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スイッチを押すとき/山田悠介(小説)

2012-06-17 23:35:00 | 読書
今回の記事は『スイッチを押すとき』(山田悠介、角川文庫)です。
自らの命を断つスイッチを持たされた少年少女たちの非情な運命を描いた山田悠介のベストセラー小説。
泣ける山田悠介作品として発売5日後には第2版発行という驚異的な売れ行きを記録し、舞台化・ドラマ化・映画化された人気作。
けっこう今までの山田さんの小説とは異なる雰囲気を持った小説です。

■内容紹介
青少年自殺抑制プロジェクトセンターで、監視員として勤務する南洋平《みなみ・ようへい》。
ここでは、4人の少年少女に、自ら命を断つ【赤いスイッチ】を持たせ、実験をしていた。
極限状態で軟禁され、孤独に耐えられずに次々と命を断つはずが、この4人は“7年間もスイッチを押さない”という異例の子供だったのだ。
彼らが生きたいと願うその理由を聞き、南たちは脱出を図るが、そこには非情な運命と意外な結末が待ち受けていた――。
一番泣ける山田悠介作品、ついに文庫化!

■感想
5月中には2011年のレビューは終わらせたいと思っていたのだけど、まぁそう上手くもいかない。
6月中旬を過ぎてもまだ終わっていないのだから更新状況は悪いです。
それでも終わりは見えてきているので、めげずに更新は続けます。スローペースでじれったくていろいろとごめんなさい。

さて、感想です。

この『スイッチを押すとき』は、今まで読んできた山田作品とはだいぶ趣が異なる印象を受けた作品です。
山田作品というとゲーム的な設定や化け物じみた登場人物が出てくることが定番で、そういった非現実的な要素を楽しむというようなエンタメ的なテイストが強かった。

しかし「スイッチを押すとき」はエンタメテイストはかなり薄い。物語の設定自体は現実では絶対にあり得ないゲーム的な設定なのだけれど、それを楽しませるというような作品には確実にしていない。
そのせいあってか、読み終わりはかなりしんみりとする。

命を断つスイッチ。物語としてはそうとう重くなりそうな設定なのですが、読み口は不思議なほどに軽い。
それに加えて、登場人物の過去といった詳細な設定はほとんど語られていないため、何だか物足りないという印象も少なからず感じる。あえて書かないというのも小説の技法なのだけれど、坂本とか堺とかはもっと掘り下げてもよかったなぁとも思う。
どんな設定の物語であろうとライトで読みやすいというのが山田作品の最大の持ち味とも言えるので、山田作品っぽくないけど、実は山田悠介らしい小説なのかもしれない。
(山田作品は刊行順に読んでます。なのでこの時点で以降の山田作品がどうなっていってるのかを僕は知りませんのであしからず)

主人公の洋平の身に科せられた“ある秘密”には驚いた。
横浜の4人が極めて異例の存在という設定を根底から覆すどんでん返しにはもう驚くしかない。
しかし洋平の行動についてはほぼ読者の予想通りの行動を終始とっていたのではと思う。

久しぶりに山田作品を読んでいてどうにもおかしいと感じる点も多々あった。
例えば逃亡中の洋平が取る行動。
全国指名手配をされているのを自覚していながらあまりに無防備な行動を取り過ぎでしょ。
横浜の超人目の付く場所に戻っておきながら、全然平気だったりする描写に「あり得ない!」と強く感じたけど、その辺は堺が上手くやっていてくれたのだと、そう納得するほかない。
(追記:最近のニュースを見ていて「案外ニュース報道されても堂々平然としていれば割と平気なのかもしれない」なんて思ったので、この描写もありなのかも…)

ラストはもう少し盛り上がって欲しかったなぁとも思う。どこかあっさりとした感じで終わってしまっているのが少し残念。
作家としての山田さんの筆の広さは感じたけれど、やっぱり山田作品だとライトホラーかゲームワールド的な作品のが好きかなーと思った小説でした。

とは言っても、山田作品の中では悲しさの度合いは最大級で感動作であることは間違いないので、興味を持たれた方はぜひ読んでみて下さい。


書名:スイッチを押すとき
著者山田悠介
ジャンル:小説(ドラマ/サスペンス/ミステリー)
メモ:舞台化・ドラマ化・映画化作品
おすすめ度★★★


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