あなたの耳 ― すばらしい伝達器官 Ⅱ
中耳 ― 機械工学の夢
中耳の仕事は,音波の音響的振動を機械的振動に変え,それを内耳に伝えることです。豆粒大のこの部屋で生じる事柄は,まさしく機械工学の夢です。
鼓膜は,大きな音の場合には非常に大きく動くと考えられているのに反して,実際には,ごくわずかしか動きません。そうしたわずかな動きでは,液体の充満した内耳の反応を引き起こすことはできませんが,その問題を克服する方法にも,耳の造りの精巧さがうかがえます。
中耳の三つの小骨の連動は微妙であるだけでなく,効果的でもあります。てこの原理で機能し,入ってくる力をすべて約30%増幅させます。
さらに,鼓膜の面積は,あぶみ骨底の面積の約20倍にもなるので,鼓膜に加えられた力は前庭窓にあるずっと狭い場所に集中します。これら二つの要素が相まって,振動する鼓膜に加えられる圧力は増幅され,前庭窓で25ないし30倍にもなります。
それだけあれば,蝸牛内の液体を動かし始めることができます。
あなたは,かぜが聴覚に影響を与える場合があることに気づいていますか。鼓膜が正しく機能するためには,鼓膜の両側の気圧が等しくなければならないからです。
普通は,中耳と咽頭とを結ぶ耳管と呼ばれる細い管によってその状態が保たれています。この管は人が何かを飲み込む度に開き,高くなった中耳内の圧力を軽減します。
内耳 ― 耳の重要な部分
前庭窓の次には内耳があります。半規官と呼ばれ,互いに直角の位置関係を占める三つの輪のおかげで,わたしたちはバランスおよび共同作用を保つことができます。しかし,音を聞くという仕事が本格的に始まるのは,蝸牛の内部においてです。
蝸牛(ギリシャ語のコクリアス,つまりカタツムリから来ている)は基本的に,液体の充満した三つの導管,つまり管の束で,カタツムリの殻のようにとぐろを巻いています。
導管のうちの2本は,その螺旋の先端でつながっています。その螺旋状器官の基部にある前庭窓は,あぶみ骨の働きで始動すると,ピストンのようにわずかに内側に動いたり外側に動いたりし,
液体の中で水圧による圧力波を引き起こします。その波が先端まで行って戻ってくる時に,2本の導管を分けている壁を振動させます。
基底膜として知られるそれらの壁の一つに沿って,極めて繊細なコルチ器があります。その名は,1851年に聴覚のこの真の中枢を発見したアルフォンソ・コルチにちなんで付けられました。
その重要な部分を成しているのは,およそ1万5,000本以上もある,幾列にも並んだ感覚有毛細胞です。幾千もの神経繊維が,それらの有毛細胞から,音の周波数,強度,音色などに関する情報を脳に伝えます。聴覚が生じるのはこの脳です。
謎は解かれた へ続く>>>