一歩先の経済展望

国内と世界の経済動向の一歩先を展望します

入念に組み立てられた植田総裁発言、バランス重視の裏に日銀の本音

2024-08-23 15:17:52 | 経済

 マーケットが注目していた23日の衆参両院の閉会中審査における植田和男・日銀総裁の発言は、過度の市場変動が繰り返されないように配慮する慎重な姿勢が目立った。不安定な金融・資本市場が経済・物価に与える影響について緊張感を持って注視するとしつつ、日銀の経済・物価見通しが実現する確度が高まれば、金融緩和の調整を行う姿勢は変わらないと述べた。市場心理が落ち着けば、次の利上げの準備に入る可能性があることを示し、市場の一部にあるかなり長い期間にわたる利上げ検討なし、という思惑も打ち消した格好だ。

 

 <内田副総裁と違いない、植田総裁の発言に反応した市場>

 午前の衆院財務金融委員会での植田総裁の発言では、一部のメディアが「見通しの確度が高まっていくことが確認できたら、金融緩和の度合いを調整していくという基本的な姿勢に変わりはない」との部分に比重を置いて報道し、市場参加者の一部から「植田総裁の発言は予想以上にタカ派的」という声が出ていた。

 だが、午後の参院財政金融委員会で、内田眞一副総裁が8月7日の講演で「金融資本市場が不安定な状況で、利上げをすることはない」と述べた発言との関連を質問され、植田総裁が「私と内田副総裁に違いはない」と述べたことで市場に安心感が広がり、日経平均株価は前日比153円26銭高の3万8364円27銭で取引を終えた。

 午後の質疑では「現在も市場はやや不安定な動きをしている」と述べるなど、植田総裁の発言はバランスを取りつつ、短期間のうちに利上げの検討や準備に入るのではないかとの思惑を打ち消すような配慮が見られた。

 

 <維持した利上げへの構え、背景に円安再燃の警戒も>

 その一方、午前の質疑で植田総裁は、日銀の経済・物価見通しに沿って現実の日本経済が進展していけば、展望リポートの見通し期間の後半を念頭に「そういう時期に金融政策は中立的な状態になっている」と言明。7月31日の会見で示した徐々に利上げしていくとの見解をあらためて示していた。

 市場の一部には、年内だけでなく年明けもしばらくは、現行の金融政策が維持されて利上げ着手はかなり先との見通しも浮上していた。もし、この見方が市場で一定のパワーを持つようになれば、161円台から145円前後まで修正されたドル/円が、再び円安方向に動き出すリスクを日銀は警戒したのではないか、と筆者には映った。

 

 <パウエル講演後の市場動向、日銀の政策に影響>

 23日に行われるジャクソンホール会議でのパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長の講演で、今後の利下げのパスがどこまで明らかになり、それをマーケットがどのように消化するのか。

 米国発の市場変動の行方によって、日銀の利上げパスのイメージも大きく動くだろう。植田総裁の発言を消化したマーケットは、パウエル議長の講演内容を織り込んで新たな均衡点を模索することになる。

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パウエル議長講演、注目される4つのポイント ドル/円と日米株価に波及も 

2024-08-22 12:09:05 | 経済

 米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長が23日、米カンザスシティ地区連銀主催の国際経済シンポジウム・ジャクソンホール会議で講演する。市場の注目点は、9月の米連邦公開市場委員会(FOМC)での利下げやその幅、年内の利下げ幅などについて、どのように示唆するのかということに集中している。マーケットは年内にFRBが100ベーシスポイント(bp)の利下げを実施すると織り込んでおり、パウエル議長の発言次第でドル/円が大きく振れたり、株価が大幅に変動する可能性もある。

 もし、市場の利下げ期待に「冷水」をかけるように慎重な利下げを姿勢を示した場合、ドル/円が円安方向に動く一方、米株が下落するリスクを指摘する声も出ており、日本株にとっては複雑な反応ルートをたどることもありそうだ。

