一庵 (ひとつあん)

飛べないライター『いたっきい』の愚行をさらしています。

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現代のトワイライトゾーン (大慶園)

2007-05-24 | 旅行・見学

 

1995年(平成7年)11月22日、朝。

アラート待機(スクランブルに備え、武装を搭載し即座に離陸できる状態で待機すること)を終了した第6航空団第303飛行隊のF-15J、2機が小松基地を離陸した。

 
 第23飛行隊 F-15DJ #22-8055

目的は、ACM(空中戦)訓練
小松基地沖の日本海には、訓練に適した広大な演習空域、G空域がある。


事故が発生したのは、午前8時38分。

1対1の空中戦を行っているうち、1機(#62-8870)がミサイルの発射に有利なポジションを占めた。870号機のパイロットはスロットルレバーに取り付けられている兵装セレクターを、SRM(短射程ミサイル)モードにセット、ついに僚機(#52-8846)を近距離空対空ミサイル、AIM-9L“サイドワインダー”の射界に捕捉した。
870号機のパイロットはサイドワインダーが相手機を捉えていることを示すオーラルトーンを耳にしながら、勝利を宣言するかのようにサイドワインダー発射を意味する符丁をコールし、操縦桿を持つ右手親指で兵装投下スイッチを押した。

「フォックス・ツー」

次の瞬間、サイドワインダーのロケットモーターが点火、翼下のレールを滑り出してゆく。目標は、846号機のエンジンの排気熱。

そう、今朝までスクランブル待機していた2機には、キャプティプ弾(訓練弾)ではなく、実弾が搭載されていたのだ。さらに870号機のパイロットはマスター・アーム・スイッチがONになっていることに気付かず、兵装投下スイッチを押し込んでしまったのだった。

846号機のパイロットは自分に向かって接近するミサイルを確認、即座にベイルアウト。846号機は日本海に墜落した。
脱出したパイロットは海面にパラシュート降下し、付近にいた漁船に救助された。

 ◆◇◆◇

 

これが、世界で唯一といわれる空中戦によるF-15被撃墜事例です。

なお、この事件の影にはいくつものエピソードが残されています。
一例を挙げてみましょう。

1.火薬使用機器の納入業者
  サイドワインダーが無事に飛んだことと射出座席が無事に飛び出したことで、二重の喜びに沸いた。

2.サイドワインダーのシーカー(センサー)を製造したメーカー
  無事にシーカーが作動したことにホッと胸をなでおろした。

 ・・・・・・。

F-15は世界最高とうたわれる性能を持っていますが、価格も抜きん出て高いのがウィークポイント。そのため開発国であり、世界の警察と言ってはばからないアメリカ(F-15C/D/E)、オイルダラーにモノを言わせたサウジアラビア(F-15S)、国防のためにはなりふりかまっていられないイスラエル(F-15I)、アメリカが買えといったら買わざるを得ない日本(F-15J/DJ)でのみ運用されています。

 
 第5航空団第23飛行隊F-15DJ #12-8054

あ、そうそう忘れてた。
つい最近、「日本にあって我が国にないのは不愉快」とばかりに韓国が導入し、パイロットがGで気絶して墜落したり、爆撃訓練で農家のビニールハウスを吹き飛ばしたり、マンホールに落ちたりするなどセンセーショナルなデビューを果たしています。
また、近い将来シンガポールもF-15SGを導入する予定で、日本も最新型のF-15FXを新たに導入することになるかもしれません。

そんな高価なF-15イーグルですが、その能力は折り紙付きで、この世に存在する約1500機のF-15のうち、空中戦で撃墜された機体は上記の1機のみなのです。(対空砲火のまぐれ当たりで墜落した機体は数機ある)

その不名誉な機体、846号機はその後日本海から引き上げられ、調査の後スクラップ業者によって解体されることになりました。。。

 

が、実は今でもあるらしいんです。
それも、なぜか千葉県市川市の某ゲームセンターに。。。
というわけで、見に行ってきました。

目的地に到着し、まずクルマを駐車場に停めmうおおおお!ホンマにあった!

