アイルランドには多くの遺跡があります。歴史的には次の4段階に分かれると思います。
(1)先史時代:
エジプトのピラミッドと同じくらい古い歴史がある。イギリスのストーンヘンジのように巨石を使った遺跡や巨大古墳があるが、同時代の他の文明がそうであるように後続時代に継承されず、誰が何のために作ったのかなど不明で謎が多い。
ニューグレッジの古墳遺跡と玄室(世界遺産)
(2)ケルト人の遺跡。
ケルト人が流れついてこの地に定着した。独特のケルト模様が建物を飾っている。ケルト人は部族ごとの集団で、組織だった軍隊を作ることはなかった。そのため、外部からいろんな人種の侵略を受けることになる。
(3)原始キリスト教の遺跡。
この国にキリスト教を広げた聖パトリックたちは、元からあったケルト人の土着宗教(自然崇拝など日本と似通った面もある。)を融合しながら布教した。このため、他の地域に比べ、カトリックが大きな混乱なく広がった。
初期キリスト教会の遺跡(グレンダーロッホ)
初期キリスト教の特徴であるハイクロス(背の高い十字架) アダムとイブやメシヤを探しにゆく3博士など聖書の話が刻まれている。(ニューグレッジ)
(4)イギリスとの確執時代:
アイルランドはケルト人のあと、バイキングやノルマン人が侵入して来たが、いずれもケルト文化に溶け込んでいった。しかし、その後擡頭してきたイギリスとは緊張した関係になる。宗教上や政治上の理由でイギリスとは大きな確執に至る。この頃の建造物は海岸の要塞などが中心になる。
キルケニー城
海岸に立つ要塞ダンルース城
近年ベストセラーとなった「国家の品格」を読んだら、アイルランドのことが出ていました。著によると、アイルランドは飛び抜けて天才の輩出量が多いそうです。数学ではハミルトン、文学では、オスカー・ワイルド、ジョナサン・スウィフト、ウィリアム・イェツ・・・・・・綺羅星の如くです。「吸血鬼ドラキュラ」の著者ストーカなどは、このレベルから見れば褌担ぎです。ちなみに有名な「ガリバー旅行記」を書いたスウィフトは、アイルランド最高教会の最高司祭でもありました。日本でいえば、天台座主が「東海道中膝栗毛」を書いたようなものでしょうか。
そのアイルランドは人口わずか400万人、静岡県くらいの規模です。なぜそんな小国から天才が多く輩出するかというのが大きな疑問ですが、「国家の品格」によると、天才が多い国は、いずれも次の3条件を満たしているそうです。
●景色が良いこと。
●ひざまづく心があること。
●精神性を尊ぶ心があること。
確かにアイルランドは景色は抜群だし、旅行中の住民とのちょっとした触れ合いでも「おもてなしの心」はいつも感じられるし、これらの条件は十分に満たしている素晴らしい国だと感じました。
「国家の品格」の中で著者は、「日本は、やたらと論理・合理性に基づくグローバル化に走るのではなく、長年育んで来た『情緒と形(武士道精神)の文明』を世界に通じる『普遍的価値』として大事にし、品格ある国家を再構築すべきだ。」と説いています。
品格を持つ国家のモデルとして著者は、例えば現在のイギリスに近いものを考えているようです。日本の言うことに世界は誰も耳を傾けないのに、なぜ経済的にも軍事的にも大したことがないイギリスの言うことに世界は耳を傾けるのか? それは、イギリスの持つ「普遍的価値(議会制民主主義、シェイクスピア、ニュートンを生んだ土壌など)」に世界が敬意を表するからとしています。
ということで、アイルランドからの帰りにロンドンに寄りました。ロンドンに初めて行ったのは約30年前。その頃のイギリスは英国病と揶揄されるように経済のドン底にありました。ヤマネコストが頻発しロンドンは汚く公衆電話も半分は故障していたという有様に愕然とした思いがあります。
一方当時の日本は高度経済成長の真っただ中にあり、当時ロンドンを訪れた日本の財界人は一様に「もはや英国から学ぶものは何もない。」などと言い放っていましたし、私も同じように感じました。
その後ロンドンへは10回くらい行きましたが、その間にサッチャー改革により経済は見事に復活し、ロンドンは見るたびに綺麗に賑やかになって来ました。
