http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20121129&ng=DGKDZO48917960Y2A121C1EL1P00
2012/11/29
親子一緒にアプリで遊ぶ
画面に触れ塗り絵/絵本に声ふき込み 創造性や言葉はぐくむ
画面の大きいタブレット向けのアプリが充実
(東京都杉並区)
タブレット(多機能携帯端末)を使って親子で楽しめるアプリが充実してきた。画面を触って塗り絵をしたり、自分で声をふき込んで音声付きの絵本を作ったり、スマートフォン(高機能携帯電話)に比べて画面の大きいタブレットならではの楽しみが広がっている。上手に活用すれば、新しい学びの入り口にもなりそうだ。
「ママ、パパも鳴き声入れてよう」。東京・杉並に住む伊沢杏珠ちゃん(3)が両親と遊んでいるのは、ベネッセコーポレーションが開発したiPad(アイパッド)向け塗り絵アプリ「空想どうぶつえん」だ。
好きな動物の形を選び、色を塗った後、動物の鳴き声をまねしてマイクで録音。再生して楽しめる。端末を傾けるとボタンや花などの飾りが表示され、塗り絵に貼り付けることができるほか、完成した動物が動き回るしかけもある。住んでいる場所を国旗から選んで作品を投稿し、世界中のほかのユーザーの作品を見ることもできる。
伊沢さんの端末画面には様々な子ども向けアプリが並ぶが、「空想どうぶつえん」はお気に入りのひとつ。母親の歩さん(30)は「紙の塗り絵では使わない色も塗れて楽しい」と笑う。
■巨匠の筆遣いも鮮明
歩さんが子育てにiPadを活用するのは、家族で一緒に楽しめることに加え、外出先におもちゃを持ち運ぶ煩わしさやパズルのピースをなくす心配がないからという。
世界の巨匠の絵画を堪能できるのは、小学館の「名画絵本ぴくぴくピクニック」だ。題材はモネやルノワールの代表作品。ゴッホのひまわりはどのような状況で描かれたかなど知識を得られるほか、絵をもとにしたパズルや塗り絵もある。画面を触れば画家が描いた絵の大きさまで拡大でき、作品の細かい筆遣いまで鑑賞できる。
日本の昔話や世界の童話のイラストを触ると動いたり音が出たりする絵本アプリ「おやこでスマほん」も人気だ。スマホでも楽しめるが、開発したスマートエデュケーション(東京・品川)によれば、ダウンロードはタブレットが4割を占める。
同社が力を入れたのは効果音の音源。自社で楽器を購入し、録音している。「感受性の高い子ども向けだから音の質にこだわった。デジタル絵本で親子の新しいコミュニケーションを生み出したい」(池谷大吾社長)
紙芝居のようにナレーションを入れられるのがアイフリーク(福岡市)のアプリ「こえほん」。250種類以上の絵本から選べ、家族だけのオリジナル絵本を作ることができる。
■使いすぎには注意
こうしたアプリは今後、一段と増えそうだ。イタリアで開催される絵本作家の登竜門「ボローニャ国際絵本原画展」では今年初めて、アプリの開発者向けの賞が設けられた。
海外にも優れたアプリは多い。「Timbuktu」(英語版のみ)は毎日違った物語や知育ゲームなどが配信される。外国語の習得などにも役立ちそうだ。
心配なのが、デジタル機器の子どもへの影響。幼児向けの教育工学が専門の東京大学大学院情報学環の佐藤朝美特任助教は「幼児の脳など医学的な研究はこれから。ただ、親と一緒に指で触ったり、自分の声をふき込んだりと能動的に何かを作り上げる作業は子どもの創造性や語彙の発達、親子の関係性にも良い影響を与える」と話す。
もっとも、タブレットに子守をさせてはいけないのは言うまでもない。iPadなどでは特定のアプリだけ起動するように設定できる。また、長時間見続けると目には負担がかかる。使いすぎに気をつけながら楽しもう。
