明治座四月花形歌舞伎 昼の部。
勘九郎、七之助、菊之助ら若手俳優がたっぷりと楽しませてくれた。
二つ目の演目 『末広がり』 - 笑いをさそう舞踊です。勘九郎が一生懸命に舞台を務めている姿に感動します。
「末広がり」とは末広の扇子のこと。主人に買い求めてくるよう命じられたが、太郎冠者(勘九郎)はどのようなものかわからないままに買い物に出かける。商人(中村国生)の口車に乗せられて傘を買ってきたことから起きる騒動。とても賑やかな舞台で、回転する傘のうえに毬を乗せてくるくると回す芸の達者さは亡き勘三郎を思い出させる。大変に楽しい舞踊です。
一つ目の演目 『芦屋道満大内鑑 葛の葉』 - 愛してしまった人、子と別れることになった白狐(七之助)の悲しみや嘆きが溢れる舞台です。命を助けられた狐が許嫁の葛の葉姫に化けて子をもうけますが、本物が現れ身を引くことになる。狐の葛の葉は姿を消す前に障子に歌を残します。
恋しくばたづねきてみよ和泉なる信田の森のうらみ葛の葉
はじめは右手で書きますが、目覚めた子を抱きかかえ左手で中の句を書き、子をあやしながら筆を口に咥えて下の句を書くところは拍手喝采。
この演目は平成25年7月に国立劇場で観たときは中村時蔵の葛の葉です。当時の劇評で、玉三郎に続く女形の台頭が待たれるが、時蔵、芝雀、福助がその候補者として挙げられ、「錦絵思わす時蔵の美しさ」と評された。今回の七之助の葛の葉はぎこちないところもあるかもしれないが、時蔵らに続く役者として期待される存在になっていると思えました。
三つ目の演目 『女殺油地獄』 - 近松門左衛門の名作、菊之助の河内屋与兵衛はひ弱で身勝手な姿を表わしました。平成26年4月金毘羅歌舞伎で観た染五郎は、確信犯の悪人ぶりを前面に出した像でしたが今回の人物像は成り行きで殺してしまう、最近の若者犯罪を表現しているかのようでした。
勘九郎、七之助、菊之助 - 若手三人の舞台はこれからも楽しみです。