 

 <9月利下げを予告したFOМC議事要旨>

 今年のジャクソンホール会議では「金融政策の有効性と波及経路の再評価」が主要なテーマとなっており、23日にパウエル議長が基調講演を行う。

 市場参加者の見方を総合すると、1)9月利下げを予告するのか、2)9月利下げを実施した場合の幅、3)年内に100bp利下げするという市場の見方に対する考え方、4)来年以降も見据えた利下げパスの行方──などについて、何らかのヒントを与えるような発言をするのかどうかが大きな関心事になっている。

 FRBが21日に公表した7月30─31日のFOMC議事要旨では、経済指標がほぼ予想通りになるという前提で、当局者の「大多数」が、9月会合で「金融政策を緩和することが適切となる公算が大きい」という見解を示していた、と指摘。1)の9月利下げに関して先行して「予告」しており、パウエル議長もその認識を追認する可能性が高いとみられている。

 ただ、2)-4)については、幅広いケースが予想されている。市場は9月、11月、12月の年内3回のFOМCで合計100bpの利下げをすでに織り込んでいる。

 これに対して、まず、パウエル議長が「今後の経済データ次第」と発言し、何らの示唆も与えない可能性がまず考えられる。そのケースでは、ドル/円も米株も大きな変動はなく、市場はこのイベントを「織り込んだ」という反応を示すだろう。

 

 <失業率上昇、注目されるパウエル議長の評価>

 次に2)については、50bpの利下げの可能性を否定するのではないかと筆者は予想する。市場の織り込みも9月は25bpが主流で、その場合の反応は限定的と考える。

 3)については、年内3回のFOМCのどこかで50bpの利下げの可能性があることをにおわせる可能性について検討してみたい。その根拠として、7月雇用統計における失業率の上昇を挙げた場合、市場は米金利低下、ドル安・円高、米株高で反応する展開がありえる。

 FRBの2024年の失業率見通しは4.0%であり、7月の4.3%はすでにその見通しを上回っている。パウエル議長が失業率の非連続的な上昇の可能性が高まっていると指摘した場合、市場は年内のどこかで50bpの利下げがあると受け取るのではないか。

 このケースで円高の幅が大きく、スピードも速い場合は米株が上昇したとしても、日本株は下落する可能性がありそうだ。

 

 <米利下げパスの行方>

 ただ、筆者は経済データ次第との発言で対応するだろうとみている。もし、年内の100bpの利下げという想定が「過大」とパウエル議長が指摘した場合、ドル/円はドル高・円安に動き、米株は下落するだろう。日本株は円安を支えに、米株下落よりは小幅の下落でとどまる公算が大きいと考える。だが、大幅に円安となった場合は、日本株が上昇する余地もありそうだ。

 4)の利下げパスに関する言及や示唆は、今回の講演では回避されるとみている。だが、何らかの言及があった時は、その内容に応じて市場が大きく変動する展開もゼロではないと予想する。

 

 <日本株への影響、ドル/円の変化幅とスピードが左右>

 上記で指摘したように、パウエル議長の発言で米市場が変動した場合、日本株への波及はドル/円の変動幅とスピード、米株の変動幅を組み合わせた結果になるのではないか。

 少し、俯瞰した見方をすれば、8月上旬に発生した米景気失速懸念を起点にした非常に強いリスクオフ心理に基づく、日米株価の大幅下落と急速なドル安・円高という展開が再現される可能性は低く、米経済のソフトランディングを前提にしたマーケットの反応が起きると予想する。

 ジャクソンホール会議を経て市場変動率(ボラティリティ)が低下していく傾向が確認できれば、日銀の金融政策判断にも、より幅広い選択肢を考慮する余裕がいずれ出てくるのではないかと考えている。

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円安進行でも輸出数量減だった7月貿易収支、自民党に危機感はあるのか

