フィンランド建築・デザイン雑記帳

フィンランドで建物から金属の盗難が多発。アールト建築も被害にあう。




散歩で良く通る公園の歩道に埋め込まれている「方位」。 
ある日、突如として真鍮の一部が剥がされ、盗まれていた。
地元の愛着のある公園で、これはショックだった。
僕は、公共のものを壊す、盗むなどの犯罪には、いつも最大級の怒りを感じる。 僕的には、この種の犯罪の犯人は ”市中引き回しの上 獄門” である。


友人と話していて、彼の家のすぐそばで、道路の側溝の蓋「グレーチング」がかなりの数、盗難にあったとの事。 
最近のテレビのニュースでも、道路の「ガードレール」の端に付いている金属板が、その部分だけかなりの数、盗難にあったという。
盗まれた部分は、ボルトで固定されているだけで、工具さえあれば簡単に持ち去ることができる。 
「グレーチング」にしろ「ガードレール」にしろ、犯人の目的は、金属スクラップとして売って金銭に換えることだという。
昔は、誰もが今よりずっと貧しかったから盗難は多かったが、この種の犯罪を見聞きすることは無かった。

金属、金属スクラップの盗難は、日本でばかりと思いきや近年、フィンランドでも多発しているという。
フィンランドの新聞 「ヘルシンギン・サノマット(Helsingin Sanomat)」が、建物から金属が盗難にあう事件が多発していると報道している。
「アルヴァー・アールト」の作品も例外ではないようだ。




Photo : Quoted from Helsingin Sanomat, 2021-11-3
被害にあった「アールト大学(旧ヘルシンキ工科大学の本館、Teknillisen korkeakoulun päärakennus)」の袖壁笠木部分が無残にも剥がされている。


フィンランドで金属の盗難件数がが再び増加している。
近年の金属スクラップ (主に銅)の高値が窃盗犯たちの動きを活発化させており、建築現場や公共建築が標的とされ、数万ユーロ相当が被害にあっているという。

アルヴァ・アールトが設計した建築が被害にあう事も多く、これまでに「文化の家 (Kulttuuritalo)、フィンランディア・ホール (Finlandiatalo)、アールト大学(旧ヘルシンキ工科大学の本館 Teknillisen korkeakoulun päärakennus)などが被害にあっている。
窃盗犯たちは、手摺や雨樋、手摺壁の笠木、軒下のスパンドレル(金属化粧板)、窓枠・・・など、盗めるもの、売れるものなら何でも持っていく」と、アルヴァ・アールト財団(Alvar Aalto Säätiö)の理事長 トミ・リンド(Tommi Lindh)氏は、イルタ・サノマット(Ilta-Sanoma)に語っている。

またリンド氏は 「アールトの建築が被害にあったのは、アールトの建築に対しての悪意とか標的にするという事ではなく、ただ、金属スクラップの価格が高くなっていることが理由である。
アールトのドアハンドルが盗難にあうことも多く、これは素材がブロンズ(銅と錫の合金)製だからだと思う」と述べている。

金属スクラップの窃盗は主に、ヘルシンキやヴァンター、エスポーなど国の主要な地域が存在する”県” 「ウーシマー(Uusimaa)」で発生しており、建築現場や倉庫などで被害が広がっている。
鉄道 「Ring Rail Link」の建設現場でも、大きな盗難があり、被害は教会にまで広がっている。
ヘルシンキの「ピヒラヤマキ教会 Pihlajamäen kirkko」 Esko Korhonen設計 1976」から大きな 「銅の銘板」が盗まれたと、教区牧師が語っている。

一連の盗難から、犯人の人物像を探るヒントも見えてくるという。
「その軌跡は、国境を越えて続いているようにみえる。 金属(主に銅)の売買や精錬は、フィンランド国内以外の場所の方が、彼らにとっては安全で容易だろう」と東ウーシマー警察署(Itä-Uusimaa poliisilaitos)のラウノ・ヤムサ(Rauno Jämsä)警部は推測する。

警察は、これ以上の被害を防ぐために 「夜中に歩いている不審な人物に気づいたら、すぐに112 (フィンランドでは警察も消防も電話は112)に通報してほしいと呼びかけている。
  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新の画像もっと見る

最近の「建築」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
2024年
2023年
2022年
2010年
2007年
人気記事