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<人工肉時代 ①>人工肉バーガーと人類の未来

2019-06-17 11:00:00 | 食べ物・食の安全

【WSJオピニオン】人工肉バーガーと人類の未来

2019 年 4 月 12 日 13:14 JST   WSJ By Walter Russell Mead

――筆者のウォルター・ラッセル・ミードは「グローバルビュー」欄担当コラムニスト

バーガーキングの「インポッシブル・ワッパー」


 筆者は先週、21世紀を生きていることを実感した。大手ハンバーガーチェーンのショップに入って

「インポッシブル・バーガー」のセットを注文したのだ。


 インポッシブル・バーガーのパティに牛肉は使われておらず、植物由来の「ヘム」という物質に

よって牛肉のような風味を生み出しているという。ヘムは動物の血液にも存在する化学物質で、

肉を肉らしい味にしている存在だと会社は説明している。


 実際そうなのだろう。筆者が食べたインポッシブル・バーガーは典型的なファストフードの店舗で

出されるハンバーガーと同じぐらい肉っぽく、そしてありきたりなものだった。値段が高かったことを

除けば、世界中で大量に消費されている本物と呼んでよいものと見分けがつかない。


 人工肉バーガーは徐々にではあるが、マスマーケットに進出しつつある。バーガーキングは

定番メニュー「ワッパー」でインポッシブル・バーガーを試験販売している。 


 人工肉バーガー革命は、米国のステーキハウスにとっては脅威ではない。大豆タンパク質とヘムの

組み合わせでプライムリブなどステーキの味や食感を再現するのはまだ当分は不可能とみられるからだ。


 しかし、人工肉バーガーがファストフード市場で牛肉のハンバーガーより安く売られるようになれば、

気候変動に与える影響はパリ協定をしのぐ可能性がある。同協定は、世界的な平均気温上昇を

「産業革命以前に比べて2度以上高くならないよう、十分に低い水準に保つ」という目標を掲げて

いるが、うまくいっていない。批准各国が掲げている現在の自主目標では上昇幅が約3度に達すると

予測されている。実際、世界のほぼすべての国が目標を達成できていないのだ。

 

 米国で排出される温室効果ガスの9%は農業によるもので、その3分の1近くは環境保護局(EPA)

がかしこまって「腸内発酵」と呼ぶもの、平たく言えば牛のげっぷやおならによるものだ。

もしインポッシブル・バーガーやその他の試験的な代替肉が消費者に根付けば、二酸化炭素排出量は

減るだろう。環境活動家が遺伝子組み換え植物への自滅的な反対を撤回すれば、二酸化炭素排出量は

さらに減るはずだ。化学肥料や殺虫剤の使用が少なくて済むよう遺伝子操作された大豆は、

環境への負荷をさらに減らしつつ、人工肉の生産を増やすことができる。


 テクノロジー楽観主義者(テクノロジーが絶えず進化することで生活水準は改善し、世界が

より良い場所になると考える人)に1ポイントだ。経済学者トマス・マルサスが人口論を唱えてから

221年が過ぎた。マルサスは、生活水準は上がり続けるだろうが、急激な人口増で経済成長の恩恵が

食いつぶされると主張した。人工肉バーガーは、自動運転車や次世代グラフェンバッテリーといった

他のイノベーションと同様、マルサスの予想がなぜ多くの場合で間違っているかを思い出させる。

資本主義によってさまざまな法則が変わり、定常状態を基準にした予想を時代遅れなものにしているのだ。

イノベーションに見返りを与える自由企業体制の下、人類滅亡の予測は新たなテクノロジーによって

見込み違いとなりがちだ。


 もちろん、誰もがハッピーという訳にはいかない。食肉業界団体はすでに欧州連合(EU)に対し、

肉を使っていない食品に「バーガー」などの言葉を使うのを禁じるよう求めている。

 

 このことは、破壊的な変化が単に世界をより豊かにしたり、環境に好影響を与えたりする

だけではなく、強力な利害関係をひっくり返したり、地域や国家に騒乱をもたらしかねないことを

浮き彫りにする。これは何も、怒れる食肉団体や配車サービスに団結して立ち向かうタクシー団体に

限った話ではない。製造業のグローバル化から定型的な事務作業の自動化、そしてソーシャルメディアの

台頭まで、テクノロジー革命は多くの人々の生活、考え方、働き方を変えてきた。


 同様に、テクノロジー革命は世界の歴史も変えている。グローバルなサプライチェーンを可能に

したことで中国の台頭を加速させた。そして労働者階級の不満をあおり立て、欧米社会の多くで

ポピュリスト運動を増大させている。


 マルサス主義者が訪れもしない人類の滅亡ばかり予測しているとすれば、テクノロジー楽観主義者は

到来することのないユートピアを約束するという正反対の間違いを犯している。

30歳以上の読者なら思い出すだろうが、インターネットは世界的な民主化を可能にするとされていた。

しかし実際には、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は世界中で民主的選挙を妨害するのに

ネットを使った。また、中国の習近平国家主席はジョージ・オーウェルでさえ想像できなかったほどの

独裁主義の土台としてネットを使う方法を編み出している。

 

 マルサス主義者もテクノロジー楽観主義者も同じ理由で間違っている。ともに人間の本質を

見誤っているのだ。人間はマルサス主義者が考える以上に独創的で適応能力がある。しかしその一方で、

テクノロジー楽観主義者が考えているよりは頑固でひねくれ者なのだ。


 結局、人工肉バーガーのランチは筆者に3つの重要な示唆を与えてくれた。

まず、気候変動と戦うに際して最も期待できるのは資本主義であること。

次に、資本主義革命が進むのに伴い、世界的混乱が増えるのを覚悟すべきであること。

最後に、前途に待ち受ける課題を克服するには、マスタードとケチャップ、そしてピクルスが

これまで以上に欠かせないということだ。


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本物そっくりの「赤肉」を使ったベジタリアン用新バーガーの秘密