2024-08-21 13:04:59 | 経済

 財務省が21日に発表した7月貿易収支は6218億円の赤字だった。ドル/円が前年同月比12.3%円安の159.77円だったにもかかわらず、2カ月ぶりの貿易赤字になったのは日本の産業が「稼ぐ力」を弱めているためだ。そのことを端的に示すのが輸出数量の減少傾向であり、今年に入って2月から7月まで6カ月連続で輸出数量が前年比マイナスに転落している。

 9月12日に告示される自民党総裁選への立候補者は、円安でも輸出が増えない現状をどのように認識し、日本の稼ぐ力をどのように復活させるべきか具体策を示してほしい。弱体化する日本企業の国際競争力に言及する候補者がいないなら、自民党総裁選はただの「空騒ぎ」に終始してしまうだろう。

 

 <12%円安で輸出数量は5%減、明白な日本経済の構造的問題点>

 7月の貿易収支における輸出数量は、前年比マイナス5.2%だった。12%超の円安にもかかわらず輸出数量が伸びないのは、日本企業が市場シェアの拡大という積極策に打って出ず、利益の確保を優先しているためとみられる。

 典型的なのは自動車で、7月の輸出額は前年比プラス6.2%だったが、輸出数量は同マイナス6.9%だった。数量が伸びなければ増産のための設備投資は行われず、雇用も増えないという循環に陥ってしまう。

 国内の人口減少傾向が止まらない中で、日本経済の成長率を回復させるには輸出増による国富の獲得が欠かせない。しかし、現実には円安でも輸出数量が減少するということが続き、日本経済の縮小均衡への動きが止まってない。

 

 <製造業の国内回帰、総裁選立候補者に具体策はあるのか>

 この傾向を打破するには、政府が製造業に対して生産拠点の国内回帰を強く働きかけることが第1のステップであると考える。ところが、自民党総裁選に立候補を表明もしくは近く表明すると思われる有力政治家から国内製造業の立て直しに向けた「政策対応」が全く出てきていないのはなぜなのか。

 自民党内に日本企業の輸出競争力低下に対する危機感がなく、円安メリットを生かす「政策的な知恵」が欠如しているからではないかと筆者は考える。稼ぐ力の再興を成し遂げることなく、潜在成長率を高めていくことはできない。

 どうして円安なのに輸出数量が減少を続けるのか──。この問いに明確な回答を示し、国民の目を集めるような経済政策を提示する候補者が登場することを期待してやまない。

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日経平均上昇の背景に自民党総裁選、有力候補絞り込みの段階で一段高も

2024-08-20 13:55:13 | 経済

 自民党総裁選の投開票日が9月27日に決定した。同党内には新総裁の下での早期の衆院解散・総選挙を求める声が大きく、東京市場の一部でも早期の衆院選や経済対策を当て込んだ株高が期待が浮上。20日の日経平均株価は一時、3万8200円台まで上昇する局面もあった。

 ただ、十人以上が立候補する可能性のある史上空前の大混戦になりそうな今回の自民党総裁選を前に、だれが有力なのかわからないうちは、3万9000円台や4万円を狙うにはパワー不足という声も出ているという。9月27日までの1カ月あまりの長丁場の中で、だれが新総裁に有力なのかという情報がマーケットの中で次第に重要性を増す展開になると予想する。

 

 <9月12日告示・27日投開票、決定の裏事情で思惑も>

 自民党の総裁選挙管理委員会は20日、総裁選を9月12日告示、27日投開票とすることを決定した。当欄の16日のコラムでは9月20日投開票の可能性が大きいと指摘したが、1週間先に延びたことになる。その理由について、20日付読売新聞朝刊は3面で、岸田文雄首相のニューヨーク訪問予定が影響した可能性に言及した。国連総会などへの出席のため22-26日に訪米する岸田首相にとって、20日に自民党の新総裁が決まると岸田首相の立場が中途半端になって「望ましくない」(政府高官)との声が出ていたと伝えた。

