テン・テン・ツク・テン・テケ・テン・テン・テケ・ツク・テン・シャン・テン
『トレンディー美容院』
え〜、近頃の世の中と申しますと、
ひと昔前とは大分様子が変わって参りました。
美容院も近頃忙しくなったそうですな・・。
近頃、上と下と両方セットしてもらうお客さんが増えて来ましたようで・・。
こないだ、三丁目の美容院の偉い美容師の先生がこぼしてましたな、
近頃あまり忙しいもので、上と下のデザインをあべこべにしてしまって、
お客さんに怒られたそうで・・。
美容師 「困っちゃうのよねぇ〜。近頃、下のヘアーデザインの注文がうるさくて・・」
インターン 「そうなんです。形が平凡過ぎるとか、彼氏の好みじゃないとか・・、
あたしが彼氏の好みを知ってたら問題よねぇ〜!」
アシスタント 「中にはね、お向かいの奥さんよりも優雅に仕上げろだって・・、
どおしょ〜もない代物なのにネェ」
インターン 「こないだなんか、明日コンテストに出るからなんとかしてだって。
ほとんど生えてないのにネェ」
美容師 「あたしはね、そ〜ゆ〜とき、黙ってカツラを接着剤でくっつけちゃうの。
だって、無いよりましでしょ?ねぇ〜!」
アシスタント 「あ・・、いらっしゃいませ〜。ようこそ、どうぞこちらへ・・」
和服の着こなしの良い、美しい中年の御婦人が入って来ました・・。
婦人客 「あああ、あのォ・・・」
インターン 「ハイ・・?」
婦人客 「きき、きょうは、あのォ・・下の・・方の・・」
インターン 「はい。アンダーヘアでございますね。
かしこまりました。どうぞお楽にお掛けください」
婦人客 「あのォ・・、わわわたくし初めてなものですので・・」
美容師 「はい。ご安心くださいませ。当店自慢のシステムで、
初めての方も綺麗なヘアが直ぐに仕上がります」
婦人客 「あのォ・・、わわ、わたくし、まだまだ女盛りだと思いますのよ・・。
近頃、周りでこんなことが流行っているのを見てますと、
どうも気持ちが落ち着きませんの・・。
そこで思い切ってチャレンジしてみようかしら、と思いまして・・」
美容師 「えぇ、奥様はたいへんお若くていらっしゃいますわ。
ご自身のお美しさをもっともっと磨かれてごらんなさいまし・・」
インターン 「はい。では失礼して始めさせていただきます。
お召し物の前をはだけていただきます」
婦人客 「まあ、ちょ、ちょっと、そんなことやるの?えええっ・・!
まあああ、恥ずかし・・!」
インターン 「(目配せ)・・・」
アシスタント 「なに・・?」
インターン 「・・、(小声で)ハタキを持って来て・・」
アシスタント 「・・・?・・あ、(小声で)蜘蛛の巣・・はい」
婦人客 「あああ、そ、そんなに開らいたら・・
きゃあああ、恥ずかしいィ処が丸見え・・!」
美容師 「直ぐに慣れますわ・・。なにか別のことをお考えなさいまし、
あっと言う間に時間が経ちますわ・・」
インターン 「ハサミ・バリカン・安全剃刀」
アシスタント 「・・はい」
婦人客 「わ、わたし・・、こんな処で、こんな格好をしてるなんて・・、
きゃあああ・・・信じられないィ・・!
きゃあ・・・、ウィンドウの向こうは、ひひ人が歩いているわ・・!」
美容師 「ご安心くださいませ・・。
このウィンドウは、マジックミラーになってますの。
内側から外はよく見えますが、外側からは鏡になってまして、
店内は見えませんの・・」
インターン 「次、・・(小声で)刺青セット」
アシスタント 「やるんですか?・・はい」
インターン 「・・(小声で)あたし、失敗しないの」
婦人客 「で、でも・・、あんなに人が立ち止まって、
こちらを見てますわ・・!わたしとめめ・・目線が合ってる・・」
美容師 「いいぇ、あれは、みなさんそれぞれご自分の姿を鏡に映してるんですのよ・・」
婦人客 「で、でも・・、あああ、こっち見て、
かか・・カメラを構えて笑ってる・・!
わわ、わたし、こここんな格好をしてますのよ・・!
お願い!! 電気消して・・、かか・・カーテンを閉めてぇ〜!」
美容師 「大丈夫ですわ・・。あれは自分達の姿を写真に撮ろうとしてますの」
婦人客 「ああ・・、わたくし、こんな処で、
こんなあられもない格好をして・・・、
人様に見られて笑われているような感じだし・・、これ現実なのね・・。
スリル満点だわ!・・なんだか癖になりそう・・」
美容師 「もう直ぐ仕上がります」
インターン 「はい、お待たせいたしました。どうぞ鏡でご覧ください・・」
婦人客 「まあ・・、なんと美しい!
わたくしのヘアがこんなに美しく生まれ変わって、
アサガオの花まで咲いて!
夢のよう・・、まあ・・」
美容師 「ご満足いただけましたか?」
婦人客 「どうせなら、クリスマスリースの方がよかったかしら・・・」
お後がよろしいようで