伊方原発の廃炉のために

2006年から「伊方原発のプルサーマル問題」として続けてきましたが、伊方原発の廃炉のために、に15年に改名しました。

テオリアに掲載された原稿「伊方原発をフクシマの二の舞にさせない」

2014-05-22 22:37:49 | 南海トラフ地震で長期広域停電問題

pdfファイルはこちらからダウンロード願います。

テオリアNo.19 2014年4月10日号の記事原稿

伊方原発をフクシマの二の舞にさせない

小倉 正(原発さよなら四国ネットワーク)

原発再稼働の動きはそもそも誤りです

 今年2月2日の愛媛新聞は伊方原発再稼働問題の四国4県の合同世論調査を紹介しています。四国全体の約6割という根強い再稼働反対の声があります。「『地元』範囲拡大望む声」と表題にあるように、再稼働の意思決定に参加すべき「被害地元」には少なくとも隣接する四国3県と山口県、大分県を加えるべきでしょう。

 重要なのは、再稼働を求める側の人の内で、安全だ/国を信頼できるから推進する、としているのは回答者全体の中わずか8.7%であり、残りの90%以上の人から「安心」が失われていることです。推進派の人も抱いている「不安」を解消させない内に再稼働することはありえません。

 なぜ不安になったのか?フクシマ事故でなにより信用を無くしたのが官僚と制度だからです。

 住民を守るのではなく秩序と体面、事業者を守ろうとする官僚の姿勢が、SPEEDIや米軍航空機観測データなどのデータ隠し、学校の20mSv/年基準、避難の権利の無視、東電を破綻から守る資金提供、震災がれきの広域処理、被ばくの追加となる除染作業、汚染物の焼却処理、刑事告訴・告発の不起訴決定、そしてフクシマ収束前の原発再稼働の姿勢、で露わになりました。

 検証のために、3・11の出来事を振り返ってみましょう。

(塩谷喜雄著、文春新書900「原発事故報告書の真実とウソ」では下記の側面から4つの事故調査委員会報告書の読み比べをしていて興味深いです。)

 ヒューマンエラーは起こりえないものとされていましたが、1号機のインターナルコンデンサー(IC)は停電時にバルブが閉じる設計であることをオペレーターが知らず、動作しているものと思い込んでチェックをしなかったことでメルトダウンを起こしました。実際にはその機械の作動訓練すら行われていませんでした(政府事故調)。

 また国会事故調では、地震による配管損傷が1号機のメルトダウンの原因である可能性も拭えないとしており、これを受けて自民党の福島事故調査小委員会の村上誠一郎委員長はつい最近「フクシマの原因究明なしに再稼働はあり得ない」とする報告書を安倍首相に提出しています。

 政府の中枢にはすべての情報を把握している人がいる、そして情報を隠しているのだ、と当時は思われていました。しかし実際には「何でも官邸団」も何も分かってはおらず右往左往していたことが明らかとなりました(民間事故調)。

 政府は緊急時には専門家を派遣して、事故収束に最善を尽くすものだと思っていましたが、実際にはテレビ会議越しにやりとりするだけ、作業員の過酷な状況についてはフクシマフィフティーと英雄視するだけで、交代要員を派遣することもありませんでした。米国では過酷事故の対処には海軍のメルトダウン収束チームが派遣されることになっていますが、日本では命知らずの特攻隊になることを一民間企業の社員に強制したのでした。

 事故調査委員会からは「規制の虜」という概念も出てきました(国会事故調)。規制される側の電力会社に引きずられて、福島原発では明治三陸地震の先例に基づく想定津波15m級への見直しが間に合いませんでした。


何一つクリアされず

 こういった問題点は今の規制委員会の審査では、すべて改善されている? いいえ、一つもクリアされていません。

 相変わらずヒューマンエラーは規制審査の対象外です。

 原因究明が終わっていない内に作られた新規制基準で「安全」を担保できるなんてあり得ません。

 原子力規制庁はメルトダウンの収束作業は電力会社に任せ、口出しすることはない、と市民団体に公言しています。

 イカタフィフティーは再び英雄視され、見殺しに。

 国会事故調の結論「規制の虜」が妥当だったのであれば、過去の東電の津波想定隠しを容認してきた原子力安全保安院の責任者は訴追されるべきですが、彼らは今の原子力規制庁に横滑りしています。原子力ムラ出身者の規制委員会が自ら決めた基準に適合すれば安全とみなされます。