 ただ、総裁選が長期化することでメディアにおける自民党の存在感がアピールできる一方、マイナスの情報が飛び交ってせっかくの「刷新感」があせてしまうことへの懸念も一部で広がっているようだ。実際、一部週刊誌には、有力候補とみられている自民党議員に関する様々な「情報」が掲載され、総裁選の長期化をめぐって思惑が交錯している。

 

 <大幅下落の傷癒えず、3万8200円台で戻り売り>

 一方、16日の当欄で取り上げたように、早期衆院解散の可能性が高まってくれば、過去の経験則も加わって株高のシナリオが描かれることが多い。

 複数の市場関係者によると、20日の東京市場で日経平均株価が一時、前日比800円超の上昇となった材料の1つとして、ドル/円の円高から円安方向への転換に加え、今年秋の衆院解散を前提にした経済対策への期待感もあったという。

 だが、国内投資家の中には今月5日の株価大幅下落の「傷」が癒えていない参加者も少なくなく、日経平均株価で3万8200円台まで上昇してくると戻り売りが目立っているという。

 市場参加者の一部では、早期の衆院選への期待感と言っても、有力候補がだれに絞り込まれる見通しなのかはっきりしないと、3万8200円台から上の水準を買い上げていく材料にはなりにくいの見方が出ている。

 

 <有力候補の絞り込みで株価に影響も、注目される海外勢の動向>

 今後、9月12日の告示に向けて有力候補が相次いで立候補を宣言し、同時に経済政策の目玉を打ち出してくることが予想される。国内メディは各候補の政策を比較し、経済政策についてもその効果や財源のあり方などについて分析結果を並べてくるだろう。

 また、告示から投開票日のプロセスで、複数回にわたって選挙情勢を報道すると予想される。その過程でマーケットの自民党総裁選に対する見方も次第に形成され、例えば、優勢とされるA候補の目玉政策からその後の経済対策の骨子を類推し、どれくらいの株価押し上げ効果があるのかを試算するアプローチも出てくると予想される。

 他方、海外勢の中には、国内勢のボトムアップ方式をしり目に、先手を打って日本株を買い上げる行動に出るところもありそうだ。その行動が何をきっかけに表面化するのかは今のところ不透明だが、過去の経験を踏まえれば「先んずれば制す」と早めに動き出す可能性がある。実際、20日午後の東京市場では、一部の欧州勢が日本株買いに動いていたという。

 

 <群雄割拠の総裁選、市場にパフォーマンス格差も>

 いずにしても9月12日の自民党総裁選・告示日までに有力候補の中で、実際にだれが20人の推薦人を確保して立候補できるのか。そこが最初の見極めポイントになるだろう。

 次に各種の情勢判断の報道によって、決選投票に残る二人がどういう組み合わせになるのかということが分かってきた段階で、市場価格への織り込みが鮮明になってくると予想する。

 これまでに経験したことのない「群雄割拠」の自民党総裁選に対する反応の仕方によって、市場参加者のパフォーマンスに大きな差が出ることになるのではないか。

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中国経済に資産デフレの足音、低成長化のリスク浮上も

2024-08-19 12:59:58 | 経済

 世界のマーケットの目は米経済の動向に集中し、米経済指標の結果で一喜一憂する展開が続いているが、世界第2位の経済大国・中国の景気変調が長期化する兆しを見せている。資産デフレの波及による消費不振が続く中で、若年層の失業率が高水準となり、社会不安のマグマが溜まるリスクも見え始めた。今年後半から来年にかけて経済の変調に改善の兆しが見えない場合、中国経済の低成長化が来年以降の大きなテーマになる可能性がある。

 

 <中国の資産デフレ進行なら、日本経済にもマイナスの影響>

 東京市場で重視される経済データは、圧倒的に米国発だ。米経済に失速懸念があると市場が判断すれば、米株安が日本株下落に波及。米長期金利の低下がドル安・円高に反映されて、このルートでも日本株下落の圧力がかかる。19日午後の東京市場で日経平均株価が前日比600円を超える下落を演じた要因として指摘されたのは、145円台に進んだ円高だった。

