いなだ眼科のホームページ分院

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交感性眼炎:同情した反対側の眼も一緒に病気に?

2005-02-28 18:04:00 | ぶどう膜炎
一方の眼に同情して、反対側の眼もいっしょに病気になる?

 ある時、右眼さんが怪我をしました。御主人が、シートベルトをしないで運転して追突事故をおこし、フロントガラスに顔面をぶつけて、ガラスで右の眼球が切れてしまったそうです。眼科に入院して、手術をして、切れた眼球を縫合してもらい、お薬を使って、お医者さんは一生懸命治療してくれたそうです。でも、いつもいっしょに働いていた左眼さんはとても心配でした。もし、右眼が死んでしまったらどうしよう、自分ひとりで生きていけるのだろうかと毎日毎日心配でした。2週間たって、やっと眼帯がとれて、右眼さんは、なんとか生き返りました。まだぼんやりとですが、視力は0.3まで、でたそうです。左眼さんは、ほっとしました。でも、このころから、左眼さんの様子がおかしくなってきました。あんまり心配しすぎて、左眼さんも病気になってしまいました。痛み、まぶしさ、充血がおこり、ある日急にぼんやり見えるようになって、ほとんど見えなくなってしまいました。心のやさしい左眼さんは、いったいどうなるのでしょうか。
 そんなばかな、怪我をしていない眼が、あとで同情して病気になることなんてあるもんか、とお思いでしょうが、時にこんなことが起こるのです。これは、交感性眼炎とよばれるぶどう膜炎です。片眼が、外傷で穿孔したり切れたりして眼球内のぶどう膜(虹彩、毛様体、脈絡膜)が障害をうけると、たとえその傷がうまくなおった場合でも、数週後から数カ月に両眼にぶどう膜炎を起こすことがあります。同時に、頭痛、耳鳴り、難聴、後には、白髪、皮膚の白斑などを起こすことがあります。症状と所見は、以前にこのコーナーで御紹介した原田病とまったく同じことが起こってくるのです。怪我で、眼球の中の組織が外に出ることがあると、身体の免疫担当細胞が、まちがって、その組織を異物と思い込んでしまい、やっつけようとします。そこで、眼球が炎症をおこしてしまうのです。そして、悪いことには、その組織は怪我をしていない方の眼球にもあり、頭の中や耳の奥、皮膚にもあるので、両眼のぶどう膜炎、頭痛、耳鳴り、皮膚症状をおこしてくるのです。
 治療は、副腎皮質ステロイド薬とよばれるお薬を使って、点滴や内服、点眼などで、集中的に治療します。場合によっては、この病気、怪我の後、何年もたってからから起こることもありますので、眼科に受診のときは、以前の外傷のこともお知らせ下さい。
 ところで、始めに書いた左眼さんは、その後の治療の結果、元気になったそうです。よかったですね。

見つめると、消える星?

2005-02-20 10:25:23 | 眼のおもしろい話
見つめると、消える星?

 皆さん、最近夜空の星をながめたことがありますか?。きれいな星空の見える場所で、ゆっくりと星を見ることなんて、なかなかできませんね。子供の頃、星座の観察をしたことはあるのではないでしょうか。
 でも、本当に、夜空の星をながめていたと言えるのでしょうか・・・?。強い光の1等星や2等星は、すぐにわかりますね。しかし、ぼんやり夜空をながめていて、やっと見える程度の淡い光の星が眼に入って、「あった!」と思って、その星の方向を見つめると、あら不思議!。今まで、目の端に見えていた星が、見つめた途端に消えてしまったことはありませんか。視線を少しずらして見ると、薄い光が見えるのに、まっすぐにその光を見つめると、星が消えてしまうのです。
 この不思議な現象は、目の「暗順応」と呼ばれるものが原因です。明るい日中の外から、急に暗い映画館に入って、しばらくは周りがぜんぜん見えませんが、15分もするとだんだん空いている席が見えてくるようになる、あれです。暗やみに慣れた目は、だんだんと中心部よりも少し周辺のほうが、目の感度が良くなって、見やすくなってくるのです。暗やみの中で、見にくい物を探すときは、一生懸命に見つめないで、見るともなくあたりを見回した方が見つけやすいかもしれませんよ。

ぶどう膜炎 その3:「シルクロード病」と呼ばれるぶどう膜炎

2005-02-15 15:31:15 | ぶどう膜炎
「シルクロード病」と呼ばれるぶどう膜炎とは?

