先月、パリ5泊とベルギー・フランダーズ地方6泊の旅行をしました。その報告を。
初めてパリを訪れたのは約30年前。その後、10数回の訪問を数えますが、いずれも春~秋で冬の旅行は今回が初めてです。この季節は日本より寒く日も短いので、専ら美術館と劇場巡りに目的を絞ることにしました。
冬空のモンマルトル。
ルーブル宮
オペラ座(ガルニエ)
ルーブルから見たセーヌ
冬木立ち(プチパレ庭園)
夕暮れの街かど(オベリスクを望む)
(1)ルーブル美術館
ルーブルの訪問も10回くらいになりますが、そのたびに新発見があるように思います。むろん展示場が幾度となく拡充されたりといった設備上の改善もありますが、何日見ても見飽きぬほど展示されている美術品が質量とも世界最高レベルにあるからでしょう。もしルーブルがなければ、これだけの物を見ようとすれば、どれだけ世界中を歩き回らなければならないか、そう思っただけで、ここを訪れることができる幸せに感謝せざるを得ません。(大英博物館と同じく、植民地からの略奪という帝国主義の遺産という見方もありますが。)
中学の美術史の授業で先生が、「絵は本物を見ないと価値は分からない。画集をいくら見ても限度がある。」と言われました。生徒に画集を見せながらそう言ったので、「変な事を言う先生だな。」とその時は思ったのですが、その後20年経って初めてルーブルへ来た時、この言葉が突如頭に蘇りました。「先生あなたは正しかった!」彫刻などは、レプリカでも良いかも知れませんが、絵だけは、いくら印刷技術が発達しても本物には比肩できるものではありません。
自然院は絵画に造詣が深いという訳ではありませんが、シスレー・モネ・ピサロなどの風景画をじっと見ていると、自分が徐々に情景の中に溶け込んでゆき、そこの空気、温度や匂い、風の音や犬の声、空の眩しさなどを感じることがあります。そうなると大変快いもので、暫くその中に自分を委ねていたいという気持ちになります。それが私の鑑賞法なのですが、これを展示画の前でいちいちやっていては時間が掛かります。だから同行者がいる場合は少し困るのですが。宗教画には全く関心が無い(ほとんどの日本人がそうでしょうが。)、肖像画や狩猟物の絵も関心が無い(貴族の自慢にしか見えないので。)、そこで心静かに鑑賞できるのは、やはり風景画ということになります。
今回は冬だったので、さすがに観客は少なく、ゆったりと廻れたのは狙い通りでした。ただ東洋人が多いのには少し驚きました。全観客の4分の1くらいを、中国人・韓国人・日本人で占めているといった感じです。有名作品の前で記念写真を撮っては、足早に次の絵に向かって行くといった人たちが多いようでした。東洋人は記念写真が好きなんでしょうかね。昔は、撮影禁止だったように記憶していますが、今はフラッシュがバチバチ光っています。絵の保存に影響はないのかなと心配になります。
最近は額縁の前をガラスで覆ってある絵が増え、反射光で見えにくくなりました。昔はモナリザだけがガラスに覆われていたように思います。そのモナリザも以前は間近で見れたのに、今は6~7mくらい離れてロープ越しに見るようになりました。感動はガタ減りですが、監視が厳しくなるというのは昨今ではやむを得ないことなのでしょう。
(2)オルセー美術館
初めて訪れた頃は印象派美術館と称していました。その後、駅を改造した小面積に大量の印象派絵画を持ち込んだため、ルーブルより効率的に周れるため大好きな美術館です。
(3)オランジュリー美術館
モネの睡蓮の絵が圧巻。大きな壁一面に描かれた絵の迫力には圧倒されます。やわらかく揺らぐ睡蓮の中に身を置く贅沢を満喫することができます。
楕円形の壁一杯に展示されたモネの睡蓮
(4)新オペラ座
1989年に設立された最新鋭の設備を誇るバスティーユの劇場で、歌劇「蝶々夫人」を鑑賞しました。世界最高レベルのパリのオペラ。「素晴らしい」の一言だけです。敢えて低レベルのコメントを致しますと、歌手のコスチュームは少し違和感がありました。日本で演じるオペラでは、蝶々夫人はじめ日本人役は着物、ピンカートンなど軍人は将校服というのが普通でしょうが、今回は全員長いローブでした。日本というより、ビルマかベトナムのような印象で、ちょっと変な感じは残りました。
世界の一流ブランドが集まるパリの中心街。夜中の12時頃、たまたま有名ショップの前を通りかかりました。すると、何とドアの前にホームレス達が寝ているではありませんか。同じ地面を昼間はセレブ達が闊歩し、夜はホームレス達が寝る。24時間で両極端が入れ替わる。何とも皮肉な都会の一端ではありました。
エルメスとクリスチャン・ディオール
ギャラリー・ラファイエット