ミモザの春雨日和

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原子力マフィア完全復活 小出裕章さんインタビュー(7月11日/兵庫県尼崎市)

2015年08月09日 | 原発関連情報・被ばくしないために
写真は7月26日の北公園、朝の散歩写真です。その後、行っていません(涙)
今朝はめっきり涼しくなったので、ちょっと行ってこようかと思います~
と言いながら、ブログを始めてしまうと、
あっという間に時間が過ぎてしまいます。

以下たんぽぽ舎より転載______

┏┓
┗■1.原子力マフィア完全復活
 |  いかさまの新規制基準 廃炉は半世紀で完了しない
 └──── 小出裕章さんインタビュー(7月11日/兵庫県尼崎市)

  川内原発再稼働を皮切りに、次々と老朽原発再稼働に踏み込む安倍政権。6月には、原発比率20~22%という「2030年電源構成案」を発表し、原発全面推進に回帰する方針を示した。

 政権は、原発事故を遠い過去の記憶にしたいようだが、実際はどうか?「福島原発現地は放射能の沼のような状態」と語る小出さんに、緊急課題である汚染水対策から廃炉作業の見通しまで、聞いた。小出さんは、廃炉作業について「炉心の回収は無理なので石棺方式になる」としたうえで、地下に熔け落ちた炉心の閉じこめ作業、1~3号機の使用済み核燃料回収作業など、待ち受ける困難を具体的に指摘する。

 今回のインタビューは、京大原子炉実験所を退職して以来、初めてのインタビューとなった。2回に分けて掲載する。川内原発現地では、Xデーに向けてゲート前大行動が予定されており、全国からの結集が呼びかけられている。


◎新規原発見込んだ「2030年電源構成案」

編集部…政府が発表した「2030年度の電源構成案」では、原発を46基稼働し、40年の設備年限を撤廃し、核燃料サイクルも推進…など、原発全面推進に回帰する内容です。評価をお願いします。

小出…自由民主党が政権に返り咲いて作った計画ですが、あまりにも愚かで、コメントする気も起きないような計画です。福島第一原発にしても、自民党が政権を担っていたときに、「事故は起きない」として運転許可を与えたわけですが、事実としてその原発が事故を起こしました。事故発生当日に緊急事態宣言が発せられたわけですが、それすら未だに解除できないまま事故は続いてます。歴代の自民党総裁=首相は、全ての原発の許可を与えてきたのですから、まず、彼らの政治責任を問い、刑事処罰しなければならないと、私は思います。ところが、彼らは何らの反省もないまま、「原子力を進める」と宣言しました。

 政府のいうように、原発の電力構成比=22~24%を満たそうとしたら、今は1基も動いていない原発を全部運転しなければなりませんし、彼らが考えていることは、もっとひどい内容です。それはリプレイスという名の新規建設です。

 稼働から40年を過ぎた古い原発は廃炉にしなければならないのですが、その代わりに巨大な原発を建設しようとしているのです。

 例えば敦賀原発1号機は、35.7万kWで、廃炉が決定していますが、代わりに「新型で安全性の高まった原子炉」という口実で、3号機と4号機が建設準備中です。両機を合わせると、300万kWを超える規模の原発です。つまり1機廃炉にする代わりに、その敷地に出力が10倍の原発を建設するという計画なのです。


◎凍土壁は失敗する―それでも儲ける原子力マフィア

編…汚染水をはじめとする、事故現場の課題は何ですか?

小出…これまでに大気中に放出された放射性物質は、セシウム137に換算すると、広島原爆168発分だと日本政府が言っています。しかし熔け落ちた炉心には、数万発分の放射性物質が含まれています。その炉心が何処にどのような状態であるのかもわかっていないので、とにかく水をかけて冷却しているのですが、これが膨大な放射能汚染水となって貯まり続けています。この汚染水を環境中に出さないことは絶対的に必要なことです。

 そのためにすべきことはたくさんあります。まず、故障続きのALPS(多核種除去設備)を稼働させることです。

 次に汚染水の発生自体を抑えることです。汚染水の発生源は2つあります。1つは、炉心冷却のための注水であり、もう一つは建屋に流れ込んでいる地下水です。まず、炉心冷却のための注水は止めるべきです。熔けた炉心の崩壊熱は、事故から4年経って数百分の1に減っているはずです。水以外の金属などによる冷却などを試してみる価値があると私は思います。

 地下水対策として東電は、凍土壁を作るとしています。長さ30mの配管を1mごとに打ちこんでマイナス30度Cの冷媒を流して周りの土を凍らせて、1500mにわたる凍土壁を作るというものです。小規模な凍土壁は地下トンネルなどで使われてきた実績ある技術ですが、今回のような大規模な凍土壁は、多分失敗します。理由は、地下水がどんどん流れてきており、流れの緩やかな場所は凍るかもしれませんが、急流の場所では凍らず、結局そこから地下水が流れ込むことになるので、別な方法を試すことになると思います。

 凍土壁ができたとしても、冷媒を途切れることなく流し続けることが可能とは思えません。停電になれば冷媒の温度を下げることも、ポンプで送り込むこともできなくなります。パイプがどこかで破れたり詰まったりすれば、その時点で破綻します。結局、別の遮水壁を作ることになるでしょう。