 これに対し、中国の経済指標の発表でマーケットが大きく変動する可能性は大幅に下がる。だが、静かに「資産デフレ」の症状が進行しているとしたら、短期的なインパクトは小さいながら、中長期的には日本経済にとって大きな問題に発展するリスクを秘める。

 

 <7月70都市不動産価格、66都市で前月比マイナス>

 今月15日に中国国家統計局が発表した7月の中国70都市新築住宅価格は、全体の94%にあたる66都市で前月比マイナスとなった。下落は6月から2都市増えた。さらに需給動向をより反映していると言われる中古物件は67都市で下落した。

 保有する不動産の価格下落は、消費者のマインドを悪化させて消費低迷へと波及するのは、日本のバブル崩壊の過程でも見られた風景だ。当局の消費財購入刺激策にもかかわらず、7月の中国小売売上高は前年比プラス2.7%と6月の同2.0%に続いて低い伸びにとどまった。品目別では、宝飾品が同マイナス10.4%、化粧品が同マイナス6.1%と嗜好品関連の落ち込みが目立った。

 7月の中国鉱工業生産は同プラス5.1%と6月の同プラス5.3%から減速。自動車生産は電気自動車(EⅤ)が伸びたものの、全体では同マイナス2.4%と前年割れを記録した。

 

 <若年層の失業率17.1%に、消費低迷に拍車>

 さらに16日公表の7月の16-24歳の失業率は6月の13.2%から17.1%に跳ね上がった。当局は卒業シーズンと重なったことを理由に挙げているが、不動産価格の下落を起点にした資産デフレのマイナス効果で中国国内の消費者心理が悪化して消費が低迷。企業が設備投資と人員採用を抑制していることが根本的な原因と言える。

 不動産価格の下落ー消費低迷ー生産抑制ー雇用・賃金のカットー消費低迷 という縮小均衡のスパイラルが作用し始めているなら、その大元にある不動産価格の下落を止めないと、不動産融資で不良債権が増大し、銀行の融資が積極性を欠いて金融システムが機能不全に陥るという「クレジットクランチ」に発展しかねない。

 

 <19年ぶり銀行融資減、求められる適切な政策対応> 

 これもバブル崩壊の過程で日本が痛いほど経験してきた現象だが、中国でその兆候が見えてきている。13日に中国人民銀行が公表した7月末の人民元建て銀行融資残高(金融機関向けを除く)は、前月比で770億元(約1兆6000億円)の減少となった。これは2005年7月以来、19年ぶりの縮小だ。

 早めの政策対応が必要だが、中国人民銀行による大幅な利下げは中国人民元の下落と資本の海外逃避(キャピタルフライト)を巻き起こす危険性があり、大胆な金融緩和には慎重なようだ。

 また、不動産価格の下落を止めるための大規模な公的資金注入も検討されていない模様で、筆者の目からみると、あまり効果の上がらない消費刺激策にこだわって、みすみす有効な時間を失っているようにも見える。

 若年層の失業率の上昇は、社会における不満を溜める要因になりかねず、本音では中国当局も神経をとがらせていると予想する。しかし、正鵠を射た政策対応が行われていないとの印象を免れない。

 このまま中国当局が不動産価格の下落を放置した場合、消費の悪化と銀行の不良債権が急増するポイントが来年以降のどこかで発覚し、中国経済の成長力の鈍化と長期の経済低迷の可能性が明らかになるのではないか。

 現実化してほしくないシナリオだが、2025年のどこかで世界マーケットの懸念材料として「チャイナリスク」が意識されるようなら、日本経済にとっても大きな重荷になる可能性がある。今年後半からは、中国経済のデータを入念に点検する必要がある。

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