Because I'm a surfer

サーファーだもの、しょうがない…。
「最高でしょう!」そんな波乗り人間特有の超ポジティブ思考コラム

Gerry Lopez said

2009-03-06 14:00:18 | 日記
外は寒い上に、雨が絶え間なく降り続いています。

「最高でしょう!」というポジティブさが売りの当コラムも
さすがに「今日」という期間限定では
読んでいる皆さんが面白がってくれるような
サーフィン・ネタを書く自信がなくなってきます。

しかし、そこは心配ご無用。

「NALU」という雑誌の編集を10年以上続けてきて
日本国内や海外、さまざまな人たちに会う機会がありました。
普通だったら話すこともできない
スーパースターやレジェンドたちとの出会いや想い出、
そして印象に残った彼らの言葉を丁寧(もったいぶって?)に
「~said」 シリーズとして紹介していきます。

その第1回目は、ジェリー・ロペス氏にさせていただきました。




なぜなら僕が出版社を辞めて、
imsurfer.comというサイトを立ち上げるという、
新しい、かつ無謀な挑戦をしようと決断できたことは
彼の言葉による影響が大きかったからです。

どんな言葉だったかというと…。


*****************************





その日は東京で行われた、
ジェリーさんのスポンサーが開いたパーティ会場でした。

僕にとってジェリーさんに会うのは、その時が二度目。
一度目は僕が14歳の頃、30年も前のこと。
場所は湘南にあるドロップアウト・サーフボードの工場でした。

ジェリーさんは大勢の人に囲まれていて
なかなか話すチャンスが回ってきませんでしたが、
来客へのステージ挨拶と乾杯が終わった後、
やっと彼と話す機会が巡ってきました。

僕が自己紹介をした後、30年前の話をすると
「Really?」(本当?)と驚いた顔をした後、
必死に思い出そうとします。彼は何事にも真面目な人物なのです。

さらに「ピーター・マッケイヴと一緒でした」と僕が付け加えると

「I remember!」(思い出した!)と彼の表情がほころびました。

もちろん僕個人を覚えていたわけではありません。
が彼曰く、ジャワに行く途中で親友のピーター・マッケイヴと日本に寄り
親交が深い故エド小川氏がオーナーを務める
ドロップアウトの工場に寄ったとのことでした。

そして、僕は彼にこう伝えました。

Gerry-san, maybe you don't remember,
but the day, you gave me your autograph on my t-shirt
and gave me a big advise. Your words changed
my whole life.

(ジェリーさん、多分覚えていないでしょうけど、
あなたは僕のTシャツにサインをしてくれたんです。
そして、あるアドバイスをしてくれたんです。
その言葉は僕の人生のすべてを変えたんですよ)

What did I say?
(僕は何て言ったんだ?)

ちっと間を空けてから彼が尋ねてきました。

You said, "Keep surfing".
(サーフィンを続けろよ)

僕がそう答えると、彼はまっすぐに僕の目を見たまま
ゆっくりと、表情を崩し始めました。
まるで自分のことで喜んでいるかのように…。

So you kept doing it.
(そうか、君はやり続けたんだ)

Yes sir, because you order me to do so.
(はい、あなたがそう命令したからです)

僕が意識的に「命令」という言葉を使うと
彼の笑顔はさらに大きくなりました。

本当はサーフィンを続けたことによって
編集という仕事に就けたこと、
そして、編集という仕事で国内外の大勢の人と出会い
いかに自分の人生が広がったか、豊かになったかを伝えたかったのです。
そして、そのきっかけを作ってくれた彼に
感謝の言葉を送りたかったのです。

しかし、ジェリーさんという人物は本当に不思議です。
彼の笑顔を見ているだけで、そんな説明は不要に思えます。
彼の笑顔は、すべての本質を見抜き、
理解しているという意思表示に見えてきます。

しばらく続いた笑顔の沈黙の後、
僕はかねてから彼に尋ねてみたかった質問をしました。

I learned a lot from my surfing experience.
But what did you learn the most?
(僕はたくさんのことをサーフィンの経験から学ぶことができました。
ジェリーさんにとって一番サーフィンから学んだ大切なことは?)

彼は少しだけ考える素振りを見せ、こう言いました。


One of the big lesson I learned about surfing
is how to operate in present.
I think that's really what the foundation of
entire surfing experience.
(サーフィンから学んだ最も大切なことは
「今」をどう判断し、どう対処するか、ということ。
そして、それこそがサーフィンを通して得ることができる
体験の「本質」だと僕は思う)

その言葉を聞いた後、僕は直立不動で動けませんでした。
ジェリーさんの言わんとしていることを
その時点でどこまで理解していたかは、分かりません。
ただ僕の心のどこかにある琴線に触れ、痺れてしまったのです。

しばらく僕が呆然と立ち尽くしていると
ジェリーさんの古くからの知り合いらしき人物が現れ、
彼は僕に軽く挨拶をして去っていきました。

そして、彼の言葉だけが僕の中に残りました…。


*****************************


昨日、波が良かったからからといって、
今日も波がいいとは限らない。

たった今、いい波に一本乗ったからといって、
次の波もいいとは限らない。

台風がもたらす大きくていい波は、
すぐに生命に関わるような状況に変わるかもしれない。
いいことも悪いことも、楽しみも危険も
常にカードの裏と表のようなもの。

だからこそサーフィンを常に楽しむためには、
過去から得た自らの体験を基にしながら
常に「目前の一瞬」と真摯に向かい合いなさい。

そして、それは人生も同じこと…。

あれから3年の歳月が経った今、
僕は、彼の言葉をそんな風に解釈しています。

これからさらにサーフィンを続け
また、ジェリーさんに会った時、
彼は次にどんな言葉をくれるのでしょう…。

今からその言葉が、楽しみでなりません。