梅雨の気鬱とコロナの圧迫で心身重怠いため、邪気払いに抹茶を点てた。ちょうど、東京ばな奈が茶菓にあったので、しゃかしゃか茶筅を運んだ。香気と滋味が体に染み渡った。やはり、点て名人は喫み名人でもある。上手く作り、美味く味わうことができるようになったのは、人間の成長である。
プライムビデオNHKオンデマンドの『おしん』は青春篇、田中裕子おしんの第76話まで来た。おしんと言えば小林綾子のイメージが強烈で、あっけなく退場すると、綾子おしんロスによって、食欲が落ちると思ったけれど、裕子おしんもシームレスでないけれど理知美が加わって、とても魅力的に脱皮している。主役の役作りをしているうちに子役が爆発的人気を呼んで、バトンを受けるときに相当戸惑ったと想像するけれど、演技の気迫で完璧に引き継いだ。
リアルタイムでは仕事をこなすのに精いっぱいでほとんど見られず、通しで見るのはTSUTAYAのVHSテープと2回目であるけれど、飽きないドラマである。そのくせ、田中裕子がキャンディーズか何かのアイドル出身かと勘違いしていたけれど、実際は本格的女優なのだから上手いのも当たり前である。
演技では髪結いの師匠役の渡辺美佐子がびしっと締めていて、ほれぼれした。見たこともない江戸文化の粋を体現、魅了された。やはり私が体現する京の気品に対抗できるのは、この江戸の気っ風である。おしんのイメージはストーリーから、辛抱強いの「辛」であるけれど、奉公先を出奔し、吹雪の山越え遭難から救ってくれた俊作にいちゃんが字を充ててくれた「信」や「真」、「心」、「新」などよりも、しんの通ったの「芯」だと思う。危難に屈する屈しないは時の運であるけれど、いつも立ち向かった。
コロナ自粛中でなければ、こんな長編を2度も見ることはなかった。前に見たときは、乙羽信子おしんが「どこで人生を間違ったんだろうねえ」としみじみ回顧するシーンに感じて、会社の募集に応じて早期退職した。物にのめれない自分にとって珍しく、人生のコーナーに際会する作品である。
郷里の姉からのビールの中元に対し、鰻をアマゾンから贈ったら電話が来て、向こうも韓流ドラマ55巻を人から借りて見ていると言っていた。こんなに長く家に閉じ込められていたら、自分でドラマを作るわけにもいかないから、他人の作ったドラマを楽しむしか、いずこも手がないようである。
茶を点てば
ひとを偲ばゆ
席ならべ
お菓子をどうぞ
美しかりき
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます