窓辺びより

毎日が平凡だなんてとんだ勘違い。カーテンを開けよう。ほら、今日も窓辺びより

「演技うまいよね」

2009-10-17 22:34:53 | ミュージカル
「君って演技うまいよね」
突然だけど、こう言われたらどんな気がしますか。
やっぱり嬉しいと思う?
うん。嬉しいと思っても当然の反応か^^;

じゃあ言われて嬉しいこの言葉をせっかくだからぐさ以外の演劇なんて無縁のひとたちにも言ってあげて下さい。

え、断る? 何故。


 ……何故もへったくれも無いですよね。相手の言動に対し「演技うまいよね」なんか言ったら相手は絶対いやな気持ちになること間違いなし。「いや、演技とかじゃないから。本心で言ってるんだけど」とか言われそう

 本心の逆ってなんだ。嘘?
 じゃあ役者のやることって、嘘をつくことなんでしょうか。







 演技=「嘘を上手くつくこと」だ、なんて解釈をする人が時々いるみたいです。これは全くもって間違いだと思う。
 
 演技=「この上なく感情を素直に出すこと」なんじゃないでしょうか。舞台の上に感情を制限するものは何も無い。大笑いしても大泣きしても激怒しても許される、舞台ってそういう場所です。

 演劇の登場人物は、舞台の上で生きている。そんな登場人物を演じる役者は、心の深いところまでその人になりきって、その人の感情をこの上なく素直に表現するんです。言い方を変えるなら自分の身体に、登場人物の心を乗り移らせる訳です。

 舞台に立つ事の醍醐味って、そこにあるのだと思う。毎回同じ会話を同じ調子で繰り返すんじゃ、つまらないものね。二回手をたたいた瞬間、舞台の上に紛れも無く生身の登場人物が出現するんだから、毎回反応が変わったって至って自然な事なのです。


 10月以降、初めて突入したシーンでは立ち位置や動きについて何も指示を言わないまま「動いてみよう」と言うと収拾がつかなくなると感じて、積極的にどの役者はどの位置、誰はどこへ動く、といった事を練習中に言ってきました。でも、それは単なる初期設定です。

 ある程度慣れてきたら、そうやって固定してきたシーンの流れをどんどん変えて行きましょう。台詞の語尾とか変えて構わないし、隊形の変化とかむしろどんどん積極的にやってみて。

 「今の演技の○○が良かった!」というのも「これからずっと○○してくれ」と同義ではありません。むしろ○○した時の気持ちの変化を忘れないで。例えば誰か懐かしい人に出会ったとき、大事なのは再会を喜ぶ気持ちであって、挨拶の手が右か左かなんてどうでもいいのです。


 感情が無いと、言葉も動きも生まれない。
 いかに心の中で沸き起こる感情を身体を介して外へ伝えていくか。

 演技って、そういうことですよね。



P.S.
 演技や感情表現についての話題が今日殺陣の先生と打合せの後色々話をさせていただいた際に出てきて盛り上がりました。その盛り上がりが冷めないうちにこうやって文章を書いた訳ですね^^