※以下の写真は従業員の方に許可をいただいたうえで撮らせていただきました。なお、コーションテープ内には立ち入っておりません。

 
 立体駐車場の片隅で発見したコクピット周辺部

本当にありました。
それは駐車場に展示、いや、転がっていました。

わかりますか?
この部分ですよ↓ (上写真と下写真は機首の方向が反対です)

 
 第6航空団第303飛行隊F-15J #02-8922

しかし、コクピット側面に書かれていたはずの機体番号「846」は黒いペンキで塗りつぶされ、その上にも赤いラインがひかれているなど、ひどい扱われようです。

 

また下部を覆っている外板もすべて剥がされていて、かつての精悍なイメージは微塵もありません。
さっそくコクピットを覗いてみます。

 
 射出座席のレール、前面のキャノピーはそのまま残っている

 
 計器盤、スイッチ類も原型を保っていた

操縦桿の上半分がなくなっているのが残念ですが、計器盤はそのまま残っています。計器盤の左側は兵装関係(マスター・アーム・スイッチもしっかり見えます)、中央は機体の姿勢、右側はエンジン関係のスイッチとメーター類が並びます。
スロットルレバーに付けられたHOTASのスイッチ類もそのまま、パイロットの左側にあるレーダー関係の機器類、右側にある航法関係の機器類もほぼそのままです。

計器盤の上に載っているはずのHUD(ヘッドアップ・ディスプレイ)もなくなっていますが、キャノピーに全く損傷がないことから、墜落時の衝撃で壊れたものではないと思います。おそらく引き上げられたあと、パクられ取り外されたのでしょう。

現役のF-15Jのコクピットはこちら↓

 
 飛行開発実験団 F-15J #02-8914 のコクピット

操縦桿は前後には動きますが、左右は全く動かず、スロットルレバーも動かないとのこと(他のHPの情報より)。スロットルの位置は全開。撃墜された際にアフターバーナ点火状態だったとは考えにくい(サイドワインダーは熱を追いかけるミサイルなので、アフターバーナを使っているとますます食いつかれる)ので、これも引き上げられた後で動かされたと考えるほうが無難です。

 
 アフターバーナ全開で上昇するF-15DJ #22-8055

 
 機器類に書かれた製造年月日がリアルさを高める

 
 液体酸素を気体にコンバートする機械が見えた
 ここで作られた酸素はパイロットの酸素マスクに送られる

F-15のコクピット後ろには、被撃墜機のエンジン、F100-IHI-100のエンジン・モジュールが転がっていました。

 
 手前がインテイク側

チタンとニッケル合金でできたF100エンジンは、一度海に沈んだとは思えないほどきれい。ここから見ると、整備すれば再び使えそうに見えます。

 
 ノズル側

しかし後ろから見るとボコボコです。
手前に見える配管は、燃料の供給ライン。本来はこの後ろに燃焼室があり、さらにアフターバーナ、ノズルと続くのです。

 
 エンジンについていたシリアル
 F100-IHI-100の「IHI」とは、石川島播磨重工のこと

それにしても、この壊れ方はミサイルの弾頭の爆発によるものではないように思えます。エンジン全体にわたって一方向から圧力を受けたような感じなのです。機首部分も下部のみが損傷していることから、機体はほぼ水平に海に叩きつけられたのではないかと思いました。

つまり、ミサイルが命中していない可能性が高いのではないか?ということです。
公式の発表では「誤射により撃墜」とされているだけで、命中したかどうかまでは触れていません。AIM-9Lの弾頭重量は9.5kgもあり、これが機体を直撃して炸裂していれば、いくら頑丈なF-15といえども木っ端微塵になっているはずです。
そのことから、いたっきいは次のうちどれかが正しいと思います。

1.機体のどこかにミサイルが命中したが、弾頭が不発だった。
2.ミサイルは命中せず、近接信管が作動して機体下面、もしくは翼を破壊した。
3.ミサイルは誘導されなかったが、パイロットが危険を感じて脱出したため、無人になった機体はそのまま墜落した。

となると、サイドワインダーのシーカーを造った業者やミサイルに火薬を詰めた業者は、本当は喜べない状況だったのかもしれません。

 

