毎日更新!中谷比佐子のきもの365日

きもの日記です。さて何を着よう?と思ったときの参考にも

往年の大女優

2012年03月23日 | きもの
いま往年の大女優と仕事をしています
台本に合わせて衣装を選び整えていくのが私の仕事
一人一人の出演者の性格や
その場の様式に合わせて衣装を決めます
しかも同じ場面に登場をする人たちの色の調和も考えて

しかし
往年の大女優は「若くありたい」と願います
一幕一場に自分が登場した時会場の波を受けたい
しかも自分一人にーー

ライトを何十年も浴びた方です
当たり前の要求だと私は受け止めております
「目立つ」「若々しい」「きれい」
これが三点セット

台本に挟み込まれたきものの写真
それを着た自分自身を想像しながら役作りをするようです
前もって選んだきものの8割は合格でした
譲らないのが
役の年が70歳しかも昭和20年代
渋い青緑の地色の江戸小紋を出したら
「あばあさんすぎるわ」
(だってあなた80歳でしょう?)

「最後は老婆に見せようと思って鼻眼鏡をつけるわ」
恰好や演技で老婆に見せてもきものは美しい方がいい
なるほど

それでも帰り際
御自分のバックにつけていた飾り物を外して
「今日のナカタニさんのきものの色と合うでしょう?」
とくださった
満足のしるしかな

女はきものに対する思いが深い