フィンランド建築・デザイン雑記帳

アルヴァ・アールト生誕125年と、伝記「 Nuori Alvar Aalto ( 若き日のアルヴァ・アールト )」。


Photo : Quoted from Alvar Aalto Foundation

生誕100年だった1998年には、国内をはじめ、世界中でアールトに関する展覧会が開かれ、作品集、CDなども多数出版された。
アールトが愛飲していたという、イタリアのキャンティ・ワイン「アールト記念ボトル」の発売で、1本に付き1マルカが「ヴィープリ図書館(Viipuri Library)」の修復工事費に寄付されたり、フィンランド造幣局からは、「アールト記念銀貨」が発行された。



Logo : Quoted from Alvar Aalto Foundation

2023年は、アルヴァ・アールト(Alvar Aalto 1898-1976年)生誕 125 年。
生誕100年の時と同様に、フィンランド国内では様々なイベントが行われているが、ユヴァスキュラ ( Jyväskylä )では「アールト2ミュージアム(Aalto2 museum)」が完成、5月27日、一般公開が開始された。

「アールト 2 ミュージアム 」は、アールト設計の 2 つの建物、「アルヴァ・アールト美術館 ( Alvar Aalto Museum. 1971〜74 ) 」 と 「中部フィンランド民族博物館 ( Folk Museum of Central Finland, 1959~62)」を接続する増築棟である。

2015 年から 2016 年にかけて行われた、「アールト 2 ミュージアム 」の国際コンペティションには、世界中から 700 近くの応募作品が集まり、 増築設計は、既存ミュージアムの改修も担当した A-Konsultit Architects が獲得した。

既存の「 アルヴァ・アールト美術館 」は、新しい「 アールト 2 ミュージアム 」 のコンセプトに合わせて構造修復、建物サービスのアップグレード、施設の改装のため 2 年間の休止期間を経て再開館した。
建築評論家たちは、「明るく広々とした増築部分は、ミュージアム相互のアクセスを改善し、共用のロビースペース、ミュージアムショップ、カフェが一体となって居心地の良い『リビングルーム』を形成している。」と感想を述べている。



Photo : Quoted from Alvar Aalto Foundation

アールトは生誕125年だが、「パイミオのサナトリウム ( Sanatorium Paimio 1928~33 ) 」は今年、創立90年の記念日を祝った。
1933 年に結核のサナトリウムとして完成し、90 年の歴史を持つ機能主義建築のランドマークは、存続へも紆余曲折があったが、一般公開が始まっている。





「 Nuori Alvar Aalto 」 (Aviador Kustannus, 2023)


タンペレの友人から、アールト生誕125年にあわせて2月に出版されたという、アルヴァ・アールトに関する本の紹介が届いた。
友人が紹介してくれた本は、「 Nuori Alvar Aalto 」 ( Aviador Kustannus, 2023 )、フィンランド語の本だがタイトルを日本語で書けば、「 若き日のアルヴァ・アールト」。
誕生から20代の学生時代までのアールトの人生を紹介した、伝記である。
著者は、ジャーナリストでノンフィクション作家の ユッカ・リティネン( Jukka Lyytinen、1969年生まれ )。

本は、まだ手にしていないが、120ページのわりと薄目の本のようである。
友人のメールから、この本を解説してみよう。

著者はアールトに関する本や記事は世界中で数多く書かれているが、それらはアールトの子供時代や青年期について十分に掘り下げていないことに気付いたという。
著者は、アールトの幼少期と十代の研究を開始した。
主な情報源はアールトについて書かれたヨーラン・シュルツ( Goran Schildt )の本だという。 
その本というのは、恐らく「Valkoinen pöytä (白い机)」の事だと思うが ?
著者は、シュルツや他の資料に基づいて、若きアールト、誕生から20代の学生までの人生をカバーし、成長の年月を描いた、この本が誕生したそうです。

若い頃のアルヴァ・アールトは、どんな人物だったか?
社会激動の時代、フィンランド大公国の抑圧の時代、1905 年のストライキと暴動、そして 学生時代、1918 年の内戦によるフィンランドの分断は、人格形成に密接に関係しているという。
若きアールトは、どのような影響を受けて建築家としてのキャリアを歩むことになったのか?
アールトは、その広範な作品制作の中で、建築の歴史、フィンランドの自然、文化的伝統の影響を受けてきたという。 著者は、この伝記の中で、アルヴァ・アールトの人生の基礎を築いた段階的な成長に焦点を当てている。

本は、フィンランド語だけだが、近日中の英語訳の出版も期待したい。
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