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虐殺器官/伊藤計劃(小説)

2012-05-13 23:30:00 | 読書
今回の記事は『虐殺器官』(伊藤計劃、ハヤカワ文庫JA)です。
現代における罪と罰を描いたフィクションで、ゼロ年代SFの最高峰とも言われる傑作です。
今まで読んだどんな小説よりも繊細な内容には感嘆を覚えずにはいられない。

■内容紹介
9・11以降の“テロとの戦い”は転機を迎えていた。先進諸国は徹底的な管理体制に移行してテロを一掃したが、後進諸国では内戦や大規模虐殺が急激に増加していた。
米軍大尉クラヴィス・シェパードは、その混乱の陰に常に存在が囁かれる謎の男、ジョン・ポールを追ってチェコへと向かう……。
彼の目的とはいったい何か? 大量虐殺を引き起こす“虐殺器官”とは?
ゼロ年代最高のフィクション、ついに文庫化!

■感想
著者の伊藤計劃《いとう・けいかく》は作家デビュー後、わずか2年で逝去した作家です。彼の死は闘病の果ての死である。
彼が遺した作品はゼロ年代(2000年から2009年までの10年間を指す)日本SFのベストに挙げられており、そのあまりにも早い死が惜しまれている。

僕はSFにも文壇にも決して明るくはないので伊藤さんのことは全く知らなかった。
初めて彼の作品『虐殺器官』を読んで、その内容の緻密さと繊細さには圧倒された。
帯で宮部みゆきさんが絶賛されているとおりに、こんなに凄いものは誰にも書くことはできない。

この小説はもの凄い小説だと思う。
これほどまでに繊細な小説は今までに読んだことがない。
内容はけっこう暗く、ジャンルもSF(現代SF)なので好みは分かれるかもしれない。
けれど読んだ人全員が賞賛するであろう素晴らしさを持っている。

描かれている近未来の物語はとてもリアルで、切実に人が抱える罪の世界を描いている。
現代の世界が抱える問題へも通じるこのSFには考えさせられる部分も大いにあった。

印象的な作品に触れると、その作品に少なからず影響を受けることがある。
複数日にわたって読むことが多い小説は特にその傾向が強い気がする。
例えばゆるい小説を読んでる間は考え方もどこかゆるく軽くなり、切ない小説を読むと感傷的な思考になる。
この小説を読んでいる期間は、とにかく繊細になっていたように思う。
繊細な思考には憧れるけど、実際は自分はそれほど繊細ではないことを自覚しているので、とても感慨深かった。
(誤解している人もいるかもしれないので一応書いておきますが、ここで言う「繊細さ」は「打たれ弱さ」というわけじゃないです)

著者が短い生涯の中で遺した本作。
最後の3年を作家としての道を選びこれほどの作品を残した著者に熱いものを感じずにはいられない。


書名:虐殺器官
著者伊藤計劃
ジャンル:小説(SF/現代/繊細)
メモ:特になし
おすすめ度★★★★


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1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
SFは・・・ (Matthew)
2012-05-14 20:00:38
SF小説ってジャンルは、読んだことはないのですが、ichi-kaさんのレビューを読んで、読んでみたくなりました。

凄い作家さんを見つけたと思ったのに、伊藤さん、もう亡くなられていたなんて、本当に残念ですね。
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