いなだ眼科のホームページ分院

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全身疾患と関係したぶどう膜炎

2005-08-26 16:56:13 | ぶどう膜炎
 ぶどう膜炎についてお話しをしてきました。最後に、色々な全身的な病気に関係したものについて、これまでに御紹介したもの以外のお話しをしたいと思います。
 関節症状といっしょに見られるぶどう膜炎としては、強直性脊椎炎に伴う激しい前部ぶどう膜炎や、慢性関節リウマチに伴うもの、また小児の若年性関節リウマチにみられるもの等があります。糖尿病のある方には、糖尿病性ぶどう膜炎がみられることがあります。消化器症状に伴うものには、潰瘍性大腸炎やクローン病といった、炎症性腸疾患に伴うものもあります。皮膚症状や、全身の色々な臓器の慢性炎症をおこす膠原病も、眼底に変化を起すことがあります。また、C型肝炎やその治療にインターフェロンを使用しておられる方に、網膜症が生じることがあると報告され、話題になったことがあります。そして最近は、AIDSの患者さんで、免疫機能がある程度低下してきたときに、サイトメガロウイルス網膜炎が発症して、問題になっています。
 また、一見、ぶどう膜炎のように見えて、実はそうではないものがあります。仮面をかぶった病気ということで、「仮面症候群」と呼ばれるものがあります。これは、血液の病気や腫瘍等が原因なのに、その本体はかくれて、表面状は違った病気の顔をしているものです。少しずつ、その化けの皮をはがしていかなくてはなりません。眼科的検査だけでなく、病理検査やCT・MRIといった画像診断も行います。また、患者さんの性格変化や生活の変化などから頭蓋内の変化を判断することも、大事な意味を持つ場合があります。
 「眼は口ほどに、ものを言う」といいますが、眼の変化が、色々なことを、語りかけてくれます。眼の状態を見て「ピン!」と来るような、直感も必要です。もちろん、眼を見るだけで何でも分かるわけではなく、その変化から考えられることを、患者さんと話し合いながら、また眼以外の変化や検査結果を考えに入れて、診断や治療を決めていくことになります。推理小説のなぞ解きに似ているところもありますね。これが、ぶどう膜炎です。

眼のリハビリテーション?

2005-08-10 15:21:18 | 眼のおもしろい話
 眼の病気の場合、治療して病気は直っても、残念ながら、視力や視野が元にもどらないままになってしまうこともあります。そんなとき、眼科では、残された視機能をどうやって上手く使えばよいのか、また生活の質的改善(クオリティ オブ ライフの向上)をはかるにはどうすればよいのかについて、御説明して、患者さんと一緒に考え、道具を使ったり、トレーニングをしたり、より高次の施設を御紹介したりします。これを、ロービジョンケアとよびます。最近色々な眼科でも、こういったケアに注目して、対応していただけるようになりました。いわば、視覚障害を持つ方のための、リハビリテーションとも言えるかもしれません。
 具体的には、まず最初に、御本人の眼の状態について、なぜ見にくいのか、どういう見え方になっているのかを、御本人と、できれば御家族の方に十分理解していただくことから始めます。そして、残された視機能を上手く使うことについて、考えていくことをお話しします。
 次に、状態に応じて、身体障害者手帳の申請や、病気によっては難病申請などの行政サービスの可能性を考えます。
 また、いろいろな視覚補助器具、たとえば、拡大鏡、単眼鏡(望遠鏡)、弱視眼鏡、拡大読書器、遮光眼鏡(まぶしさをとるだけではなく、コントラストをつけて、見やすくする効果もあります)、各種の日常生活補助具やお助けグッズなどの利用の可能性を考えます。
 また、希望に応じて、より高次のリハビリテーション施設の御紹介、たとえば、盲学校、視覚障害センター、点字図書館などとの連絡、入所や通所での生活訓練などを考える場合もあります。
 病気によっては、治療を継続しながら上記の対応を考慮していきます。御心配の方は、眼科の先生に御相談されてはいかがでしょうか。

「ネコに御注意!」のぶどう膜炎

2005-08-02 17:02:34 | ぶどう膜炎
 ぶどう膜炎のお話しを続けています。
 今回はネコに関係するぶどう膜炎をお話しします。中~南九州に多く見られる、トキソプラズマ症といわれるものがあります。これは、人畜共通の感染症で、ネコがその終宿主ですが、ヒトや他の動物も感染します。トキソプラズマ原虫の嚢胞体と呼ばれるものがネコの糞便中にでてきて、これを含む土壌や、感染した動物の生肉や排泄物、分泌物から感染すると言われています。通常は、片眼性で、中心付近が見にくくなり、そのうちに視野全体がかすんできて、とても見にくくなります。これは、トキソプラズマ原虫が眼底に入り込んで、その部分が炎症をおこし、眼球内全体に混濁を引き起こしてくるからです。
 治療は、できるだけ早く、抗トキソプラズマ薬と副腎皮質ステロイド薬を組み合わせて使用し、6週間程度を一つの目安にして行います。治療を途中で中止すると再燃することもありますので、根気よく、最後まで治療を続けることが大事です。また、この病気は、胎盤感染によって、母親から胎児に移行して、先天感染をおこすことがあります。その場合、脳内にも症状を引き起こすことがありますので、妊婦さんは、注意が必要です。
 他に、ネコや犬の蛔虫が眼内に入り込んで、ぶどう膜炎をおこす、「ネコ蛔虫症」「犬蛔虫症」があります。これは、最近のペットブーム、グルメブームに伴って増えてきているようにも思えます。砂場には、ネコや犬の蛔虫の虫卵が見つかりますし、鶏や牛の肝臓の生食も影響するとの報告もあります。
 そして、ネコにひっかかれたあと、強い結膜炎で真っ赤になって、リンパ節の腫脹、痛み、発熱などが見られる、「ネコひっかき病」もネコの常在菌によって引き起こされ、場合によっては、ぶどう膜炎もおこすことがあります。
 これらの病気の予防としては、良く手を洗うこと、生肉を食べないようにすること。そして、ネコと喧嘩をしてひっかかれないようにすることと、頭に来ても、決してネコにかみついたりしないこと?だと思います。