 2014 年 10 月 9 日 11:20 JST   WSJ By Evelyn M. Rusli

インポッシブル・フーズは植物由来の材料だけでハンバーガーをつくろうとしている 


 米スタンフォード大学教授で初めて起業家に転じたパトリック・ブラウン氏(60)は、赤肉の味を

再現する秘密を見つけたと言う。それは植物性の「血」だ。


 ブラウン氏はある日の午後、自社の研究室で、プラスチックのカップに深紅色の液体を注いだ。

この混合液は血のように見え、金属のような味がする。これは血液を赤くし、ステーキをステーキらしい

味にするヘモグロビンの中にある分子からつくられたものだ。


 しかし、この生物工学的な血液は植物由来であり、3年前に同氏が設立したインポッシブル・フーズ

にとって重要な財産だ。同社はこれまでに、見た目も感触も味も焼け方も本物そっくりのハンバーガーを

つくりだしている。

米社が販売目指すベジバーガー

 

 インポッシブル・フーズは、肉や卵、チーズ、その他の動物性の食品を植物を使って再現しようと

している、資金豊かな一連の新興企業の一つだ。これら企業の目的は、1兆ドル規模の畜産業界を

崩壊させるだけでなく、環境面での圧力が強まる中で、より持続可能な食資源を創出することにある。


 こうした企業の幾つかは、マイクロソフトの創業者ビル・ゲイツ氏、香港の資産家、李嘉誠氏の

投資会社、一連のベンチャーキャピタルなどの資金を引き付けている。

カリフォルニア州のビヨンド・ミート社は大豆製の骨なしチキンとエンドウ豆たんぱく質を使った

ビーフ・クランブルを販売しており、新たにバーガーも売り出す計画だ。

5000万ドル(54億円)を調達しようとしていると言われるサンフランシスコのハンプトン・クリークは、

似たような材料を用いたマヨネーズ、卵、クッキーの生産を専門としている。

ニューヨークのモダン・メドウは今年夏に1000万ドルを集め、幹細胞から肉と皮革をつくろうと

している。


 インポッシブル・フーズは、コスラ・ベンチャーズ、グーグル・ベンチャーズ、李嘉誠氏の

ホライズンズ・ベンチャーズ、それにゲイツ氏から約7500万ドルを調達しており、資金量は最大級だ。


 これらの資金の多くはカリフォルニア州レッドウッドシティーにあるブラウン氏の製造施設に

注ぎ込まれている。これは映画「チャーリーとチョコレート工場」に出てくる、偽食肉をつくる

ためのウィリー・ウォンカの研究室に似ている。この研究室では白い上着を着た技術者たちが

新鮮なホウレンソウの葉を他の植物の成分と一緒に巨大なブレンダーでかき混ぜ、植物たんぱくに

分解している。


 別の場所では機械が生の挽き肉を調理し、科学者がそれぞれの匂いの特性と強さを記録している。

香り、感触、匂いの改善をしている部署もあれば、加工の費用効率の改善を目指している部署もある。

 

インポッシブル・フーズは肉だけでなく、卵、チーズなども植物から作ろうとしている  


 白髪頭のブラウン氏は、シリコンバレーの起業家というより変人科学者のようだ。同氏は医学の

学位を持ち20年間スタンフォードで教えてきた。


 同氏は3年前、長期休暇の間に、二酸化炭素(CO2)の大量排出で批判されている畜産業界に、

自分の科学者としての知見が役立つのではないかと気づき、インポッシブル・フーズ創業の構想を

得たと話した。


 同氏は「現在われわれが食肉やチーズを生産するために使っているシステムは、全く持続可能ではない」

とし、「これは環境に恐ろしく破壊的な結果をもたらす」と強調した。


 食肉・酪農製品業界の団体は、資源の利用と環境への悪影響を減らすため努力しているとしている。

これらの措置には排せつ物やバイオガスの再利用技術の開発などが含まれるという。


 ブラウン氏は一つの業界を変えるには今売られている肉代替物の改良版をつくるだけでは駄目で、

なぜ肉は肉らしい味がするのかを分子構造的に突き止め、肉と同じかそれ以上の製品をつくりたいと

考えた。


 同社はまず、数百に上る調理済み挽き肉の基本的香りと匂いを分析した。同社が発見した最も

重要なことの一つは、肉の香りではヘムが重要な役割を果たしていることだった。ヘモグロビンなどに

含まれるヘムは糖分やアミノ酸にさらされると香りを放ち、料理済みの肉にそれらしい味わいをもたらす。


 その結果が、生の挽き肉の外見と感触を持つ深紅のパテだ。

ウォール・ストリート・ジャーナル記者を前にしたデモンストレーションで、このパテは加熱されると

ともに徐々に茶色くなった。油がにじみ出て、料理された肉の匂いがした。口に入れると、

バーガーの挽き肉と同じようにばらばらになった。ただ、味は完璧ではない―明らかにグルメバーガー

より数段下で、より七面鳥のパテに似ている。

 

 同社のバーガーが、畜産業界を崩壊させるまでには多くのハードルが残されている。

今はまだ小規模にしか製造できないこの小さなパテをつくるのに約20ドルを要する。このバーガーは

牛を飼う必要はないが、5種類の植物を大量に必要としている。

 ブラウン氏は、より安価な生産プロセスを目指しており、原材料費は規模が拡大するに従って

減少すると話した。

 

One startup believes it's cracked the code on fake meat that looks like meat, bleeds like meat, and even sizzles on the grill. WSJ's Evelyn Rusli stops by Impossible Foods for a taste.


 
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