自民党総裁選の投開票日が9月27日に決定した。同党内には新総裁の下での早期の衆院解散・総選挙を求める声が大きく、東京市場の一部でも早期の衆院選や経済対策を当て込んだ株高が期待が浮上。20日の日経平均株価は一時、3万8200円台まで上昇する局面もあった。
ただ、十人以上が立候補する可能性のある史上空前の大混戦になりそうな今回の自民党総裁選を前に、だれが有力なのかわからないうちは、3万9000円台や4万円を狙うにはパワー不足という声も出ているという。9月27日までの1カ月あまりの長丁場の中で、だれが新総裁に有力なのかという情報がマーケットの中で次第に重要性を増す展開になると予想する。
<9月12日告示・27日投開票、決定の裏事情で思惑も>
自民党の総裁選挙管理委員会は20日、総裁選を9月12日告示、27日投開票とすることを決定した。当欄の16日のコラムでは9月20日投開票の可能性が大きいと指摘したが、1週間先に延びたことになる。その理由について、20日付読売新聞朝刊は3面で、岸田文雄首相のニューヨーク訪問予定が影響した可能性に言及した。国連総会などへの出席のため22-26日に訪米する岸田首相にとって、20日に自民党の新総裁が決まると岸田首相の立場が中途半端になって「望ましくない」(政府高官)との声が出ていたと伝えた。
ただ、総裁選が長期化することでメディアにおける自民党の存在感がアピールできる一方、マイナスの情報が飛び交ってせっかくの「刷新感」があせてしまうことへの懸念も一部で広がっているようだ。実際、一部週刊誌には、有力候補とみられている自民党議員に関する様々な「情報」が掲載され、総裁選の長期化をめぐって思惑が交錯している。
<大幅下落の傷癒えず、3万8200円台で戻り売り>
一方、16日の当欄で取り上げたように、早期衆院解散の可能性が高まってくれば、過去の経験則も加わって株高のシナリオが描かれることが多い。
複数の市場関係者によると、20日の東京市場で日経平均株価が一時、前日比800円超の上昇となった材料の1つとして、ドル/円の円高から円安方向への転換に加え、今年秋の衆院解散を前提にした経済対策への期待感もあったという。
だが、国内投資家の中には今月5日の株価大幅下落の「傷」が癒えていない参加者も少なくなく、日経平均株価で3万8200円台まで上昇してくると戻り売りが目立っているという。
市場参加者の一部では、早期の衆院選への期待感と言っても、有力候補がだれに絞り込まれる見通しなのかはっきりしないと、3万8200円台から上の水準を買い上げていく材料にはなりにくいの見方が出ている。
<有力候補の絞り込みで株価に影響も、注目される海外勢の動向>
今後、9月12日の告示に向けて有力候補が相次いで立候補を宣言し、同時に経済政策の目玉を打ち出してくることが予想される。国内メディは各候補の政策を比較し、経済政策についてもその効果や財源のあり方などについて分析結果を並べてくるだろう。
また、告示から投開票日のプロセスで、複数回にわたって選挙情勢を報道すると予想される。その過程でマーケットの自民党総裁選に対する見方も次第に形成され、例えば、優勢とされるA候補の目玉政策からその後の経済対策の骨子を類推し、どれくらいの株価押し上げ効果があるのかを試算するアプローチも出てくると予想される。
他方、海外勢の中には、国内勢のボトムアップ方式をしり目に、先手を打って日本株を買い上げる行動に出るところもありそうだ。その行動が何をきっかけに表面化するのかは今のところ不透明だが、過去の経験を踏まえれば「先んずれば制す」と早めに動き出す可能性がある。実際、20日午後の東京市場では、一部の欧州勢が日本株買いに動いていたという。
<群雄割拠の総裁選、市場にパフォーマンス格差も>
いずにしても9月12日の自民党総裁選・告示日までに有力候補の中で、実際にだれが20人の推薦人を確保して立候補できるのか。そこが最初の見極めポイントになるだろう。
次に各種の情勢判断の報道によって、決選投票に残る二人がどういう組み合わせになるのかということが分かってきた段階で、市場価格への織り込みが鮮明になってくると予想する。
これまでに経験したことのない「群雄割拠」の自民党総裁選に対する反応の仕方によって、市場参加者のパフォーマンスに大きな差が出ることになるのではないか。
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