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ZOO1(小説)

2008-01-27 02:29:01 | 読書
今回の記事は『ZOO1』(乙一著、集英社文庫)です。
乙一さんの傑作短編5編が収録されています。映画化もされました。
読みやすく面白いのでどんな方にもオススメです。


■内容紹介
SO-far そ・ふぁー
SO [社] 重要な他者。親、仲間など。 (significant other)
far [距離] 遠くへ、遠く離れて

幼稚園に通っていた頃のことだ。
ぼくには父と母がいて三人暮らしをしていた。住まいはアパートの二階で、居間とキッチン、その他に部屋が二つくらいある家だった。
居間には灰色のソファーがあって、これに座ってテレビを眺めたり、本を読んだり、うたた寝をするわけだ。
うちの団欒《だんらん》というものの正体は、このやわらかいソファーだった。
いつも僕が真ん中に座り、母はぼくの左手側、父は僕の右に座った。
ぼくが足をぶらつかせながら幼稚園での出来事を話すと、笑顔の父と母が両側からぼくを見てくれた。
ぼくは両親が好きだった。

それがいつのまに起こったことなのか最初は分からなかった。気づくとそうなっていた。

ぼくと父が居間のソファーに座っていた時だ。父はどことなく暗い顔をしてテレビを見ていた。
そんな時、母が扉を開けて居間へ入ってきた。父と同じような浮かない顔だった。
「あら、一人でテレビを見ているの?」
ぼくに向かって母が言った。
あまりにも普通の調子だったので、聞き逃すところだったけど、確かに「一人で」と母は言った。
ぼくは隣の父を見た。自分が無視されたことを怒っているんじゃないか、と心配だったけれど、父は母が入ってきたことに気づいていない様子だった。
そのうち父は静かにソファーから立ち上がり居間を出ていった。
ぼくは困惑した。何かが微妙におかしかったが、その原因がわからなかった。きっと泣きそうな顔になっていたに違いない。
母がトランプを取り出し「一緒にババ抜きしようね」と微笑んでくれた。
最初のうちは落ち着かなかったけど、母が笑ったので、ああ大丈夫なんだなと、安心した。
しばらくして父が居間に戻ってきた。
「何だ? 一人でトランプなんかして……」
父はぼくを手招きした。
「今日は外食にしような」
ぼくはソファーから降りて父のもとへ駆け寄った。
振り返ると母がカードの束を持ったまま「どこへ行くの?」という顔でぼくを見ていた。
母も一緒に外食に行くのだと思っていたが違った。
ぼくが居間から出るなり、父は電気を消してパタンと扉を閉めたのだ。まだ中に母がいるというのに。
ファミリーレストランにいる間、ぼくは居間に残してきた母のことが気がかりだった。
「これから生活が大変になるな……」
父がそうつぶやいた。


■感想
『ZOO』という作品は、集英社文庫版では1と2の2冊に分かれていて、今回はその1の方の感想を書いてます。
いつもだったら、同作品が上・下のように複数冊に分かれている場合はレビューを分けず1つの記事にしているのですが、今回は2回に分けます。
というのも、『ZOO』の1と2とでは作品から受けるテイストがまるで違ったからです。
そんなわけで、『ZOO2』の感想は次回へ回します。

乙一さんの作品は久しぶりに読みました。
久々に読んだ乙一さんの作品は、全くと言っていいほど期待を裏切らない面白い作品でした。

『ZOO1』は5つの短編が収録されています。
それぞれについて簡単にですが感想を書いていきます。


■カザリとヨーコ
自分のまわりは敵だらけ。学校でも家でも。
そんな孤独な少女エンドウ・ヨーコの物語。ちなみにカザリはヨーコの双子の妹です。

自分の負い目を受け入れつつも、たくましく生きるヨーコの姿には共感がもてました。
最後の結末は実に乙一さんらしい。きれい過ぎず、そしてとても強い。
この物語、ぶっきらな会話がやたらツボでした。
「エンドウさん、消しゴムかして」
「……あ、ごめん、持ってないの」
「ちっ」
すごく短いながらも、面白く、何だかすごく分かりやすい。
乙一さんの会話センス、すごく好きです。


■SEVEN ROOMS
謎の七つの部屋。そのうちの一つに閉じ込められた姉と弟の物語。

姉弟の絆が感動を呼びます。
さばさばしつつも優しい姉がものすごく好きになってしまいそう。
とてもミステリチックで、終わり方はすごく切なくて悲しい。
5作品中で一番好きな話かも知れない。


■SO-far そ・ふぁー
今回の内容紹介に書いた話です。
ぼく(主人公)には両親2人ともわかるのに、母には父が、父には母がわからなくなってしまうお話
…と思いきや、とんでもない結末が最後に用意されてます。
この作品も切ないです。
SEVEN ROOMSはラストが切ないのですが、このSO-farは序盤から切ない雰囲気ばんばんでラストまで持っていきます。
物語を読んでいるうちにいろいろな結末が頭に浮かび悲しくなってくるのですが、そのどれもを外してくる乙一さんのストーリー・テラーっぷりがすごい。


■陽だまりの詩
ロボットの君に"死"を理解してもらいたい。

死はなんで悲しいのか。
単純な質問のようで、実際に聞かれるとなかなか難しいその問いの答えがこの物語を読むと見えてくるかもしれない。
少しずつ人間らしい感情をもっていくロボットの話。
この話も切ないな~。


■ZOO
彼女を殺した犯人を捜す俺。しかし俺は犯人を知っている。なぜならば…。

こんな話を今まで読んだ事がない。
物語のオチが読んでいて全くわからない。
この物語はいったいどこへ向かうのか? そんな気持ちで終盤まで一気に読ませます。
文学性は5作品中で一番高い、そんなように思います。


乙一さんの小説は読みやすく面白い。
しかも『ZOO』は短編集なので1話1話が短くすぐに読み終わります。
なので活字だけの本はあまり読まないという人も、ぜひ一度読んでみてください。

漫画しか読まなかった僕が、読書(小説)好きになったきっかけの内、乙一さんの小説が占める割合はかなり大きい。


『ZOO 1』/ 乙一 / 集英社文庫
ジャンル:小説(ジャンル分け不能/短編集)
メモ:ZOO 2もあります
おすすめ度★★★★☆

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2 コメント

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はじめまして。 (歩)
2008-01-27 14:36:16
zoo、僕も読みました。友達から借りまして。
初めての乙一作品だったんですけど、一発目のカザリとヨーコから心鷲掴みにされてしまいました。
SEVEN ROOMSは映画も見ましたが、とても切なかったです。ラストが長い間頭から離れませんでした。
歩さんへ (ichi-ka)
2008-01-29 02:25:20
コメントありがとうございます。
ZOOの映画は見たことないですが、SEVEN ROOMSのラストは映像化したら印象的なシーンに違いなさそうですね。

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