それはさておき。

現在でも世界最強の戦闘機のひとつとされているF-15、しかも世界で唯一の撃墜されたF-15が、なぜこんなところにあるのでしょうか?
しかもエンジンまで。。。(ここには1基しかありませんでしたが、この施設にはつい最近までもう1基のF100エンジンもありました。どなたかそのエンジンの消息をご存知ですか?)
仮にスクラップ業者から購入したにせよ、再利用可能なレアメタルが多く使われている戦闘機とエンジンは相当高価なはず。それを買い取って、展示するでもなく放置している意味が全くわかりません。。。
・・・おかげでこうして見ることができたわけですが・・・

 

 ◆◇◆◇

なお、この不思議な施設の名は大慶園(千葉県市川市)。
巨大なゲームセンター・・・いや、もはやここまでいくと小さな遊園地といえるかもしれません。
簡単に施設を紹介しましょう。 

まずは入場券を買って中に入ります。

 
 入場料100円

買ったチケットを園内の自販機に差し込むと、ジュースが出てくる仕組みになっており、事実上入場料はかかりません。

園内(屋内)はご覧の通り。

 
 スリックカートとゲームコーナー

 
 クレーンゲームもものすごい数

その他、野球のできるグラウンドやバッティングセンター、カラオケ、ダーツ、ビリヤードのできる場所があります。

屋外にはヘリやランボルギーニ、見たこともないバスのようなキャンピングカー、モーターボートなどが展示無造作に置かれているほか、ジェットエンジンのカットモデルなど、なんだかコンセプトのよくわからないものがここそこにあります。
ガレージにもポルシェやランボルギーニ、フェラーリ(F40もあった!)などが入っていました。

 
 ヘリポート アグスタAS350など、ヘリ2機を所有

 
 ジェットエンジンのカットモデル

その常軌を逸した、コンセプトのよくわからない収集っぷりに圧倒されます。とにかくオーナーは金持ち、それも半端な金持ちじゃありません。きっと撃墜されたF-15も、珍しいという、ただそれだけの理由で買い取ったのでしょう。。。


「世界で唯一撃墜されたF-15」を見ることができたのはいいのですが、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いたっきい自身も大慶園に撃墜された気分です。

 

※2009/12/7追記
写真について、「テープ内に入って撮るな」とのご指摘をいただいていますが、上記の写真については大慶園の方に確認した上で、テープ内には立ち入らず撮らせていただきました。アップで写っている銘板やOBOGS(機上酸素発生装置)などもテープ外からの撮影(その後トリミング)です。

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28 コメント

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千葉のパラダイス (ケイまさ)
2007-05-24 10:49:18
ここにナイトスクープは来たのでしょうか?

さあ、ガレージへエンブレム取りにいくべ。
これは… (どんちゃん)
2007-05-24 12:53:29
結構珍しいよね
正に放置って感じが、イイかも…(笑)
んでも、そうゆうネタを探してくるいたっきぃさんの方に驚きを隠せませんが…(爆)
ほーーー! (カプリ)
2007-05-24 21:21:18
お久しぶりです!!
あっここ若かれし頃に行ったことありますよ。
フェラーリとかもなかったですか??
ゲームセンターも覚えてます!!
いたっきーさん本当に飛行機好きなんですね。
現物みられてよかったですね。
行動力すごいな~とは前々から思っていたけど即行動するところ男らしくていいですね。
改善されてますね (とくたろ)
2007-05-24 21:25:22
写真を拝見する限りかなり展示状態は改善されてますねえ。以前は道端に転がってたそうですから・・・。

しかし命中前にベイルアウトってして良いんでしょうか?当時新聞にはエレベータの片方をすっ飛ばされたって書いていたような気がします。
千葉の「よろいモーテル」 (Unknown)
2007-05-26 00:14:39
ですな・・・。
ゲームコーナーと飛行機のEg・・・
年代と規模は違えど・・・
やっとコメントできたw (いたっきい)
2007-06-07 03:25:08
■ケイまささん

まさにナイトスクープものです、ここは。
ぜひ小枝探偵の派遣をお願いします。
エンブレムとっちゃダメですよw
そういえば、トヨタ2000GTのエンブレムは七宝焼なので、剥離剤をかけたら溶けてしまうとか。。。
関係ないか。