今回のお目当ては、ロイヤル・アルバート・ホールで毎夏開催されるサマー・コンサート。一流アーティストの演奏が連日目白押しなのです。この夜の演奏は、パイプオルガン曲とサンサーンスの交響曲でした。巨大なパイプオルガンの演奏はド迫力あり、交響曲はこれまで聞いたことのないくらい柔らかい音でした。ホールは円形で内部は写真のように壮大にして荘厳な作りになっています。
面白いことに、サマーコンサートの期間は中央の座席が取り払われ、立ち見となります。少しでも多くの人たちに楽しんでもらおうという趣向なのでしょう。私は座席のある席を予約しましたが、立ち見の人たちは3時間あまりをじっと立って聞いていました。そんな辛抱をしてでも演奏を聴くという、これもすごい伝統だなと思いました。日本にも科学の粋を尽くした機能的に勝れたホールは多いけれど、このような格式と伝統は逆立ちしても望むことは出来ません。やはり、英国の品格というものなのでしょう。
ロイヤル・アルバート・ホール: 巨大な円形ホールで右側にパイプオルガンがある。中央席は夏期は立ち席となる。
今回は、ドラキュラが結ぶ縁から始まって品格を考える旅となりました。お疲れ様。
PS1:
「「国家の品格」を読んだあと、著者の藤原正彦氏は作家新田次郎氏の次男であることがわかりました。道理で理想が似ている筈です。新田次郎の小説「孤高の人」は若い時に読みましたが、時風に流されず自分の自分たるものを矜持して生きる男の姿を描いており感動を受けた覚えがあります。
PS2:
歴史とも品格とも関係ありませんが、レストランのショーでアイリッシュ・ダンスを見ました。足が綺麗でキビキビとよく動くし、迫力ありました。 暗いステージなのでこんな写真しかなく、その迫力が十分伝わらないかと思いますが、関心がある人が多いようなので掲載します。
また、アイルランドを代表する飲物といえばこれ。ギネス・ビールの工場へも行きました。前回紹介したアラン島の絶壁から下を覗く人の写真も面白いので追加します。
(1)先史時代:
エジプトのピラミッドと同じくらい古い歴史がある。イギリスのストーンヘンジのように巨石を使った遺跡や巨大古墳があるが、同時代の他の文明がそうであるように後続時代に継承されず、誰が何のために作ったのかなど不明で謎が多い。
ニューグレッジの古墳遺跡と玄室(世界遺産)
(2)ケルト人の遺跡。
ケルト人が流れついてこの地に定着した。独特のケルト模様が建物を飾っている。ケルト人は部族ごとの集団で、組織だった軍隊を作ることはなかった。そのため、外部からいろんな人種の侵略を受けることになる。
(3)原始キリスト教の遺跡。
この国にキリスト教を広げた聖パトリックたちは、元からあったケルト人の土着宗教(自然崇拝など日本と似通った面もある。)を融合しながら布教した。このため、他の地域に比べ、カトリックが大きな混乱なく広がった。
初期キリスト教会の遺跡(グレンダーロッホ)
初期キリスト教の特徴であるハイクロス(背の高い十字架) アダムとイブやメシヤを探しにゆく3博士など聖書の話が刻まれている。(ニューグレッジ)
(4)イギリスとの確執時代:
アイルランドはケルト人のあと、バイキングやノルマン人が侵入して来たが、いずれもケルト文化に溶け込んでいった。しかし、その後擡頭してきたイギリスとは緊張した関係になる。宗教上や政治上の理由でイギリスとは大きな確執に至る。この頃の建造物は海岸の要塞などが中心になる。
キルケニー城
海岸に立つ要塞ダンルース城
近年ベストセラーとなった「国家の品格」を読んだら、アイルランドのことが出ていました。著によると、アイルランドは飛び抜けて天才の輩出量が多いそうです。数学ではハミルトン、文学では、オスカー・ワイルド、ジョナサン・スウィフト、ウィリアム・イェツ・・・・・・綺羅星の如くです。「吸血鬼ドラキュラ」の著者ストーカなどは、このレベルから見れば褌担ぎです。ちなみに有名な「ガリバー旅行記」を書いたスウィフトは、アイルランド最高教会の最高司祭でもありました。日本でいえば、天台座主が「東海道中膝栗毛」を書いたようなものでしょうか。