 以前、法隆寺宝物展を見る機会がありました。いにしえの宝物達の中でも、ペルシャの壷や西アジアの琵琶が、今なお、その美しい姿をとどめ、輝いているのに驚き、遠い旅をしたであろう、はるかなシルクロードに思いをはせたことがあります。その昔、シルクロード(絹の道)と呼ばれた長い長い交易路を経て、ヨーロッパや西アジアの文化が東の果てのわが日本へ伝えられたことは、歴史の授業で教わったことがあると思います。ところが、伝わったのは、文化や宝物だけでなく、病気の中にも伝えられたものがあるかもしれないそうです。
 ぶどう膜炎(眼内の炎症)、口内炎、にきび様の皮疹、陰部潰瘍などの症状を主として、他に関節や消化器、血管系、中枢神経系などにも炎症を繰り返すことのある病気があります。ベーチェット病という、トルコの先生の名前のついた病気です。そして、この病気は、イタリア、ギリシャ、イラン、イラク、シリア、イスラエル、レバノン、トルコ、韓国、台湾といった、地中海沿岸、中東諸国から日本近隣にかけて多く見られます。患者さんは、日本を含めて、北緯30度から45度のアジア、ヨーロッパ諸国に多く、この地域の調査にて、ヒトの主要組織適合抗原(HLA)と呼ばれる、免疫に関係する蛋白質の、ある形のものを持っている人に、病気が多いことが分かりました。そして、この蛋白質は人種を越えて、この病気と関係があることが分かりました。そこで、その昔、シルクロードを色々な国の人々が行き来する中で、この病気と関係したHLAを作る遺伝素因が、シルクロード沿いの国々に広まり、今日に及んでいるのではないかと考えられ、「シルクロード病」と呼ばれることがあります。ただ、病名はロマンを含んだ優しげなものですが、その診断と治療は、専門的な知識や経験も必要で、眼科を始め、色々な科との連携も必要になることがあります。決して、放置しないようにして、主治医の先生と相談しながら、病気の管理をしていくことが必要です。そして、今、遺伝子レベルでの病気とその発症メカニズムの解明が進んでいますので、将来病気の効果的な治療や発症を抑える方法が見つかるのではないかと思われます。

ドイツの町並みとお散歩はいかが?

2005-02-13 14:37:30 | ちょっとおもしろい話
ドイツの町並みと散歩のお誘い
 以前、ドイツに少しの間住んだことがあります。ヨーロッパでも最も古い大学の一つ、マールブルグ大学のある美しい町、マールブルグと、南ドイツのエルランゲンという町です。当然ですが、日本と比べて、ドイツの町の雰囲気が全然違うことに改めてびっくりしました。最初に気づいた大きな違いは、派手な看板がほとんどない、電線がない、そしてパチンコ屋さんがない、ということでした。この3つがないだけでも、心静かに町並みの広がりを感じることができるという気がしました。もちろん、ドイツも新市街にはけっこう看板はあるのですが、これも節度がある感じがしました。
 そしてもう一つ、大きな鉄製のお椀を伏せたようなものが2~3個づつ、街角においてあり、その上方には小さな穴が開いていました。何だろうと注意していると、使用ずみのガラスビンを持ってきては、透明なガラスビンは白の入れ物に、色のついたワインやビールビンは緑の入れ物に投げ込んでいます。ガラスのリサイクル用の入れ物でした。皆きちんと決められた通りに入れていました。そして又時々、大きなトラックの荷台のような入れ物が街角に置かれてあり、この中に、いらなくなったイスや机、大きな家具などを投げ込んでいました。でも、不思議なことに、なかなかいっぱいにならないのです。たくさん投げ込んであっても、次の日には減っていました。ながめていると、いろんな人がやって来ては、中の物を自由に持っていくのです。そうやってあらかた無くなってしまうこともあるようです。リサイクルの考えが自然に身に付いているようでした。けっして貧しいからではありません。住まいや生活環境や文化的には、私よりもずっと上だと感じました。そして、古い物ほど価値があるという伝統的な考えと、使えるものはずっと使うという合理的な価値観は立派なものでした。
 そして、ドイツ人は、余暇には何をするのかというアンケート調査で、一番多かったものは、“散歩”でした。たしかに、皆さん良く散歩をしていました。多くは御夫婦か恋人同士で、町中を、公園を、特に目的もなさそうで、でも楽しげに、話しをしながら、ゆっくりと。こんな余裕がもてたらいいな、と思っていました。皆さん、ドイツ人になったつもりで、ゆっくりと散歩はいかがですか?

ぶどう膜炎 その2 浦島太郎は原田病だった?

2005-02-11 17:52:36 | ぶどう膜炎
浦島太郎の憂鬱:
 「♪♪むかし、むかし、浦島は、助けた亀に連れられて、竜宮城に来てみれば、絵にも描けない美しさ、・・・・♪♪」といった歌も最近では、とんと歌うこともなくなってきたようです。でも、浦島太郎のお話は、皆さん御存知のことと思います。しかし、考えてみると、かわいそうな話です。せっかく亀を助けて、いいことをしたのに、最後には、ただの箱をもらい、おまけにその中に入っていた煙で、急に老人にさせられてしまうのですから。ところが、このお話の中に、色々な事実がかくされているかもしれないのです。もらった空箱は、実はウミガメに連れていかれた琉球王国のとても貴重な、工芸品の箱だったのかもしれないそうです。そして、急に白髪のおじいさんになったのは、原田病という病気だったのかもしれないのです。この原田病は、日本人の眼科の先生の名前がついているように、日本をはじめとする東洋人に多い病気です。まずは感冒様の症状があり、続いて、ぶどう膜炎という眼内の炎症が生じ、視力が落ちます。そして、耳鳴り、難聴が生じ、聞こえにくくなります。頭痛も起こり、しばらくすると髪の毛やまゆ毛が白髪になり、皮膚も色素がなくなり白い斑状の変化がでてきます。つまり、放置しておくと、白髪のおじいさんができあがってしまうのです。
 もちろん、今では、視力障害が早期に起こりますので、眼科で診断をして、主として眼科で治療することになり、遺伝子レベルでの病気の解析もすすめられています。ただ、頭痛が強く起こると、まずは脳外科や神経内科にいかれることもあるようです。見え方に異常があるときは眼科的検査もうけてみてください。治療も、副腎皮質ステロイド薬を使って、病気の勢いをおさえていきます。
 もし、浦島太郎のお話が、今のことなら、すぐに治療をうけて、おじいさんになることもなく、お土産の箱を高く売って、楽しく暮らせたのかもしれませんね。 

シンデレラのドレスの色は何色にしますか?

2005-02-10 10:59:12 | 眼のおもしろい話
 小さい頃、だれもが一度は夢見たことのあるシンデレラ物語。さて、もしあなたが魔法使いで、シンデレラに、舞踏会で最も目立つ色のドレスを作って下さいと頼まれたら、いったい何色のドレスを作ってあげますか。星の光しかない暗やみでの舞踏会、真夏の強い太陽のもとでの屋外の舞踏会、そして雨の降る薄暮時の舞踏会、3回の舞踏会のそれぞれに一番目立つ色、1色ずつでお願いします。ただし、白色は色が無いものとして除きます。さて、できあがりましたか?シンデレラがお待ちですよ。
 まず、真夏の強い太陽のもとで最も目立つ色は、これは簡単でしょう。そう、赤です。真夏のプールサイドでは、赤の水着が最も目立ちますものネ。では、雨の降る薄暮時は?小学生の傘の色を考えると、そう、黄色です。黄色が最も目を引くようになります。では、暗やみの中で、最も目を引く色は・・・・実は、青です。昼間に一番目だった赤は、暗やみでは黒っぽくなってしまい、そのかわり青色が、暗やみの中で、浮かび上がってくるのです。これは、ヒトの眼が持つ、明順応、暗順応という現象によるものです。明るい場所では、明順応が起こり、この時は赤の波長を最も感じやすくなるのです。そしてだんだん暗くなってくると、黄色の波長が感じやすくなり、暗やみに慣れて完全に暗順応してしまうと、青の波長が最も感じやすくなるのです。そこで、夜の公園等が、昼間と違ったように見えたり、昼間は目立たなかった看板や物体が、真夜中に浮かび上がって見えて、ギョッとすることがあるのです。
 さてさて、あなたのシンデレラは、無事に、舞踏会で目立つことができたでしょうか。

ぶどう膜炎 その1:ぶどう膜炎て何?

2005-02-09 21:51:44 | ぶどう膜炎
"ぶどう膜炎?・・・果物の病気ではありません。"

 ぶどう膜炎という言葉から、どんなことをイメージしますか?ぶどう色に輝くおいしそうなぶどうの房ですか、それともワインでしょうか。ワインなら、赤?それとも白?、ロゼかもしれませんね。他に、食中毒を思い浮かべる人もいるかもしれません。たしかに、ブドウ球菌は、食中毒をおこします。でも、ぶどう膜炎は眼科の病気の名前です。
 眼球の外側の白い膜(強膜)をはぎとると、ぶどうのような色をした膜が出てきます。これが、虹彩、毛様体、脈絡膜と呼ばれるもので、これがちょうど、その色、形ともにぶどうによくにていたので、これらをまとめて、その昔、ラテン語でぶどうを意味する言葉で呼んだことが始まりのようです。この場所、つまり眼球の内側が、炎症(赤くなって、腫れて、痛くなって、熱があって、機能障害をおこすこと)を起こしたものが、ぶどう膜炎です。子供達がよくかかる結膜炎は、眼の表面の炎症。こういう炎症が眼の中に起こったものと考えて下さい。
 これにかかると、どういう症状が起こるのでしょうか。軽い炎症なら、見え方がなんとなくかすんで、充血も少しあります。場合によっては明るい所に出るとズキンとするような眼痛があり、この痛みは近くの物を見ようをしたときにも感じることがあります。激しい炎症なら、痛みも充血も強く、急激に視力も低下します。もし、軽い炎症が慢性に経過すると、自覚症状は軽く、御本人も発症を気づかない場合もあります。でも、放置された場合、炎症による合併症として、白内障、緑内障、網膜出血や網膜剥離、硝子体混濁など、色々な眼内の病気を引き起こし、手術が必要になったり、治療が難しくなって視力障害を残すことがあります。
 この病気の原因はたくさんあります。このシリーズで、すこしづつお話ししたいと思います。また、眼以外の全身症状を伴うことも多く、眼以外のこの色々な症状の組み合わせが、診断に役立つことになり、また全身的な治療も必要な場合があります。眼科に行かれたとき、眼以外の症状や病気について、場合によっては仕事内容や生活習慣等聞かれることがありますが、このような理由ですので、御理解下さい。では、続きは次回に。