うちにテレビがやってきた日

 

 

 

 

 

昭和３０年代みたいなタイトルになってしまいましたが、そういうわけではありません。うちにもついに、地デジ対応薄型TVが導入されたという話です。

 

うちの場合、もともとＣＳ放送に加入していたので、アナログ放送打ち切りと言われてもあまり危機感は無く、テレビの買い換えについても、ま・そのうちに、と悠長にかまえておりました。ところが家電エコポイント制度の改定により、１２月以降の購入ではポイントが半減してしまうという話になったとたん購買意欲がギンギンに漲ってきて、なんとしても１１月中に買わねばと思い詰めるまでになってしまったのです。

「もらえるはずのものがもらえなくなる」という事態に直面したとき、ひとの（私の）心は穏やかさを失う。

たとえもらえるポイントが半分になったとしても、実損があるわけではないのに。「得をしそびれる」のと「損をする」のは決してイコールではないはずなのに。それなのにどうしてもそのふたつを混同してしまい、乗り遅れてはならじと焦ってしまう。そんなさもしい自分をつかの間憎んだあと、夫を促しイソイソと家電量販店に向かった私でした。

 

そして先々週の土曜日、我が家に新しいテレビがやってきたわけです。

薄い薄いとは思っていたけれど、ほんとに薄いですね。薄型テレビって。

薄過ぎて上にものが置かれんがな。

テレビの上が定位置だったサボテンのサボ子は、これからどこに置けばいいんだよォ。

などと、わざとしょうもないケチをつけつつ内心浮かれている私のかたわらで、なぜか急に涙ぐむ息子。

理由をたずねると、今までさんざん楽しませてもらった古いテレビをあっさりとお払い箱にしてしまって、テレビが悲しんでいるようで申し訳なくて泣けてきたとのこと。そういえば少し前に洗濯機をかえたときにも、同じようなことを言って涙ぐんでいたっけ。

物を大切にする心はこれっぽっちも無いくせに、お役御免の家電にだけは、なぜか異常なほど感情移入する男・ノレパソ・１２歳。お母さんは、あなたに少し不安を感じます。

 

さて、既に地デジをエンジョイしていらっしゃる方には何を今さらという話でしょうが、デジタル放送ってほんとにきれいですよね。そこまできれいじゃなくていいのに、と思ったりしませんか？

動物や自然の風景を見ている分にはこの画質の良さはうれしいのですが、人間の顔なんかは、むしろあんまりはっきり見えないほうがいいなぁと、私は思いました。

ふだんひとと話しているときには相手の顔をそんなにシゲシゲとは見ませんが、テレビに映った顔はどうしてもじっくり見てしまうことになります。アップにでもなろうものなら、いきおいアラも目につくでしょう。

アイドルや女優のお化粧の具合とかお肌の質感とか、そんなものは見え過ぎないほうが、いい夢が見られると思うのです。ニュース番組で繁華街の人波が映れば、不倫カップル要注意の言い逃れの出来ない鮮明さで、ひとりひとりの顔の見分けがついてしまいます。はー、こわい（なんでや）。

 

こんなことが気になるのは今のうちだけで、高画質に慣れてきたらそのうち気にならなくなるものなのでしょうか。

ついこの間までうちにあった、後頭部がむやみに張り出したブランウン管テレビのほうが、私には良かったのかもなぁ。あれなら上にサボ子も置けるしね。