『ソロモン王の時代,王 所有のタルシシュの船団は3年に1度の航海をして,「金,銀,象牙,それにさるや,くじゃく」などの船荷を運んで来ました』。
(列王第一 10:22)
「王のものである船がヒラムの僕たちを乗せてタルシシュへ行っていたからである。三年に一度,タルシシュの船が金,銀,象牙,それにさるや,くじゃくを載せて来るのであった」。
(歴代第二9:21)
ソロモンの船の中にはオフィル(紅海の地域にあったと思われる; 列王第一 9:26~28)
にまで旅したものもありましたが,歴代第二 9章21節は,くじゃくを含む上記の商品の運搬に関連して,船がタルシシュへ行っていた。
「ソロモン王はまた,エドム地方の紅海の岸のエロトに近いエツヨン・ゲベルで船団をつくった。ヒラムは自分の家来で経験を積んだ船乗りたちをその船団に派遣し,
ソロモンの家来たちと共に働かせた。船団はオフィルへ行き,そこで14トン(四百二十タラント)の金を手に入れ,ソロモン王の所に運んだ」。
(列王第一 9:26~28)
タルシシュは聖書に登場する地名である。本来の語義は「精錬所」を意味するといわれている。現在のトルコ地中海岸のタルススとする説とスペイン南部のタルテッソスとする二つの説がある。
ヤペテの子孫ヤワンの子孫であるタルシシュ族が居住した場所である。タルシシュは銀、金、鉄、錫、鉛などの産地、加工地として広く知れ渡っていた。
ソロモン王はフェニキヤの都市国家ツロを仲介としてタルシシュと交易をしていた。
ツロは「タルシシュの娘」と言われるほど結びつきが強かった。この交易を目的とした遠洋航海のために大型の船が建設されて、大規模な商船隊が組まれ「タルシシュ船団」と称された。
「タルシシュ船団」は「大掛かりな交易船団」をさす慣用表現になった。預言者イザヤは神の優越性が「タルシシュのすべての船と望ましいすべての小船とに臨む」。
また、預言者ヨナはニネヴェで宣教をせよとの神の召命に逆らってタルシシュ行きの船に乗り込み、大嵐に遭った。
今日,オフィルのあった正確な位置を確定することはできません。この点に関し想定されている幾つかの場所のうち,三つが特に注目されています。
すなわち,インド,アラビア,およびアフリカ北東部です。これらはいずれも,紅海の東側の入り江の湾頭に位置するエツヨン・ゲベルから出発する船団の到達可能な範囲内にあります。
インドについて言えば,ソロモンとヒラムが船で持ち帰った物品はこの地で入手できるものばかりでした。
ヨセフスやヒエロニムスの言葉,およびセプトゥアギンタ訳もオフィルがインドにあったことの裏付けとして引用しようと思えば,それも可能です。
一方,オフィルが紅海南端,アフリカ北東部のソマリア付近にあったと主張する人たちは,輸入された全品目を供給できた所として,この地のほうがインドよりずっと近かったという点を指摘します。
しかし,オフィルはアラビア南西部のイエメン付近の一地域だった,という結論を支持する意見が有力のようです。
この見解の根拠は,ヨクタンの子オフィルの子孫はシェバの子孫やハビラの子孫など,自分と兄弟関係にある部族と一緒にアラビア半島に定住した,という前提に基づいています。
シェバの女王(シバの女王)
ソロモンが多くの建築事業を完成させた後,「神(ヤハウェ,エホバ)のみ名に関連してソロモンのうわさを」聞いた「シェバの女王」が訪ねてきました。
聖書に名を挙げられていないこの女王は,「非常に見事な随行員と,バルサム油や非常に多くの金および宝石を運ぶらくだを伴って」エルサレムに上って来ました。
「ときに,シェバの女王が,主(神)の名に関連してソロモンの名声を伝え聞き,難問をもって彼をためそうとして,やって来た。彼女は,非常に大ぜいの有力者たちを率い,らくだにバルサム油と,非常に多くの金および宝石を載せて,エルサレムにやって来た。彼女はソロモンのところに来ると,心にあったすべてのことを彼に質問した」。
(列王第一10:1,2)
その旅の様式と携えて来た贈り物の種類とは,彼女が南西アラビアのシェバ王国から来たことを暗示しています。
この点はイエスの言われた事柄にも示されています。イエスは,彼女が「南の女王」であり,「地の果てから来た」と述べています。
(マタイ12:42)
エルサレムの人々の観点からすると,彼女はまさしく当時知られていた世界の遠いところから来たと言うことができました。
「タルシシュと島々の王たちは貢ぎ物を納める。シェバとセバの王たちは贈り物を差し出す」。
(詩編72:10)