(電子報道部 杉原梓)
スマホ+おもちゃ=笑顔 懐かしいゲーム、親子で楽しむ :日本経済新聞 2012.12.6
スマートフォンを使ったボードゲームを楽しむ家族(東京都渋谷区)
クリスマスや年末年始は家族や知人らと過ごす時間が増える。そんな時に重宝しそうなのが、スマートフォン(スマホ)を使って大人数で遊べるおもちゃだ。ボードゲームなど昔懐かしい遊びにスマホの技術を活用したタイプも多く、子供だけでなく親も十分楽しめる。家族のつながりを強くする道具として役立ちそうだ。
「子供のころに遊んだ懐かしさもあって面白い」。都内に住む会社員の平尾純さん(38)は12月初旬の休日、子供たちと一緒にボードゲーム「絶叫!おばけ屋敷ゲーム」を楽しんだ。
■悲鳴を模した音も
1980年発売の人気ボードゲームにスマホの要素を取り入れた最新作だ。アプリをダウンロードしたスマホを盤上に置いて遊ぶ。すごろくの要領でコマを進めていき、マスに止まるたびにスマホに出てくるおばけを倒しながらゴールを目指す。
イベントマスに止まると、スマホの画面をタッチ。幽霊の映像や悲鳴を模した音が出て恐怖心を誘う。「初めて遊んだ日の夜は、子供が怖がって寝付けなかったほど」(平尾さん)。遊んでいると急に不気味な笑い声が聞こえるなど、不意を突く演出もゲームを盛り上げる。
平尾さん宅にはテレビゲームもあるが、子供たちだけで遊ぶことが多いという。おばけ屋敷ゲームはスマホがないと遊べないため、親子で遊ぶ機会が自然に増えたという。「慣れ親しんだボードゲーム仕立てなので大人も楽しめる」(平尾さん)
7月の発売後、アプリを2回アップデートした。炎をまとった怪物など、冬向けに温かみを感じる要素を追加したという。買った後もゲームの内容を適宜更新し、利用者が飽きにくいようにする点も、スマホを使ったおもちゃの特徴の一つだ。
玩具メーカーのウィズはスマホを使って遊ぶおもちゃ「アプリズム」シリーズを11月末時点で10商品そろえている。野球ゲーム「アプベースボール」は野球盤の形をしたおもちゃにスマホをセットして遊ぶ対戦ゲーム。攻守に分かれて遊ぶ。
守備側が球種を選ぶと画面上の投手がボールを投げる。攻撃側はおもちゃについているバットをタイミング良く振ってボールを打ち返す。バットを振るタイミングや速度をスマホが読み取って、アウトやセーフを判定する仕組みだ。
千葉県八千代市の会社員の扇原奈津子さん(39)は夕食後、9歳の息子と対戦するのが日課になった。野球のルールに詳しくなくても、タイミングを合わせるだけで直感的に遊べる。
■光の軌跡を絵に
タカラトミーアーツが11月に発売した「夜空におえかき」は、懐中電灯などを動かして空中に光で絵を描く「ペンライトアート」を楽しめる。付属のペンライトで好きな色を点滅させたり、全27色を順に光らせたりして空中を動かす。その様子を専用アプリをダウンロードしたスマホで撮影すると光の軌跡を絵にできる。撮影した画像はスマホから交流サイト(SNS)に投稿したり、メールで知人に送ったりすることができる。
千葉県松戸市の主婦、深尾敬子さん(36)は「絵を描くのが大好き」という6歳の娘のために夜空におえかきを買ったが、娘と一緒に空中に文字や絵を描きながら自分も結構楽しんでいる様子だ。撮影した写真も「メールで知人らに手軽に送ることができて便利」と話す。
子供がこうしたおもちゃで遊ぶには親のスマホが必要。昔ながらの要素を取り入れた商品が多く、親も懐かしさを感じながら楽しみやすい。世代に関係なく一緒に遊べ、親子の会話も自然に弾む。寒さが厳しくなるなか、1つの部屋に集まりゲームを楽しめば心も温かくなりそうだ。
(消費産業部 柴田聖也)