 そもそも3・11以前、IAEA(国際原子力機関)が提唱する「5層の深層防護」は、日本には3層までしか存在していませんでした。(「電力会社は長期間にわたる全交流電源喪失は考慮する必要はない」とされていました。防災計画は10km圏内のみに限定されていましたし訓練も実践的なものではありませんでした。)

 フクシマ事故を経て、新規制基準を通じて4層目(過酷/重大事故時の対処策)を追加し、自治体に行わせる5層目(原子力防災)もあわてて構築している途中ですが、新規制基準とは「安全」基準ではないと田中委員長は弁明しています。

 福島事故の教訓を踏まえない規制基準と紙の上だけの防災計画を作らせておいて、「規制委によって世界最高水準の安全性が確認された原発(…は再稼働される)」(安倍首相発言)との膏薬売りの口上にはあきれ果てます。

 原発さよなら四国ネットワークのチラシ↓の上にあるのは瓦割りのアナロジーです、3枚ではハンマーで叩かれると全部割れてしまった!(3・11)ので、今度は4,5枚目を差し込もうとして差し込めていない様子を示しています。

 無理矢理、原子力防災の担当にされた自治体は、自らがこの5層目を世界最高水準のものにできない、つまり合格点を付けられる原子力防災を立案できないことを、原発を再稼働できない理由だと宣言すれば良いのです。

 自県の原子力防災がダメなので、原発の安全性は国際水準に到達していない、という当たり前のことを、原発が再稼働できない理由だと主張するのが、「県民の生命と財産を守る立場に立つ知事」(新潟県の泉田知事発言)の役割である、という姿勢をとるよう首長に求めるべきです。


伊方原発の危険性は

 今後30年間で70%の発生確率の南海トラフ巨大地震によって、あるいは伊方原発沖合数キロメートルにある中央構造線活断層帯が連動して起こる原発震災という想定を、規制委員会では検討できていません。愛媛県議会副委員長自身が昨年南海トラフ地震による被害を想定するよう要望を原子力規制庁に提出したにも関わらずです。伊方原発ではまさに震災による全交流電源喪失経由のメルトダウンという、フクシマの二の舞を準備しているのです。

 その原因は、規制委員会が非常に狭い範囲しか審査をしていないからです。

四国の高圧送電網には島リスクがある=他電力との広域連系線が震災を受ける可能性がある。

・四国東側に集中している火力発電所も津波で被災、長期停電するリスクがある。

・高圧送電網は、同じ中央構造線活断層帯の真上に変電所が連なって立地しており、多重防護となっていない。(川内変電所は数百メートルの近くに、東予変電所とJPowerの西条変電所は敷地内を活断層が通っている!)

 もう呆れてお口あんぐりです。

 徳島の火力発電所群が津波を被り、島の送電網が中央構造線活断層による余震でズタズタにされる時、ブラックアウト(大規模停電)中の私たちの最大の慰めは「あの時、伊方原発の再稼働をさせなかったことだね」…と後になって振り返ることができるようにしましょう、かならず。


愛媛・四国での再稼働反対の取り組み

 様々な団体の活動について項目だけ紹介します。拙ブログ「伊方原発のプルサーマル問題」http://blog.goo.ne.jp/ikatanoplu の右側にもリンクを貼っています。

・伊方原発をとめる会(労働組合・政党関係の集まり)…伊方裁判闘争の支援と県知事向けの40万人署名運動、そして(昨年の8000人を集めた「12・1 No NUKESえひめ」など)大規模な集会・デモの主催

・原発さよなら四国ネットワーク(市民運動系)…市町議会への請願や、防災担当部局への申し入れ、県議会前での各議員の通信簿配布など。

・八西原発反対住民連絡協議会/八幡浜原発から子どもを守る女の会 …ゲート前座り込み

・伊方原発50km圏内住民有志の会/伊方の家(再稼働阻止全国ネットワークよりの泊まり込み参加)…双葉町前町長の井戸川さんの講演、現地住民への口コミによる働きかけ

・その他、首相官邸前金曜夕方の抗議行動に触発されて始まった、県庁前の同時刻抗議行動も、12年7月末以降毎週継続して10名以上の個人がさまざまに参加しています。菅元首相とヤツコ元NRC委員長の講演会、シールアンケート、四電の株主総会での働きかけ、情報共有のための全国規模のメーリングリストなどの行動も続いています。

 どんな成果が上がっているか今は見えにくいですが、できることはなんでもやっていく、その行動の相乗効果が自治体を変える、とするボトムアップの活動を続けていきます。

トゥギャッターまとめ「#年#月の脱原発」作りを2年間続けています。

http://togetter.com/id/togura04



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