 ただし、原子力マフィアにとっては、最良の方法です。凍土壁の工事は、鹿島建設が320億円で請け負っていますが、全て国費です。鹿島建設はこれで大儲けしますし、失敗すれば別のゼネコンが、別の方法を提案してまた儲けることができるからです。

 私は2011年5月から汚染水問題を指摘し、コンクリート製の地下ダムによる遮水を提案し続けていますが、地下水の流入を止められたとしても、汚染水はいずれ海に放出することになるでしょう。ALPSが稼働しても、ストロンチウム90を法令以下の水準まで除去することはほぼ不可能ですし、トリチウムは全く除去できないからです。


◎炉心回収は不可能

編…東電が廃炉工程表の見直しを行いましたが…。

小出…最後の問題は、熔け落ちた炉心の回収です。東電と政府の計画では、熔けて固まった炉心を上から掴み出すとしていますが、私は無理だと思います。彼らの工程表によると、熔けた炉心は、圧力容器の底を突き抜けて、格納容器の床上に饅頭のように堆積して貯まっており、これを上から掴み出すという計画です。

 このためには、まず炉心からの猛烈な放射線を遮るために壊れてしまった格納容器を修理して、水が貯まるようにしなければなりません。これがたいへん困難な作業です。格納容器のどこが壊れているのかを知ること自体が難しいし、修理するとなるとたいへんな被曝労働になります。さらに格納容器は、水を満たすことを想定していない構造なので、それ自体が別のリスクを抱えることになります。

 仮にこれがクリアーできたとしても、熔けた炉心はあちこちに飛び散っていて、上から覗いて見える範囲にある炉心は、わずかだろうと思います。仮に半分取り出せたとしても、半分が残ってしまうなら、ほとんど意味がないのです。いつかの時点でこの方法は全面的に見直すことになると思いますが、そのために膨大な被曝労働を投入するのなら、はじめから諦めるべきだと考えています。

 政府もようやくそのことに気がつき始めていて、上から取り出すという方法以外の方法について検討を始め、今回の「廃炉行程の見直し」につながっています。横から穴を開けるとか地下からの回収という方法も検討するとしています。

 上から掴み出すという従来の計画に比べれば、まだ実現の可能性がありますが、これらの方法にしてもたいへんな被曝労働は避けられませんので、炉心の回収は諦めてその場で保管する「石棺方式」を採用すべきだと思います。チェルノブイリ事故で採用された方式です。

 ただし、福島事故はチェルノブイリ事故より多くの困難を抱えています。説明します。チェルノブイリ事故でも熔けた炉心が地下に熔け落ちたのですが、そこに広大な空間があって、事故直後にトンネルを掘って液体窒素を流し込んだりして、地下室で冷えて固まるような作業ができました。熔けた炉心を地下室で食い止めることができたので、地上に石棺を作れば、炉心を閉じこめることができました。

 ところが福島原発の場合、地下室がぼろぼろに壊れてしまって、地下水がどんどん流れ込む状態となっています。したがって、地上の石棺に加えて地下にも防護壁を作らねばなりません。

 つまり地上の石棺に加えて地下の遮水壁で放射能を閉じこめるという、より困難な課題があるのですが、これ以外の方法はないと思います。


◎使用済核燃料の取出しという難題

  ただしこの方法を採るにしても、そこにたどり着く前に困難な課題があります。使用済み核燃料の回収です。使用済み核燃料は、水が満たされたプールで冷却し続けなければ、熔けて核反応を起こしますから、石棺を作る前に、全ての使用済み燃料を回収しなければならないのです。

 4号機は、昨年11月に取り出しを完了しましたが、4号機は、水素爆発は起こしたものの炉心が熔けたわけではないので、原子炉建屋の放射能汚染は少なかったのです。だから作業員が建屋に近づき、新たなクレーンや燃料交換機を設置して作業することができました。

 ところが1~3号機は、水素爆発でめちゃくちゃに破壊されたうえ、炉心溶融による猛烈な放射能汚染で建屋に入ることすらままならず、核燃料プールに近づくこともできない状態です。

 水素爆発によってたくさんのがれきが燃料プールの中に崩れ落ちているので、まず、1.遠隔操作によってがれきを取り出す作業を進めています。この作業を終えて、2.なにがしかの除染をして労働者が入れるようにして、3.クレーンや交換機を設置し、4.燃料棒の回収作業を行うという、膨大な作業が控えています。この何年かかるかわからない作業を終えた上で、石棺を作る作業に移行するのです。

 政府と東電は、6月、原発廃炉工程の見直しを行いましたが、これも絵に描いた餅に過ぎませんので、再改訂されて収束時期はさらに遅れるでしょう。

 廃炉方法も炉心の回収は諦めて石棺方式になるでしょうが、その石棺がいつ完成するのか?と問われれば、多分私は死んでいるでしょう。

 チェルノブイリの石棺は、事故から29年経って既にボロボロに崩れ始めたので、さらに巨大な第2石棺で第1石棺を覆わねばならなくなっています。福島でもそうなるでしょう。

 私は、第1石棺を見ることなく死ぬことになるでしょうが、今生きている人たちが、第2石棺を見ることもないでしょう。そういう時間の長さなのです。

 事故原発の廃炉とは、30年や40年で収束できるような作業ではありません。

   (次号に続く)
(人民新聞2015年7月25日 1556号より、人民新聞編集部の了承済み)

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