主席(右)とカンボジアのフン・セン首相(2015年4月23日 インドネシア・ジャカルタ)。カンボジアは親中国の立場を示しており、

MRCの足並みはそろわない。出典:在シンガポール中国大使館ホームページ

  

 

「MRC」は中国に対してダム建設の中止をこれまでも求めてきたが、中国側は聞く耳持たずの状況で、

事態は悪化の一途をたどっており、国際社会での問題提起の必要性が高まっている。


ただMRCの内部でも多額の経済援助などから親中国の姿勢を明確にしているカンボジアでは

流域農民や漁民の被害の実態があまり明らかになっておらず、対中姿勢を巡ってメンバー国の間に

温度差が存在することも事実。


中国がメコン下流域の深刻な問題を認識しようとしない背景には、こうした東南アジア側の事情もある

と指摘されており、今後の課題となっている。


世界的にも豊かな生物環境とされるメコン川は環境面だけでなく周辺住民の生活にも直結した

生活河川でもあるだけに、関係国並びに国際社会の早急な対応が求められている。


メコン川委員会(Mekong River Commision : MRC

 http://www.mrcmekong.org/

 

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