「私はあなた方の息子や娘たちをユダの人々に売り渡す。彼らは,その息子や娘たちをシェバの人たち,遠くの国民に売り渡す。神(エホバ,ヤハウェ)自身がそう語ったのである」。
(ヨエル3:8)
マリブは,紅海の北岸にあるエツヨン・ゲベルから約1,900㌔も離れたところにあります。
イエスはシェバの女王について,彼女が「ソロモンの知恵を聞くために」来たと言われました。
(ルカ 11:31)
彼女は,ソロモンの語ったこと,ソロモンの王国の繁栄について自分の見たこと,属僚を組織するソロモンの賢明な方法に感銘を受けました。
彼女は,ソロモンの知恵を聞くことができる王の僕たちを幸いであるとし,神がソロモンを王座に就かせたことをほめたたえました。
「彼女は極めて大勢の随員を伴い,香料,非常に多くの金,宝石をらくだに積んでエルサレムに来た。ソロモンのところに来ると,彼女はあらかじめ考えておいたすべての質問を浴びせたが,
ソロモンはそのすべてに解答を与えた。王に分からない事,答えられない事は何一つなかった。シェバの女王は,ソロモンの知恵と彼の建てた宮殿を目の当たりにし,また食卓の料理,居並ぶ彼の家臣,丁重にもてなす給仕たちとその装い,献酌官,それに王が主の神殿でささげる焼き尽くす献げ物を見て,息も止まるような思いであった。女王は王に言った。
『わたしが国で,あなたの御事績とあなたのお知恵について聞いていたことは,本当のことでした。わたしは,ここに来て,自分の目で見るまでは,そのことを信じてはいませんでした。
しかし,わたしに知らされていたことはその半分にも及ばず,お知恵と富はうわさに聞いていたことをはるかに超えています。あなたの臣民はなんと幸せなことでしょう。
いつもあなたの前に立ってあなたのお知恵に接している家臣たちはなんと幸せなことでしょう。あなたをイスラエルの王位につけることをお望みになったあなたの神,主はたたえられますように。
主(神)はとこしえにイスラエルを愛し,あなたを王とし,公正と正義を行わせられるからです』」。
(列王第一10:2~9)
『さて,シェバの女王はソロモンの名声について聞いた。それで彼女はソロモンを難問で試そうとしてエルサレムにやって来た。彼女は大勢の従者を率い,ラクダにバルサム油や非常に多くの金と宝石を載せてきた。そしてソロモンの所に来て,知りたいと思っていたことを全部尋ねた。ソロモンは全ての質問に答えた。ソロモンにとって難しくて分からないことは一つもなく,全てを説明した。
シェバの女王は,ソロモンの知恵や建てた家を目にして,また,食卓の食べ物,家来たちが座っている様子,給仕人たちの食卓での応対や服装,王に仕える献酌人たちやその服装,王が神(ヤハウェ,エホバ)の家でいつも捧げる全焼の犠牲を見て,息をのんだ。彼女は王に言った。「私が自分の国であなたの功績と知恵について聞いたことは,本当でした。 私は来て,この目で見るまでは,信じていませんでした。私はあなたの豊かな知恵の半分も知らされていませんでした。あなたは私が聞いていたことをはるかに超えた方です。 あなたの民は幸せです。
いつもあなたの前に立って,あなたの知恵を聞いている家来たちも幸せです。あなたの神(ヤハウェ,エホバ)が賛美されますように。神はあなたのことを喜ばれ,ご自分の王座につかせて,あなたを神(エホバ,ヤハウェ)の代理の王にしました。神はイスラエルを愛しているので,イスラエルを永続させるため,あなたに公正で正しいことを行わせようと,あなたをイスラエルの王に任命したのです」。それから彼女は,4トン(百二十タラント)の金と多量のバルサム油と宝石を王に贈った。シェバの女王がソロモン王に贈ったほどのバルサム油が届けられることは,二度となかった』。
(歴代第二 9:1~9)
キリストは,この女性が裁きの際に立ち上がり,1世紀の世代の人々を罪に定めると述べました。
「南の女王も裁きの際にこの世代と共に復活し,この世代を断罪します。女王はソロモンの知恵を聞くために地の果てから来たからです。しかし見なさい,ソロモンを上回る者がここにいます」。
(マタイ12:42)
「南の国の女王は,裁きの時,今の時代の者たちと一緒に立ち上がり,彼らを罪に定めるであろう。この女王はソロモンの知恵を聞くために,地の果てから来たからである。ここに,ソロモンにまさるものがある」。
(ルカ 11:31)
彼女はソロモンの知恵を聞くために困難な旅をしてきましたが,不信仰なユダヤ人は,神(ヤハウェ,エホバ)の僕であると主張していながら,
イエスというソロモン以上の方がそばにいたのに,そのイエスに注意を払いませんでした。