ここで、「島全体を巡ってパフォスまで行くと、ユダヤ人の魔術師で、バルイエスという一人の偽預言者に出会った」(使徒13:6)という事態になります。パフォスは、キプロス島の首都でした。西南側にあります。島の東のサラミスから、西南のパフォスまで、島を巡っていったのです。ローマ帝国もここを利用し、属州の首都として機能させました。そこで、バルイエスという名の人物に出会います。邦訳でこの形容の順序が様々なのですが、ギリシア語の順序を示すと、「魔術師・偽預言者・ユダヤ人、その名はバルイエス」となります。ユダヤ人は副詞的な働きです。ユダヤ人という名称も、あまり好感の持てない用いられ方のように見えます。悪いレッテルであることが分かります。そしてバルイエスというのは、イエスの子、というような響きなので、ヘブライ的には、ヨシュアの子、というさして珍しくもない、ありがちな名称だと判断されます。「この男は、地方総督セルギウス・パウルスという賢明な人物と交際していた。総督はバルナバとサウロを招いて、神の言葉を聞こうとした」(使徒13:7)と、様々な説明が立て続けになされるので、読者を少々混乱させます。テオフィロへの献辞をもつこの言行録は、ローマとの関連を、なるべくローマを非難することにならないようにしながら、つけていきますから、ここでも総督の名前が記されています。現在の視点では記録的にこの人物ははっきりとはしないのですが、当時は分かったものなのでしょう。サウロが名乗るパウロと同じですが、区別するためなのかどうか、新共同訳では「パウルス」のように訳し分けています。他の邦訳はすべて「パウロ」としています。紀元前58年にこの島はローマ帝国の支配を受け始めます。当初キリキア州の一部であったのが、後にこの島だけで属州となりました。やはり配慮としてか、賢い人物である、とよけいな形容を加えています。バルナバとサウロには好意的であったようです。
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