■どんちゃん

かなり珍しいですよ。撃墜されたイーグルを見られるのは、世界でもここだけでしょう。
実は、撃墜されて半年後くらいからここにあったんです。
知ってはいたんですが、ずっと来る機会が無くて。。。
展示というよりは放置されていただけですので、状態が悪化するのは必至。その前にぜひ見ておこうと思ったんです。

■カプリさん

お、さすがに地元?の方ですねえ。やっぱり知ってましたか。ここを知らん千葉県民はモグリだと誰かが言ってました。フェラーリ、いましたよ。F40と、よく見えなかったけどF355もあったかな?
行動力は、あるようなないような。。。もっとあれば、関東に来てから5年も先送りにしなかったはずなんですが。。。
たまに衝動・・・というか発作で行動します。

■とくたろさん

確かに改善されてはいます。。。
以前に転がされていた道端(施設南側)には、今もマルヨンの前部胴体が輪切りになって放置されていました。ここにイーグルを置いておくと、いたずらされたえい見物に来た航空ファンが路駐するので動かしたんだと思います。
せっかくなら、きれいにして屋内に展示してほしいものです。

撃墜の中には、敵機を追い込んで地上に激突させたり、パイロットを絶望させてベイルアウトさせたものが結構あります。今のミサイルは命中精度も高いですし、通常は2発連続して発射するので、ミサイルが飛んでくるのを見て即座に飛び出すのは賢明な選択だと思います。

エレベーターですか、なるほど。直撃して信管が作動しなかったか、近接信管でエレベーターを吹き飛ばしたかってところでしょうか。
これ、機体を捨てなかったら帰投できたかもしれませんね。イスラエルでは、主翼が片方ほぼなくなっても帰ってきた例がありますし。。。

■unknownさん(二軍Tかな?)

よろいモーテルの規模を300倍くらいにしたら、この施設に追いつくかと。
よろいにあった91式航空魚雷、を見に呉に行きたいもんです。たしか探照灯や零戦の栄エンジンもあったような。。。
マニアは遠くからあれを見に来てたようですよ。自転車で行ける距離にあると、かえって有難みがわからないもんですね。。。
Unknown (ichirou)
2007-09-27 21:38:48
夏期休暇中…暇そうな子供を連れて大慶園、行って来ました(^^;)

ん~…ここに何でこんな施設が??
富豪さん所有・趣味の施設と解釈!
お陰様でお金を随分と使い込んでしまった。
お金のある人にはお金が自然と集まるもんですね。
コーションテープ (戦闘機マニア)
2007-12-20 02:02:56
戦闘機には興味ありますが
テープ内に入って撮影しては問題ではないでしょうか?
オーナーさんが見たら…やはりルール・マナーは一人一人持っていないと
世の中腐っていく一方ですから…
コーションテープ内には (いたっきい)
2007-12-26 03:35:38
■戦闘機マニアさま

ご指摘、ありがとうございます。
説明が不足しておりました。

現地に行ったとき、ちょうど近くにいらっしゃった従業員の方に撮ってもいいか聞いたうえで撮らせていただいています。テープの意味は承知していますので、当然テープ内に立ち入っての撮影は一切していません。ただ、カメラをテープの内側に突っ込んで撮った写真はあります。

テープが機体のすぐそばですので、デジカメの3倍程度の光学ズームでもこれらの写真は撮れます。銘盤やLOXなどは機体側面、ほんの数十センチ先に見えます。また、掲載した写真は近づいて見えるようトリミングもしています。

紛らわしいですが、テープ内に入らずとも実際にこういう写真は撮れます。ただ、この機体の置き場所は何度か変わっていますので(以前は道路沿いにテープもなく置かれていた)今この状態で写真が撮れるかは不明です。
今日も仕事なのに (ねこにゃ)
2008-01-08 04:09:35
久しぶりに一庵を見ておりましたら、【大慶園】ってなんか聞いた事があるカモ・・。ブログを辿っていってやっと思い出しました。
まだラブラブだった頃に彼氏の学生時代の思い出先として案内された場所です。(でも連れていっってもらった時私は既に●●才だったのでちょっと微妙な感じでしたが)なんだか懐かしくなっちゃいました。
こんなに有名?な場所だったんですね。行っておいて良かったです! 

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