リンゴが木から落ちるのを眺めて万有引力の法則が発見されたように、大発見はひょんなことから生まれる。私が日本書紀を読んでいて、聖徳太子が推古天皇の皇太子に立てられた時の名前である厩戸豊聡耳皇子の読み仮名「うまやとのとよとみみのみこ」を見て、秀吉が天下を取った時に名乗った「豊臣」(とよとみ)姓は、聖徳太子にあやかったのだと、20年ほど前に気付いたのも同じ事である。
馬屋で生まれながら歴代治世者の中で最も尊敬された偉人聖徳太子に、百姓の子倅ながら生まれる時に母の懐中に日輪が飛び込んだ奇運の天下人秀吉が重ね合わせたかったのであろう。聖徳太子の後嗣・山背大兄王が皇位簒奪を目論む蘇我入鹿に襲撃されたとき、身を挺して守ったのが一騎当千の武勇を誇る奴(やつこ)三成(みなり)であり、秀吉も豊家を固く守らせるため側近石田佐吉に三成を名乗らせた。
今回も英単語を確かめる必要があって辞書を開いていて、gudgeon が目に留まった。意味は「かつがれやすい人、とんま」とあった。これはもう、確実と言うより、絶対だと閃いた。クレージーキャッツの谷啓の人気ギャグ『ガチョーン』はこれから来たのに違いないと確信した。米進駐軍時代のジャズに感化されて音楽をやり、米喜劇俳優ダニー・ケイを文字って芸名にしたくらいだから、英語の影響力は彼にとって日常だった。ガチョーン誕生の憶説には、麻雀好きの谷が相手に上がりを振り込んだ時にクソッでなく発した悔し声だとか、魚釣りのコントで大魚を逃がした際に発した擬態音などがあるけれど、信憑性がない。
日本コント史上、最高の一発芸は何かというアンケートに、ビートたけしの「コマネチ」や志村けんの「アイ~ン」を退けて、堂々の1位に輝いた『ガチョーン』が、そんな詰まらない出自のはずがない。英語の深い教養が、誕生の秘密にあったわけである。ハラホロヒレハレ。
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