いなだ眼科のホームページ分院

病気の事や役に立つ情報、おもしろい話等お知らせしていきます。診療時間や場所はブックマークの本院をクリックして下さい。

がんばれ小さな赤ちゃん(未熟児網膜症について)

2005-09-05 17:20:19 | 眼のおもしろい話
 以前、排卵誘発剤による、多胎児出産の話題がしばしば報告され、小さく生まれた子供達が元気に育っている様子が、テレビ等で放送されました。また、在胎22週で生まれた500g前後の赤ちゃんが元気に育っているといった放送などがあると、小さな赤ちゃんが、皆元気で、何の障害もなく大きくなっていくように思われるかもしれません。でも、早く生まれれば生まれるほど、赤ちゃんは、大きなリスクを背負うことになるのです。特に出生体重1000g未満の低出生体重児は、極めて危険が多いのです。未熟児網膜症もその一つです。
 眼球は、脳が外に飛び出して出来上がった大切な臓器です。ですから、眼球は脳と一緒に、身体の中で、最も早く発生します。でも、眼球の中の網膜を栄養する血管は、もっとずっと後になって、胎生4カ月頃にやっと、網膜の中にのびてきます。そして、ゆっくりと、出産予定日までかけて、網膜全体に広がっていくのです。
 ですから、もし6カ月で早産してしまったら、眼底の網膜の血管は、まだ真ん中に少しあるだけで、眼底周辺には大事な血管がまったく無いのです。これが、未熟児網膜症の原因です。そのままでは、網膜は栄養不足で、死んでしまいます。こんなとき、ヒトの身体は、急いで、新しい血管を作ろうとして、あわてて、にわか作りの役に立たない、濁った組織を作ってしまうのです。これが広がると、眼内は濁った組織が充満して、出血や網膜剥離を起して、結局失明してしまいます。
 そこで、眼底検査をして、悪い変化が見られれば、すみやかにレ-ザー光線で眼底の光凝固を行い、間違った反応に対して、「お灸」をすえてあげるのです。すると、多くの場合は、悪い変化が落ち着いていきます。そして、新生児集中治療室の先生や看護師さんや、その他のスタッフの皆さん、もちろん御両親の愛情と献身的な働きで、危険を克服して大きくなっていきます。でも、一番大事なことは、早産しないように、妊娠したおかあさんを大事にして、母体管理をしっかりしてあげたいですね。