
夜が明けて/坂本スミ子(1971)
作詞:なかにし礼 作曲:筒美京平 編曲:筒美京平
なんていい歌なんだろう、なんて歌の上手い人なんだろう。数々の名曲が生まれた年ながら、その圧倒的な歌唱力に驚いた。また当時彼女はもう中年の女性でお世辞にも美人とは言い難かった、にも拘らずなんて色っぽい!と驚愕した。
時は流れ、そんな曲があった事も忘れた頃再び聴いたメロディーと歌詞。しかしそれは同じ曲であって同じ歌ではなかった。しかもその歌唱力と言ったら、歌手というにはいささか恥ずかしいレベルである。

オリジナル・アルバム バージョン
夜が明けて/戸川純 昭和享年(1989)より
作詞:なかにし礼 作曲:筒美京平 編曲:平沢進
にも拘らず、再びジワジワと心に入ってくる不思議なボーカル。歌手としては失敗。だが「ミュージシャン」として替わるもののない存在となった「戸川純」とは何なんだろう。
そしてそんな疑問も吹っ飛ばす、言葉なんか何になるのというパフォーマンスがここにある。

夜が明けて/戸川純+はにわオールスターズ(1990)
作詞:なかにし礼 作曲:筒美京平
またしてもズクズクと心を浸食する圧倒的で不思議なボーカル、それはとてもとても優しい。癒しの音楽だ。
カバー全盛、原曲を冒涜する作品で溢れかえっている昨今。ここまでやってくれとは言わないが、せめて心を込めて歌ってください。