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<人工肉時代 ④>人工肉バーガーの実力、ベジタリアン以外も満足。 「血が滴る」風味の開発で業界に新風

2019-06-17 12:14:00 | 食べ物・食の安全

 人工肉バーガーの実力、ベジタリアン以外も満足

「血が滴る」風味の開発で業界に新風

 2019 年 6 月 13 日 13:09 JST   WSJ  By Heather Haddon

 

 

 米ロサンゼルス在住のコンサルタント、ジョーダン・ブリュノーさん(34)は、従来からある

植物由来の「ベジバーガー」を食べても満足できない。いかにも健康によさそうな味がするだけだ。


 同氏は近くのハンバーガーチェーンの店舗に登場した新商品「インポッシブル・バーガー」を

食べたかったが、人工肉でできたパティが品切れになったと知った。

インポッシブル・バーガー


 「(ベジバーガーの)モーニングスターやボカは健康志向が強すぎると思う。ハンバーガーを

食べたい時、求めているものとはちょっと違う」。


 ベジバーガーは数十年来、肉を避けるベジタリアンの代替食としてレストランのメニューに載り、

バーベキューパーティーでも用意されてきた。最近になって新興企業のインポッシブル・フーズや

ビヨンド・ミートがハイテク技術を使って本物の肉により近づけた商品――歯ごたえがあり、

時には「血が滴る」こともある――を発売し、各地のレストランや食料品店で人気を博している。

ビヨンド・ミートは11日、牛肉の霜降りに似せるためココナツオイルとココアバターを使った

人工肉バーガーの新商品を売り出すと発表した。

 

この状況はベジバーガー市場の先駆者となった企業に存亡に関わる課題を突きつける。そうした

企業は植物性パティの縄張りを守るため、より肉らしい商品の開発に力を入れ始めた。


 食品大手ケロッグ傘下のモーニングスター・ファームは最近、「ミート・ラバーズ」と名づけた

パティを発売。クラフト・ハインツは傘下のボカが作るベジバーガーの製法を昨年見直し、

ざらつく舌触りを残した大豆を使うなどして風味と食感を改善したという。

ベジバーガーを1990年代初めから製造するドクタープレイガーズは昨年、肉好きの消費者を意識した

「ピュア・プラント・プロテイン」シリーズを発売した。

 

 「人々が肉に期待する味を再現するよう心がけている」。食品大手コナグラ・ブランズの

シニアバイスプレジデント、ボブ・ノーラン氏はこう話す。同社は昨年、同業大手ピナクル・フーズを

110億ドルで買収した。植物性たんぱく質ブランド「ガーデイン」のてこ入れが目的の一つだ。


 昨年のギャラップの調査によると、米国人のうち自分をベジタリアンとみなす割合はわずか5%、

ビーガンは3%だが、一方で肉の摂取量を減らしたいと考える人は増えている。投資家はこの

傾向が続くとみてインポッシブルとビヨンドに数億ドルをつぎ込んでいる。ビヨンドの株価は7日、

前日の1-3月期(第1四半期)決算発表を受けて39%高となった。現在も5月の新規株式公開(IPO)

価格の5倍を上回る水準にある。

 ケロッグ傘下のモーニングスター・ファームは多様な植物性パティを発売している

 

一方、ニューヨーク州在住の芸術家、ジラ・オルターさん(66)は50年ほど前からベジタリアンで、

本物の肉の味がすることは自分の考えにはそぐわないと話す。「私には昔からあるブランドで十分だ」

 

 バージニア州在住のパラリーガル、ブリタニー・フリードラインさん(23)は最近ビーガン食

(肉や卵、乳製品などの動物性食品を一切含まず植物性食品だけで作られた食事)を始めたが、

この新しい選択肢を気に入っている。それでも時々、味が本物に似すぎていると感じることを認める。

「私はこれが本物ではないと言い聞かせなくてはならない」

 

 この新種のバーガーが登場するまで、ベジバーガーの味は何十年もほぼ変化がなかった。

ガーデンバーガーなどの企業は1980年代に健康食品専門店やベジタリアン・レストラン向けに

ベジバーガーの提供を始めた。大豆やマッシュルーム、野菜、豆類を組み合わせて作るパティは

ベジタリアンの定番メニューとなったものの、肉好きの人の興味を引くことはなかった。

 

  だがここ数年前、食品科学者が植物のたんぱく質などを操作する新たな技術を活用して、

この業界に新風を巻き起こした。一部のバーガーは焦げ目がつくことや「血がしみ出す」

(ビートの絞り汁を使う)こともあり、人工の牛ひき肉やソーセージにより肉らしい風味や

食感を加えている。


 大手ハンバーガーチェーンのバーガーキングは4月、ミズーリ州セントルイスの店舗のメニューに

「インポッシブル・ワッパー」(ワッパーは同社の主力商品)を加えた。

「この味はどこからどこまでワッパーだ。自信を持って言える」。バーガーキングを傘下に持つ

レストラン・ブランズ・インターナショナルのホセ・シル最高経営責任者(CEO)は語った。


 バーガーキングは全米でインポッシブル・ワッパーを取り扱う店舗を増やすとともに、

モーニングスター・ファームのベジバーガーは段階的に廃止する方針だと同社幹部は述べた。

 

Impossible Whopper

 


一部のシェフやファストフード企業幹部は、新しい人工肉が登場するまで自分たちの店でこれを

提供することは考えもしなかったと話す。


 「われわれは完全にマッチする食材を探していた」。大手ピザチェーン、リトル・シーザーズの

最高イノベーション責任者、エド・グライク氏はこう話す。同社はインポッシブルと協力し、ピザの

トッピング用の人工ソーセージを開発した。

 

 インポッシブルは当初、同チェーンのために見かけも食感も「牛肉」そっくりの人工肉を開発した。

だがソーセージを乗せたピザは牛肉をトッピングしたピザの約10倍も売れ行きがよく、同社は

それを最大に生かしたいと考えた。数カ月後、本物そっくりのソーセージというアイデアが浮かび、

リトル・シーザーズが現在使っている商品の開発に至った。


 この分野には食品業界の他のプレーヤーも相次ぎ参入し、植物由来の人工肉は今後一段と厳しい

競争にさらされそうだ。


 ビヨンド・ミートに出資していた食肉加工大手のタイソン・フーズは、今夏には独自の人工肉を

売り出す予定だ。

ブラジルの食肉加工大手JBSも牛肉そっくりのビーガン向けバーガーの開発を進めている。

スイスの食品大手ネスレは今秋、人工肉を使った「オーサム・バーガー」を発売する考えだ。

英蘭系食品・日用品大手ユニリーバは昨年、代替肉メーカーのベジタリアン・ブッチャーを買収している。

 

<人口肉時代 ①>人工肉バーガーと人類の未来

<人工肉時代 ②>人工肉時代の到来、目指すは「食卓のテスラ」 

<人口肉時代 ③>人工肉バーガー人気、パテ供給業者はうれしい悲鳴

 

 
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