そのアイルランドは人口わずか400万人、静岡県くらいの規模です。なぜそんな小国から天才が多く輩出するかというのが大きな疑問ですが、「国家の品格」によると、天才が多い国は、いずれも次の3条件を満たしているそうです。
●景色が良いこと。
●ひざまづく心があること。
●精神性を尊ぶ心があること。
確かにアイルランドは景色は抜群だし、旅行中の住民とのちょっとした触れ合いでも「おもてなしの心」はいつも感じられるし、これらの条件は十分に満たしている素晴らしい国だと感じました。
「国家の品格」の中で著者は、「日本は、やたらと論理・合理性に基づくグローバル化に走るのではなく、長年育んで来た『情緒と形(武士道精神)の文明』を世界に通じる『普遍的価値』として大事にし、品格ある国家を再構築すべきだ。」と説いています。
品格を持つ国家のモデルとして著者は、例えば現在のイギリスに近いものを考えているようです。日本の言うことに世界は誰も耳を傾けないのに、なぜ経済的にも軍事的にも大したことがないイギリスの言うことに世界は耳を傾けるのか? それは、イギリスの持つ「普遍的価値(議会制民主主義、シェイクスピア、ニュートンを生んだ土壌など)」に世界が敬意を表するからとしています。
ということで、アイルランドからの帰りにロンドンに寄りました。ロンドンに初めて行ったのは約30年前。その頃のイギリスは英国病と揶揄されるように経済のドン底にありました。ヤマネコストが頻発しロンドンは汚く公衆電話も半分は故障していたという有様に愕然とした思いがあります。
一方当時の日本は高度経済成長の真っただ中にあり、当時ロンドンを訪れた日本の財界人は一様に「もはや英国から学ぶものは何もない。」などと言い放っていましたし、私も同じように感じました。
その後ロンドンへは10回くらい行きましたが、その間にサッチャー改革により経済は見事に復活し、ロンドンは見るたびに綺麗に賑やかになって来ました。
今回のお目当ては、ロイヤル・アルバート・ホールで毎夏開催されるサマー・コンサート。一流アーティストの演奏が連日目白押しなのです。この夜の演奏は、パイプオルガン曲とサンサーンスの交響曲でした。巨大なパイプオルガンの演奏はド迫力あり、交響曲はこれまで聞いたことのないくらい柔らかい音でした。ホールは円形で内部は写真のように壮大にして荘厳な作りになっています。
面白いことに、サマーコンサートの期間は中央の座席が取り払われ、立ち見となります。少しでも多くの人たちに楽しんでもらおうという趣向なのでしょう。私は座席のある席を予約しましたが、立ち見の人たちは3時間あまりをじっと立って聞いていました。そんな辛抱をしてでも演奏を聴くという、これもすごい伝統だなと思いました。日本にも科学の粋を尽くした機能的に勝れたホールは多いけれど、このような格式と伝統は逆立ちしても望むことは出来ません。やはり、英国の品格というものなのでしょう。
ロイヤル・アルバート・ホール: 巨大な円形ホールで右側にパイプオルガンがある。中央席は夏期は立ち席となる。
今回は、ドラキュラが結ぶ縁から始まって品格を考える旅となりました。お疲れ様。
PS1:
「「国家の品格」を読んだあと、著者の藤原正彦氏は作家新田次郎氏の次男であることがわかりました。道理で理想が似ている筈です。新田次郎の小説「孤高の人」は若い時に読みましたが、時風に流されず自分の自分たるものを矜持して生きる男の姿を描いており感動を受けた覚えがあります。
PS2:
歴史とも品格とも関係ありませんが、レストランのショーでアイリッシュ・ダンスを見ました。足が綺麗でキビキビとよく動くし、迫力ありました。 暗いステージなのでこんな写真しかなく、その迫力が十分伝わらないかと思いますが、関心がある人が多いようなので掲載します。
また、アイルランドを代表する飲物といえばこれ。ギネス・ビールの工場へも行きました。前回紹介したアラン島の絶壁から下を覗く人の写真も面白いので追加します。