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ZOO2(小説)

2008-02-03 23:58:11 | 読書
今回の記事は『ZOO 2』(乙一著、集英社文庫)です。
乙一さんの短編が六編収録されています。
ZOO 1が切ない系の話が多かったのに対し、ZOO 2はユーモア&トリッキー+暗黒系な話が多いです。
どの話も一筋縄では終わりません。


■内容紹介
落ちる飛行機の中で

ハイジャックされた機内で、私は隣の席の男から、ある商品を買うように勧められた。
その商品は安楽死の薬だった。
ハイジャック犯によると、この飛行機はあと一時間後にT大学校舎に衝突させるらしい。
「そうなれば、あなたは死にますよ。それも苦しんで。
それならいっそ、この薬を飲んで死んだ方がいいですよ。
この薬を使えば痛みも苦痛も感じることなく楽に死ねます」
それが男の言い分だった。
私は悪くない話だと思った。
痛みに悶えて死ぬのなんて嫌だ。
男の言い値は私の全財産だった。
どうせ死ぬのだから、全財産を失おうが関係ない。

――ふと私は考えた。
もしこの飛行機が犯人の思惑を外れ墜落しなかったのなら。
私は全財産を失い、しかも無駄に死ぬ。
私にはこの飛行機で向かった先でやろうと思っていたことがある。
目的を果たす前に無駄に死ぬなんてごめんだ。

私は男から薬を買うべきか否か、判断に困った。
しかしあまり時間はないのだ。
躊躇している間に飛行機が落ちてしまったらもともこもない。


■感想
前回のZOO1に続き、今回はZOO2の感想です。
ZOO1に比べ、2の方はより一層様々なジャンルの短編が収録されてます。
2には、ユーモアに溢れる文章で書かれつつ、「あっ」と言わせる結末で終わり、そして全体的に暗黒系な雰囲気の物語が収録されています。
読後感は心がざわつくような、なんだかふと考え込んでしまう、そんな感じでした。
切なさに心が打たれたZOO1の読後感とはだいぶ違います。

『ZOO2』には5編の短編と、1編のショートストーリーが収録されています。
それぞれについて簡単にですが感想を書いていきます。


■血液を探せ!
痛みを感じることのない資産家が、目を覚ましたら何者かに刺され血まみれだった。
早く血液を輸血しないと死んでしまう!!

そうとうユーモア溢れる文章で描かれた物語です。乙一さんとしては珍しいぐらいにユーモアが前面に押し出されています。
登場人物のネーミングからしてすごい。
主人公・ワシ
その妻・ツマ子
長男・ナガオ
次男・ツグオ
って、あまりにもそのまますぎ……。
少しどろどろした人間関係でありながら、ユーモア溢れる書き口なのでとても面白く読めました。
終わり方もこの作風からは予想もつかないようなシャープな感じです。


■冷たい森の白い家
死体を使って建てられた家。
その家にひとりの少女が訪れる。

乙一流暗黒童話。アイのメモリーを遥かに凌ぐ暗黒ぶりです。
残酷で、無垢で、そして悲しい童話的物語。
ただ残酷な話で終わらせない辺りが、さすがは乙一さんといったところでしょうか。
ラスト、悲しいな。いろんな意味で。


■Closet
クローゼットが一つのキーとして展開していくミステリ。
小説ならでは、とてもトリッキーの物語。

これはすっかり騙されてしまいます。
犯人が誰とかそういうことではなく、その巧みな物語の技巧にです。


■神の言葉
生物を自分の言った通りにしてしまう"声"を持つ高校生の僕。
いつしか彼はある異変に気づく。

これも残酷な物語です。
神の言葉というタイトルですが、彼の"声"はとてもおぞましい感じで描かれているのが印象的でした。
気づいてしまった後の彼は本当に幸せだったのでしょうか。
読み終わった後、何だか心がざわついた。


■落ちる飛行機の中で
今回の内容紹介に書いた物語です。

主人公のわたしと、セールスマンの男、そしてハイジャック犯。
この3人が意外な感じで繰り広げていく飛行機の中での展開は読ませます。
それにしても人間って身勝手ですね。
悲しみや憎悪など、強い感情に取りつかれてしまうと、人はひとりよがりの行動をしてしまうのかもしれません。
↑この物語の感想とは関係はない意見に思えてしかたない。


■むかし夕日の公園で
わずか4ページで描かれたホラーです。
4ページながら、恐い展開と、少し切ない終わり方をしています。
短いページ数で物語をまとめることってとても難しいことだと思います。
それをこうも完成度高くまとめられるとは。乙一さんおそるべし!


ZOO2も短編集ですので、一話一話はあっという間に読み終わります。
ぜひZOO1とあわせて、ZOO2も読んでみてください。


『ZOO 2』/ 乙一 / 集英社文庫
ジャンル:小説(ジャンル分け不能/短編集)
メモ:ZOO 1もあります
おすすめ度★★★☆

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